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CROSS ACCELERRATOR 01 遊び方を自由に。

ミクシィが主催するCROSS ACCELERRATORとは?

「CROSS ACCELERATOR(クロス アクセラレーター)」はミクシィのデジタルエンターテイメント事業部が始めた新事業。これから先の時代を担う「ポストソーシャルゲーム」をともに作るため、スタートアップに広く募るかたちで開催しています。2020年の3月に始動したこのプロジェクトは企業も公募しています。

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登壇者

・KDDI株式会社 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長
中馬 和彦 様  

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平成8年、国際電信電話(株)(現KDDI)入社、INFOBARをはじめライフスタイルブランドiida、au Smart Sports等を手がける。平成26年からジュピターテレコム(株) 商品企画副本部長として、4K-STBやJ:COM Mobile立ち上げ。
その後ジュピターショップチャンネル(株)執行役員を経て、現在KDDI(株)経営戦略本部事業ビジネスインキュベーション推進部長として、ベンチャー支援プログラムKDDI∞Laboやベンチャー投資ファンドKDDI Open Innovation Fundを統括。

・株式会社フジテレビジョン 総合事業局 部長職 『いいすぽ!』チーフプロデューサー 門澤 清太 様 

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1993年、ソニー株式会社に入社。コンピューター周辺機器の国内、中近東中南米Sales&Marketingを経て、ソニーが運営するエンタテインメント施設メディアージュのプロモーションに従事。
2002年フジテレビに移籍後、制作センターバラエティ班に配属。「人志松本のすべらない話」「アイドリング!!!」のプロデューサーとして番組を制作。2006年に現部署に異動後、2010年国内最大のアイドルイベント「Tokyo Idol Festival」を総合プロデューサーとして立ち上げる。2016年からeSports専門番組「いいすぽ!」「オールナイトe!」「Tokyo e-Party」など数々のゲーム関連番組の企画・CPを務める。

・ファシリテーター 株式会社ミクシィ インキュベーション事業部長 江本真一氏

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NECにてインフラエンジニア、新規事業でのWeb2.0、コンテンツ管理領域ソリューションに携わり2011年グリー入社。SNS事業クリエイティブセンター統括、VRやVTuber事業といった新規事業を推進。ミクシィ入社後はデジタルエンターテインメント事業本部にて、ゲーム開発、M&/PMI、エンタメ事業全般の推進を担当。

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今回は、テレビ、ゲーム、スマートフォンというそれぞれの分野が提供し続けてきたコンテンツに起きている新しい動きや、そこから次に何が起こるのか、1時間の中で進化していくコンテンツとエンタメを追いかけます。

どんなことが語られたのか?

最初のトークテーマ「コンテンツの変化」では、芸能人の”消費される速度”が早くなっていることやYouTuberと一般の視聴者が一緒にゲームなどしてコンテンツを作り、そのコンテンツに時に高額な投げ銭が払われる現状が語られています。大多数の視聴者の中から高額なお金を払ってコンテンツを楽しむ人が現れてきたことはこれまでのテレビではなかったことで、テレビやゲームのに影響を与えていると登壇者たちは述べています。

それを受けて、次のトークテーマ「お金を使わない遊び方」では、高額なお金を払わないで遊ぶ人たちにスポットを当て、プレイが無料の『フォートナイト』のビジネスモデル”強くならない課金”について議論が行われます。コンテンツ自体もオープンワールド型のゲームやリアリティーショー番組などが登場し、結論や終わりがなくなっていること、それでもコンテンツ制作においてはお金のかかったものが視聴者に評価されている現状にある点は興味深いと言えるでしょう。

続いて、トークテーマは「時代の変化について」に移ります。テレビが家庭の中心にあった時代は昔のことになり、個人個人がテレビやテレビ以外のツールでコンテンツを消費する時代になり、SNSで同じコンテンツを共有してリアルタイムに楽しむ時代になっています。この変化は短い期間で起こったもので、企業がユーザーの変化にどう合わせていくのか、変化に対応しなくてはならない危機感をテレビ業界やスマートフォン業界が持っていることが語られ臨場感のあるトークになっています。また、技術革新によってAIが活用される現場の状況もリアルに語られています。

