メモリスタ(Memristor)


「メモリスタ」(Memristor)
通過した電荷によって抵抗が変化しそれを記憶する受動素子。
抵抗器、キャパシタ、インダクタに次ぐ新たな受動素子ということで「第4の回路素子」とも呼ばれる。
記憶素子と抵抗素子の特徴を併せ持つことから、Memory(メモリ) + Resistor(レジスタ) = Memristor(メモリスタ)と名付けられた。

概要

-- 特徴
1. 高集積度が可能なため、既存の方式よりも面積当たりの記憶容量が大きい。(従来の2倍になるという話もある)
2. 書き込み・読み込みともに既存の方式よりも高速。
3. 省電力。(従来の1/10になるという話もある)
4. 耐久性が高い。
5. 希少な金属ではなく酸化チタンを素材とすることで安価になる。
6. 演算処理も可能なためCPUとメモリを兼ねることができる。
7. 放射能の影響を受けない。

-- 沿革
1971年にカリフォルニア大学バークレー校のLeon Chua教授が論文で提唱。
しかし、既存の理論と一致しない点も多くなかなか実証されずにいた。
2008年にHP(ヒューレット・パッカード)が二酸化チタンを素材としたメモリスタの開発に成功したと発表。
さらに2010年にはHPがメモリスタが論理演算装置としても使用できることを確認したと発表。
同年、パナソニックが強誘電体を使いメモリスタの大容量化とCMOS回路上での形成に成功したと発表。
2011年にHPはHynixと協業して2013年夏にはフラッシュメモリの代替となるメモリスタを発表したいと表明したが実現していない。

詳細

-- 原理
酸化チタン等から成る2層構造の1層に流す電流量に応じてもう1層の抵抗値が変化して、その抵抗値が維持されるという特性を利用している。
データ(抵抗値)を取り出す時はトランジスタにより制御する。
記憶されるデータはアナログなので0と1だけではなく細かく強弱をつけることで多くの情報を記憶できる。

-- トランジスタ一体方式
データ取り出し用に別途トランジスタを配線しなければならないが、メモリスタと一体化させることで高集積化を望める。
パナソニックは上部にトランジスタ機能を追加した6層構造を発表している。
構造は下記の通り。(上層から記述)
6. 上部電極
5. 絶縁体
4. 電極
3. 半導体(ZnO:酸化亜鉛)
2. 強誘電体(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)
1. 下部電極(SrRuO3:ルテニウム酸ストロンチウム)
1〜4層がメモリスタ機能を構成。4〜6層でトランジスタ機能を構成。4層の電極は両者兼用している。

ポイント

-- 人工知能
記憶と演算を行えるため、「人の思考」を再現するニュートラルネットワーク処理への応用が研究されている。
高性能な人工知能の開発も期待されるが、脳におけるシナプスの学習について解明する研究も進むことを期待する。

-- 宇宙開発
放射能の影響を受けない特性と、一体形成が進めば部品数が減ること、省電力であることから、宇宙開発関連機器への導入により性能向上が見込める。
宇宙船や機材の性能向上は宇宙開発を進める大きな要素になると期待できる。

-- ウエアラブルコンピュータ
省電力、高集積つまり同スペックなら従来からの小型化、安価、という特徴から、モバイルデバイス特にウエアラブルなものには最適かもしれない。

以上

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