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アニロックスロールの選択(線数と容積)

アニロックスロールの線数や容積はどのようにして決めるのがよいでしょうか。ここではそのガイドラインを紹介します。

(適切なアニロックスロールはそれぞれの印刷条件毎に異なるため、ここで説明するものは飽くまで目安です。詳細については、個々の印刷条件をもとに必ずインキメーカーやアニロックスロールメーカーに相談して下さい。)


1.はじめに

まずフレキソ印刷において常に考慮されることとして、

A:色濃度を維持しながら可能な限りインキ被膜を薄くすること     B:可能な限り印刷速度を上げること

があります。これを達成するには

①色濃度が高く、速乾性の高いインキを使用すること          ②よりセル容積の小さい、高線数のアニロックスロールを使用すること

が重要となってきます。また、

③印刷機の特性(印圧設定、見当、ドットゲイン等)の数値的な把握   ④オペレーターの印刷機に対する熟知

が事前になされておくことが、目標を達成する上で重要です。

2.線数

ここではプロセス印刷を必要とするような絵や写真を印刷するケースを例に説明します。このようなケースでは様々なことを考慮する必要がありますが、そのひとつとしてアニロックスロールの線数があります。アニロックスロールの線数は、刷版上の個々の網点が適切にインキに浸るよう、十分に高い(細かい)必要があります。

考え方はいくつかありますが、一般的に3%以下のハイライトがある場合には網点の5倍から6倍がアニロックスロールの線数に必要です。例えば、網点が110lpiならアニロックスロールは550~660lpi以上である必要があります。もし十分にアニロックスロールの線数が高く(細かく)ないと、セルの口径が刷版上のドットよりも大きくなり、特定のドットがセルの中へ沈みこむ現象(ドット・ディッピング)が起こります。ディッピングが起こると余分なインキがドットに付着し、印刷汚れにつながりってしまいます。ディッピングは、3%以下のハイライトが刷版に存在する場合、特に問題となります。先ほどの例で言うと、網点が110lpiの場合550lpiや660lpiとなります。ハイライトのない網点であっても一般的には少なくとも4倍以上の線数がアニロックスロールには必要です。

表1は網点の線数と1~3%のドットの直径、そしてそのドットと同じサイズのセル口径になるアニロックスロールの線数の対応表です。

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表1 ドットのサイズとセル口径が等しくなる網点の線数とアニロックスの線数の対応表(ここではセル壁の幅を5μmと仮定)

例えば網点110lpiの2%のドットの直径は37μmで、これと同等のセル口径を持つアニロックスロールは606lpiとなります。こうした対応表はアニロックスロールの線数を決める上で参考になります。

3.セル容積

適切なアニロックスロールの線数が決まれば、次に重要なのは適切なセル容積を選択することです。これは440線以上のアニロックスロールの場合、より一層重要となります。

一般的に、セル容積はセルの口径と深度との比率が23~33%となるように設定すると、アニロックスロールにスムーズにインキが入り、またアニロックスロールからスムーズにインキが出て良いとされています。

セル深度の口径に対する比率(%)= (セル深度/セル口径)×100

この比率が33%以上となるセルつまり深度が口径に対してより深くなるセル程、インキがセルの底に残りやすくしたがってインキ詰まりが起こりやすくなります。また、比率が23%以下となる浅いセル程、均一なアニロックスロールの製造が難しく、再彫刻の際の再現性が得にくくなります。また浅いセルはセル壁が歪み、スムーズなインキの出入りを難しくする場合があります。

4.バンデッドロール

こうした目安をもとにアニロックスロールの線数や容積を絞りこんだ後には、バンデッドロールを使用してテスト印刷するとより適切にアニロックスロールを決定することができます。

バンデッドロールとは、ひとつのアニロックスロールに複数の線数や容積のセルを彫刻したものです。各種パターンのセルが非彫刻部を挟んでいくつも彫刻されているテスト用のアニロックスロールです(図1)。

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図1 バンデッドロールの模式図 左から500lpi/3.2BCM、600lpi/2.5BCM、700lpi/2.2BCMの彫刻が施されている

こうしたテストを印刷機毎の特性情報とともに繰り返していくことで適切なアニロックスロールを選択することができます。またデータを蓄積することにより、より良い品質の印刷物を顧客へ提供するのに役立ちます。

本記事と合わせて下記の記事もご参照下さい。

参考資料:FLEXOGRAPHY: Principles & Practices 5th Edition, Foundation of Flexographic Technical Association, Inc., 1999, p77-79

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本記事は、執筆者が知りうる限りの情報に基づき、可能な限り正確を期して執筆しておりますが、内容を完全に保証するものではございません。実際の生産に適用される場合は、各サプライヤーへご相談下さい。また、本記事の内容は予告なく変更・訂正される場合がございます。

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