最後のトークテーマ「遊び方を自由に」では、難しいテーマだ。としながらも、ユーザーにとってはコンテンツは重要だが、ゲームやテレビ、スマホというジャンルは重要でなくなっている。何が放送されるかは重要だが、どこで行われているのかは重要ではないとの鋭い指摘があり、いつどこでコンテンツを楽しむこともでき、途中で止めることも自由になっていることが遊び方を自由にすることだとの結論に至り、また面白いモノが多数生まれ、それが自由な遊び方の中で拾い上げられてマス化していく流れがありこの流れとうまく付き合うことが企業には必要だろう。として今回のCROSS ACCELERRATOR 01 遊び方を自由に。は終了しました。

全文は以下をご覧ください。

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トークテーマ「コンテンツの変化」

江本:コンテンツの変化ここ5年でコンテンツは変化していると思うのですが、ご自身の体感を教えていただければと思います。

門澤:タレントさんの変化ですね。スピードが速い。消費される速度が圧倒的に速い。昔だとブレイクした芸人は1年くらいもありあがって、正月の「爆笑ヒットパレード」でブレイクして消えたり残ったりするというパターンがあったが、今は2か月程度になっている。これはタレントさんだけでなくあらゆるものの消費期限が早くなっていると思います。

江本:そうした中で、タレントさんの賞味期限が短くなる中で、たとえばこのタレントさんはこういうことをしているのかを教えてください。

門澤:YouTubeだと思う。コロナのせいもあるんですけど、テレビに出れないので、芸人しながらYouTubeという人は増えていますね。小籔さんが『フォートナイト』のゲーム配信をしていた。顔出ししせず名前も言わずにプレイしていて最初の25人から人間関係を広げて今は6万人に。『フォートナイト』を楽しみながらやっていて、それが参加型になっていて、4人組スクワッドプレイを7時間くらいやっている。

中馬:タレントとの距離がめちゃくちゃ近くなっているわけですね。

門澤:誰もが知っている人とゲームをしている感覚ですね。面白いのは、年齢の垣根もないですね。小学生が小籔さんと一緒にプレイしていて「次、あれ狙いますよ」とか言ってる

江本:小籔さんのファンがフォローしていたのでしょうか。

門澤:ディレクターで詳しい人が最初はフォローしていたんですけど、モデレーターは一般の人がやっていて、ファンの人とコミュニティを築いてそれが広がっている形ですね。

中馬:最近、サロンが流行っていますが、そこで濃いコミュニティを作っていて、そういうのが広がっていますね。

門澤:サロンの参加費は結構高いじゃないですか?人によっては、月々5000円とか。月5000円とかは普通払えない。でも参加者がいて、メンバーで満杯になっている。つまりお金の使い方が相当変化したんだなって思いますね。

中馬:SHOWROOMや17とかのライブ配信プラットフォームの投げ銭もすごいですからね。

門澤:僕も昔仕事をしたアイドルの17とか見てると、1万円を投げる人がいてうそでしょ?すごいなと思う。僕らの時代だと、クルマ、バイクを買うことがステータスだったのがそうではなくなってきているんだなって。

中馬:スマホの前のガラケー初期の頃は、ゲーム内の課金アイテム100円を数万人〜数十万人が購入するというモデルでしたが、今は濃いコミュニティの中で特定少数のユーザが高額な投げ銭を行うといったものが増えてきており、明らかに課金行動が変わってると感じますね。

門澤:お金の使い方が変わったことでクラウドファンディングなど、簡単にお金の出し入れができる分、財布のひもが固いのか緩いのかわからなくなってますよね。

中馬:秋元氏のアイドルビジネスCDを何枚買ったら投票できるというあたりから変わってきてたような気がしてますね。あれはリアルですけど、感覚は近いですね。

門澤:私もアイドルをプロデュースしていたことがありますが、100枚CDを買うお客さんがいる、1回握手で1000円じゃないですか。それで10万買うと。1回ずつ列を回るの大変だから、まとめて握手してくれって、あれは音楽じゃなくて、音楽を使いながら新しいビジネスを作ったと思います。

中馬:投げ銭プラットフォームができたので、無駄にCD買わなくてよくなったんじゃないかなと思いますね。

門澤:リアルで触る楽しさがあるんですけど、コロナで人と合うことができなくて、グラビアアイドルの子とかは仕事がないって言ってますね。

中馬:17とかは本国台湾だと、リアル17をやっていて物理的に会えるんですよ。普段はネットでエンゲージメントを高めて、最後のコンバージョンは高い参加費を払ってリアルに会いにいくとったモデルに出来上がっています。

門澤:最後はリアルというのは間違いないですね。

江本:そこは面白いですね。中馬さんがおっしゃったように大量のお客さんに届けて、ちょっとずつ買ってもらうモデルから、そこから大量の人に送っているんだけど、実は少数の人が濃いコミュニティを作ってその中の人が高額なお金を払うというモデルになっているのは面白いですね。

中馬:関係ないんですけど、ヨーロッパのプレミアリーグも似ていて、スタジアムの年間シートは6万席程度あるんですけど、VIPルームからの売上で収益の6〜7割稼いでいるそうです。

門澤:ああ、たしかにそうでしょうね。ラスベガスのボクシングとかも収容人数で考えたらあの金額、10億円とか出せないんですけど、あらかたVIPが出している。ペーパービューなんかもあるんですけど。

中馬:そう考えると新しいわけでもないかもしれないですね。それがネットで実現できるようになって大衆化してきているってことなんでしょうね。

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トークテーマ「お金を使わない人たちの遊び方」

江本:そうなったときに遊び方を自由にという意味で、お金持ちは高額な支払いができるのですが、じゃあ普通の人はどうでしょうか。ソーシャルゲームはアイテムを買うと強くなる、という遊び方ですね。濃いファンでお金を使うというのは他ジャンルでもあることがわかりましたが、お金を使わない人はどういう風に遊んでいるのでしょうか。

中馬:若い人はそんなにお金使わないようにして工夫してますよね。昔もそうですけどお金がない。

江本:さっきの小籔さんの話ですけど、小学生が参加して遊んでいるけど小学生ってお金払わないと思うので、そういう人たちが出てきているのはリアルと違うかなって思いますね。

門澤:『フォートナイト』はよくできていて、ゲームそのものは無課金なんですよ。で、無課金でも遊べるんです。ただ、それを着飾るスキンなどで利益を得ているんです。年間18億ドル、2000億円くらいの売上がゲームそのものじゃなくてスキンを中心にして売れているので、お金使わなくてもあそべるんですけど、使いながらだと自尊心を高めることもできるっていう。聞きかじりですけど、『フォートナイト』は一人1万円くらい使うらしいですね。

中馬:アイテム課金なんでですけど、強くなるための課金でもないですね。

門澤:e-sportsの普及もあると思うんですけど、「pay for win」お金を使って強くなるゲームはe-sportsとして認識されないんですよね。だから、『フォートナイト』はお金払えば強くなるという設計にはなってないですね。

中馬:昔のゲームってコンソールで家に友達と集まって遊んだりしますけど、ソーシャルゲームは完全に個人じゃないですか。だから課金が自己完結欲を満たすために機能するんですけど、『フォートナイト』だとコミュニティー型なので「あっ、あいつあの世代のスキンもってる。すごい!」っていう、見せ系なんですね。スマホのギャラクシーを買った人がもらえるスキンなんて10万円くらいすると思うんですけど、それ理由でスマホ買い替えたりして・・・いくらなんだよそれ(笑)でも、レアだから目立つし。ネットワーク型のコミュニティがでてきたことで、昔からやってるのがわかってもらえる。そういう感じなんですね。

江本:ソーシャルゲーム時代からできているというか、9割無課金なんですけど残り1割が目立つといういわゆる「Pay for FAN」で強くならない課金でも有効なんですね。

中馬:コンテンツって、ゲームの話でもストーリーラインやテーマ設定が変わってきている気がしていて、昔のゲームってテーマを与えられたものを解決していく、クリアしていくので、みんなが同じストーリーに沿って行くんですけど、今あんまりそういうのなくないですか?

門澤:いわゆるオープンワールドが主流で、エンディングもあるけど終わってもその世界を回っている人がいる。僕らはそれに慣れていなくて昔の方が楽しいと思っちゃうんですけど、やっぱり欧米がゲームを進化させてしまって、そうなっているのかなと思いますね。

中馬:『GTA』がそうだなと思いますね。あれ、何の結論もないし、何のゲームかって説明できないですね。ただ、街をぶらぶらする。

門澤:チンピラが街をぶらぶらする(笑)あのゲーム異常で今度PS5で『GTA5』が出るんですけど、あのゲーム設定が受け入れられているかっていうことだと思いますね。あれこそ自由なゲームですね。

中馬:ああいうオープンワールドモノになってきていますね。テレビのドラマにおいても、昔は勧善懲悪だったり起承転結とかで最後は完結する、恋愛ものだと最後は結ばれるのか結ばれないのかわかるんですけど、最近のやつは最後まで結論出ないのが多いですよね。

門澤:人間が我慢できなくなっているのかなと思うんですね。昔のゲームはここを終えないとゲームが終了できないというのがあって、セーブポイントがないとかの機能そのものの問題もあったんですけど、今のゲームはいつ辞めてもいいしいつ始められるようになっているから辛抱が弱くなっているのかなと。

中馬:リアリティショーって概念も決まったシーンとかないですね。企画が決まっていて、その企画で進行してというのではなく、ストーリーラインが決まらずにやるっていうのは、オーディションものもそうですけど、コンテンツの流れが予定調和ものからユーザーそれぞれが思い描いて楽しんでいくものになっていますね。

門澤:当然それによる弊害もあるんですけど、一緒にモノを作り上げていく形がでてきているんでしょうね。

中馬:じゃあテレビ番組とかも、一切企画が無くてユーザー参加型で自由にやればいいじゃん。とはならないのが面白いですよね。

門澤:それだと間違いなく失敗しますからね(笑)やっぱり一人の人間が世界観をきっちり作らないと、形のあるものって作れないという気もしています。自由という言葉と相反するかもしれないんですけど、ゲームであってもルールをきっちり作ることで遊びはしっかりできていくと思うんです。

中馬:じゃあなんでも自由にストーリーレスにしてなんでもオープンワールドにすればいいわけでもないんでしょうね。ネットフリックスのオリジナルなんかが一番見られてるのも、あれってすごくお金かかってるじゃないですか。今こんなに金かけても流行らないよっていわれるんですけど、いやいや実は一番見られてるのはオリジナルコンテンツじゃないのって。

門澤:10年に1回くらい、お金かかっていないものがブレイクすることがあるんです。その後追いが生まれて真似しても成功したことってほとんどなくて、例えば『ブレアウィッチプロジェクト』の後追いって流行らないし、『ブレアウィッチ』自体も2や3より初代に勝ることがない。金がかからないのだと、『カメラを止めるな』とか。あれも真似したのは出たけど残らなくって結局のこったのは『カメラを止めるな』。話を戻しますけど、結局お金かけて作ったのが強いのは間違いないですね。もちろん外れることはあるんですけど。

中馬:難しいですね。予定調和だとユーザーに受けないって言われるけど、予定調和で作りこまれたクオリティ高い映画がヒットするっていう。

門澤:ネットフリックスって、今のテレビの2倍から3倍以上の予算をかけてるんです。全裸監督なんて1本1億とか。本当にクオリティもすばらしいなって思いますね。

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トークテーマ「時代の変化について」

江本:コンテンツの変化からユーザーの変化、それに合わせて作り手の変化があると思うのですが、次のテーマに行きたいと思います。次のテーマ「時代の変化」どっちかというとユーザーさん側の変化ですよね。それに企業はどう対応するのか。中馬さんのところも門澤さんのところも大きな会社じゃないですか。ユーザーの嗜好が機敏に早く変わっていく中で企業がどう動くかを、二人にお聞きしたいですね。


中馬:環境はかなり変わったなと思います。こうやって、テレビとスマホで仕事している人と話してるんですけど、テレビって受動的なもので、ソファに座って3メートルくらいの距離で視聴する。ひとりじゃなくて家族や友人と共有する。スマホって能動的に自分から好きなものを探していくコンテンツで、必ずしも全員が同じものを見る必要はないですね。距離感も画面まで30センチくらいで、テレビというパブリックなものとスマホという自分だけが見ている世界というもので対極にあると思うんですけど、これが共存している状態っていうか、「テレビからスマホへ」っていうんですけど、テレビには役割があって、スマホはそれに足し算をするみたいなのがあって選択肢が増えたってことだと思うんですけど、コンテンツはスマホが登場したことで自分で選べるとかその場でシェアできるとか。翌日学校で「あれ見た?」とか言わなくてその場でシェアできちゃう。それによってモノの作り方って変わりますよね。ゲームも変わりますし。そういうのがあるのかな。

江本:だいぶ前に「放送の通信の融合」っていっていたのですけど、あれはどっちかというと縄張り争いだったかもしれません。今はスマホを媒介にして手を組むという形になっていると思うんですけど、テレビ局からみてキャリアや外の会社との付き合いって何か変化ありますか?

門澤:圧倒的に変わったのは、テレビが家の真ん中にある時代はずいぶん前に終わって、個人個人が自分の部屋にテレビがあり、テレビが無かったらスマホでなんらかの映像コンテンツを見てる。でも、そこに流れているのは一緒だったりする。話変わりますが、NTTさんとテレビ局が組んで「NOTTV」というのをを作ったんです。3年くらいでなくなっちゃったんですけど。ああいうのは大企業同士が組んで失敗する代表例だと思うんですね。やろうとしていたことは、今の時代に近づいていて、今はNHKさんはNHKプラスっていうのをやっていて、放送と同時に配信すると。同じものを同じ状況で見られるようになり始めている。テレビも今後そうなるだろうし、24時間録画が普通になってきていて録画予約をする必要もなくなってきているのは感じます。一方で今起きているものを楽しもうという欲求は不変だと思います。今起きていることをみんなで楽しもうというのが、家庭の中にあったのか、ネットでいろんな場面に広まっていったのかの違いかなと思います。今でも、面白いドラマやっていたらTwitterでタイムラインがもりあがったりするので誰かと楽しいことを共有したいという欲求があって、今まで家族で共有だったのがネットで拡散するようになったけど根っこの欲求は一緒かなと。今日なんかだと、宮城県上空に浮かんでる白い物体、あれはなんだ?って盛り上がっている。あれも根っこは同じで今起きている面白い事なんだと思います。

中馬:テレビVSスマホっていうんですけど、これがおかしいと思うんですよね。ユーザー不在というか。もっというと、スマホでテレビみたいに視聴できるサービスっていっぱいできてきて、僕らもいろいろ試してるんですけど何一つうまくいかないんですよね。今の話を考えたら当たり前かなって。30センチの距離で本当に作ってるのか?ということだと思うんです。テレビの距離って3メートルで作ってるからテレビという王様のコンテンツをそのままスマホでも通用する!というのは少し傲慢なんだなって思いますね。その点で言うとYouTubeやちょっと違うけどTikTokとか縦長で短尺で、あれってテレビではできないと思うんです。あれはスマホの視聴行動や縦長画面が生きるんですね。

門澤:取捨選択が一瞬でできるというのがあるんですよね。

中馬:あとコンテンツも寄りなんですよ。30センチだから引きじゃだめだし。でも残念かな通信会社って新しいものが出ると、それをストレートに押し出してしまう、今回だと5Gって盛り上がってるけど多分やらかしちゃうんですよ。テクノロジーは変わるんですけど、テクノロジーを振りかざしてうまく行かないのは消化するまでに時間がかかるだと。新しい事=喜ぶ人もいるんですけど、誰もが楽しむようになるにはいろんな時間とかそれが流行るきっかけとかが組み合わさっていくそういうタイミングが必要なので、テクノロジードリブンの企画はうまくいかないですね。自信をもって証明できると思いますね。

江本:中馬さんの言葉とは思えない。(笑)

中馬:あ、一言だけ言い訳していいですか?これは通信会社の一般論で僕はヒットメーカーなので(笑)

江本:中で働く人の意識もお聞きしたいのですが、KDDIさんもネットの回線で儲けるところは変わらないと思うのですが、いろんなコンテンツを作っていったり投資をしてますよね。中で働いている人の意識の変化とか危機感ってどうでしょうか?

中馬:通信会社そのものでいうと、変化を繰り返してきていて、創業事業は電話なんですが・・・、でも誰もauを電話会社とは思っていないはず。僕らが入ったころは電話しかなかったんですけど、今電話の売上なんて微々たるものです。その後インターネットが出てきたんですけどインターネットで稼いでいたのもせいぜい5年くらいですね。で、ケータイが出てきてスマホが出てきてって…電話とかは過去のサービスになっていて、その点で言うとスマホもいつかなくなるから、次に何かしないといけないって恐怖心が原体験としてあるんです。だから、新しい投資とかオープンイノベーションとか誰よりも積極的に取り組んでいるのは、過去に何度も本業がディスラプトされたからなんです。で、過去のトレンドを振り返ると、自分たちがやったこと自体は流行ってないんですけど、仕掛けたことがきっかけとなった次のものが生まれている。誰かが種をまいて、3年、5年、10年でやっていかないと新しいサービスや文化って生まれないから。なので、そういう緊張感をもってやってますよ。

江本:確かにビジネスモデルの構造変化が目まぐるしいですよね。昨日まで稼ぎ頭だったのが次の時代にはそれがなくなっている。門澤さんのテレビ業界はあまり変わってないのかなと思うのですが。

門澤:テレビCMモデルですよね。でもこれが限界に来てるのはみんなひしひしと感じていて、僕も上層部に年何回か会うんですけど口をすっぱくして言われるのが「金稼いできて」って言われるんです。で、僕はアイドル番組をやったりとか東京アイドルフェスを立ち上げたりとかしていて、ちょっと金の稼ぎ方を勉強してきたんですけど、今で言うとe-sportsのイベントを制作してその製作費と放送を掛け合わせてマネタイズすると。去年も営業部署とか関係なく飛び込みでスポンサーのとこ行って話をしたりしてくる。そういう意識を高めていかないと生きていけない。昔の「俺たちは面白いモノ作ってたらいいんだろ?」っていう人はちょっとずつ、端っこの方にやられて古いモノだけ作ってなさい。というのは事実だと思います。言葉は悪いですけど、お金を作ると言うかお金を作ってITでもイケるという体制づくりをしないといけない。若い人は特に思っていますね。

江本:今は制作機材も変わってきて、4kの映像も簡単に撮影できたりして、プロの制作するものが問われていると思うんですけど、そういう人たちの変化ってどうでしょう?

門澤:今日も実は麻雀の番組をやっていて、4人いるところに1人ずつカメラマンが後ろから手牌を見ているところを撮影するというのをやっているんですが、麻雀を打つ4人と、カメラマン、とその助手ってなると、コロナでできなくなっている。だから、これをカメラ自動にしてやっていたりして、人数も1/3でできたりする。自動化はいいんですけど、じゃあ、カメラマンいらないのか?ってなっていくのは心苦しい部分ですね。カメラマンいらないってなる社会ってハッピーなのかなって思います。ただ、実際淘汰は進んでしまうと思います。

中馬:自動でやり始めたら、カメラ自動にしてAIで画像解析したら、採点も自動で出せますよね。

門澤:もうできてしまうでしょうね。何が楽しいのかを考えると、e-sportsと似通っているのは実況と、プレイヤーのパーソナリティー。これが楽しいんでしょうね。テクノロジーで解決できる部分はどんどん解決できていくと思います。

江本:なんか暗い話になっちゃいましたね(笑)

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トークテーマ「遊び方を自由に」

江本:最後の締めテーマですが、本題の「遊び方を自由」です。

中馬:「遊び方を自由に」ですか…難しいなあ。門澤さんと難しいからそっちに行かないようにってしてたのに(笑)

門澤:むずかしいなあ。

江本:例えば、予定調和というのが中馬さんからあったと思いますが、予定調和がコンテンツがなくなってきてやる人によっていろんな遊び方ができるのも一つでしょうし、テレビもユーザージェレテイテッドコンテンツとか人によって遊び方というか、見方も変わるのでしょうね。既婚者だったり、独身だったりで。こういう観点で遊び方を自由にというのはこういうことで…どうでしょう?

中馬:テレビ、スマホ、ゲームってジャンルもあやしくなってきてて、何が行われているのかは重要だけど、それがどこで行われているのかは重要でない気がしますね。では、なぜ人はとのコンテンツを見るのかというと、自分が共感すれば見る、自分の推してる人から勧められたから見るみたいな。となってくると、メディアでもなくコンテンツでもなく、結局のところ興味関心での本質は「人」。有名人である必要は必ずしもなくて、クラスのヒーローとか、会社でみんなから発言や行動が注目を浴びている人によって流行りが起きるため、クラスターが細分化しつつある。そうなので、ゲームとかスマホとかカテゴリーやメディアを定義せずに、ホットスポットというか熱量の高いところは探求していくと新しいヒットのパターンや面白いサービスに出会うことができるのかなと。

門澤:人に集まっていくというか、僕らはそれを昔から味わってきたことでゲームしようとか鬼ごっこしようとか人気者がいてそいつがいると面白いから人も集まるっていうのは変わってないのかな。ゲームも小籔さんのゲームを見るために数千人集まって、参加したい人は参加もできる。見ることもできる。見ても楽しいし参加しても楽しい。いつ抜けてもいいし、いつ参加してもいい。そんな遊び方が自由なのかなって思いますね。

中馬:じゃあその先どうなるのかっていうのが何かアドバイスというかそういうのが言えたらいいなって思ったんですけど、結局そうなるとユーザーにイニシアチブが移っちゃうんじゃないかなって。先ほど門澤さんが仰っていたみたいに一定のルールや規格が必要というのもそうだなって。サービス提供者側、キュレーションのセンスっていうか最後はそこなのかなって気がするんですね。より細分化すればするほど、最終的に目利きみたいなとこに行きつくのかなと。なんとなくこの人はセンスがいいとか面白いとか。

江本:示唆がありすぎてどう活かそうかな。門澤さんが言われていた人気者とか、中馬さんのセンスある人に人が集まってくるのは昔から変わってないのかなって。そういう人がいっぱい出てきちゃったんでしょうね。だからこそ細分化されちゃうのかなって。そうなると熱量も分散しちゃうのですけが、これをまた集めるというか、テレビ局だと分散されると集約された番組的には不利になっちゃうんですけど、熱量をどう集めると言うかマス化するのはどうしたらいいでしょう

門澤:面白いモノって、ホットスポットはできるけど同時多発的に火が付くものってあるじゃないですか。急にチーズが乗ったホットドックが街にあふれたりとか、タピオカ屋さんが駅ごとにあったりとか。あれって人間が持ってる習性というか、何か自然に発生するような気がするんですよね。でも、軒並み失敗するのは、今からタピオカ屋はじめてどうすんだみたいなのがあったりするし。難しいんですけど、必ずしもいいモノが埋もれていくわけではないでしょうね。皆さんネットワークがあるので。

中馬:スマホにより環境が変わって、ホットスポットが拾い上げられるようになった。点でおきている現状が、本当に熱量の高いホットスポットだったら、確実のトレントとなって大きなうねりをつくる。

江本:遊び方が自由になって細分化されるほど、共通項があるのかもしれないですね。分散したものを押し上げてマス化するというのはそうなのかなって思いますね。点を考えるのはいいのだけど、じゃあそれをマスに戻すものってなんなのっていうのがミクシィ にとってヒントになったように思います。最後に一言教訓というか聞いている人に役にたつことをお願いします。

中馬:今日はありがとうございました。遊び方を自由についてストレートにお答えできなかったかもしれないですけど、遊んでいる人たちがいかに楽しんでもらえているのかに尽きると思うので、ファンや熱量に向き合う本気度、それが最終的に勝敗を分けるのかなと思います。

門澤:長い時間お付き合いいただきありがとうございます。やっぱり作り手側に関してのお話ですが、楽しんでいないとダメだと思うんですよね。このコロナの間も鬱屈して家にこもっていると何も生まれませんし、ただこんな状況だと面白い事考えられないって聞くんですけど、いろんなコンテンツに触れて面白い事考えるという、うさぎ跳びじゃないですが筋力を鍛えるのは必要だと思います。あとはお金の使い方の変化とかも面白いと思っています。中馬さんのお話聞きながら楽しめました。ありがとうございました。

江本:本日はありがとうございました。

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CROSS ACCELERRATOR 01 遊び方を自由に。ご視聴をいただきありがとうございました。でした。次回CROSS ACCELERRATOR 02 時間を自由に。は7月8日を予定しています。お楽しみに!