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放課後にて(悩む幼馴染、林瑠奈)


─2月下旬─


林「モノマネやります」


○「…は?」


林「ダンカン馬鹿野郎!…どう?」


○「どうと言われても…」


林「その反応…。まさか○○、ビートたけしを知らないというのか。時代だなぁ…」


○「別にたけしは知ってるけどさ」


林「ならもうちょっと反応してくれてもいいじゃん」


○「いやこっちはいきなり呼び出されたと思ったら似てないたけしのモノマネ無理矢理見せられてんだよ、そりゃ反応も薄くなるよ」


林「ダンカン馬鹿野郎!カス!ゴミ野郎!マザーファッカー!ストロベリーフラペチーノ!」


○「たけしはそんな執拗に辛辣じゃねぇよ。あと最後スタバになってんじゃねぇか」


林「モノマネはオーバーにやるのが基本だからね」


○「ただ感じが悪いだけだけどな。何より似てないし」


○「てか、いきなりモノマネをやり出した理由は?」


林「…ほら、私って融通が効かないじゃん。よく言えば真面目じゃん、優等生タイプじゃん、東大生の9割を占めるタイプじゃん、IQ200以上にありがちなタイプじゃん」


○「お前IQ2くらいだろ」


林「…まあつまり、モノマネを練習しておけば機転が効くアピールができるってわけ」


○「ダウト」


林「は?」


林「いやいやいやちょっ、ちょっ、ちょっ、な、な、な、な、なにをいうだ、だ、だ、だ、き、き、き、き、き、きみは」


○「何そのモールス信号みたいな喋り方」


○「…なんか色々格好つけてるけどさ」


○「お前、クラス替えが不安なんじゃねぇの」


林「ギクリンチョノキ」


○「なんて?」


林「なんでわかったん」


○「そりゃお前と幼稚園から一緒だし。突然の奇行は悩みの合図。『林瑠奈のトリセツ』ページ2057にも書いてあるしな」


林「無断で人のトリセツ作るなよ、しょうもない女子大生みたいになってるじゃん」


林「あとページ多すぎるだろ。己のめんどくささを肖像権無視の文献で知ることになるとは思わなかったよ」


○「冗談冗談、マイケルジョーダン」


林「猟奇的につまんないなぁお前」


林「…○○の言う通りだよ。1年生の時は○○がパイプ役になって友達を作ってくれたからなんとなかったけどさ…」


○「突然の賢者タイムにコンフューズ」


林「ご存知のとおり、私は人見知りの極地にいる女。そんな私が○○を無くしたら私を取り巻く環境はどうなると思う…?」


○「とりあえず『自立しろ』と俺が一喝すると思う」


林「友人はおろか話すクラスメイトもできず、『うわー今日も林さん一人だわー』ってわざと聞こえるように悪口を言われ続け、やがて私だけがいないクラスLINEを作られるんだァァァァァァァァ」


林「そして机に突っ伏して1日を過ごす私の写真を勝手に撮られ、その画像を元に作ったコラ画像が学園中に出回ってしまうんだァァァァァァァァ」


林「そして机に突っ伏す私を一目見ようとクラスを取り囲む野次馬たちが現れ、『うわー林さんだー実在してたんだー』と、かつての人面魚のような扱いを受けてしまうんだぁぁぁぁぁぁ」


○「そんな世紀末みたいな状況で登校してるお前の精神がすごいよ」


林「いやぁ流石にそうなったら登校は拒否するけども」


○「もう2個くらい前の工程でそうなってても良いと思うけどな」


林「そもそもおかしいじゃんかよ!見た目も性格も趣味も好きな食べ物もウエストもヒップもバストもまん○の緩みも好きな体位も違う人々でクラスを作るなんてさあ!」


○「後半はお前のコンプレックスだろ。私情の異物混入はお控えください」


林「全く別の生命体同士が同じ空間で手を取り合う!そんなんもはや奇跡やん運命やん!弟子やったらパンパンにされてるで!」


○「どこの巨人師匠?」


林「だのにクラスの中で馴染めなかった者は異常者として扱われる!こんな不平等があるかよ!こっちはちょっとコミュニケーションが苦手なだけなのに!自意識が人より豊満なだけなのに!」


林「袋ラーメンの中で『これ絶対うまいやつ!』が一番好きなのに、


『あーこの人めちゃくちゃダルい商品買ってんなー』


とか思われたくないからカゴに入れるのはいっっっつもサッポロ一番の塩ラーメンだよ!本当はコッテリ味濃いめラーメンが好きなのに、なかなかあっさりラーメンの処女膜が破れないよ、自意識過剰さを異常と捉える他人の異常さに押しつぶされそうで、落ち着いて替え玉もできないよォォォ!」



○「最終なんの話だよ」


林「だいたいコミュニケーションなんて才能が全てでしょうが!今の学校の状況は純日本人Jリーガーがアフリカ系の助っ人外国人にフィジカルで負けて、


『萩野 △△  ポジション→FW  弱点→フィジカル』


って選手図鑑に書かれるようなものだから!」


林「今ここに再誕する!コミュニケーションとは…」


○「うるせぇぇぇぇ!」


林「ギャァァァァァ!!!」


林「ちょっ、待っ、私女子ィィィ!50m走10秒20の女子ィィィ!反復横跳び42回の女子ィィィ!故に突然のドロップキックはなしィィィ!」


○「知らねぇよお前の体力テストの成績は!」


○「だいたいてめぇさっきから周りに文句言ってばっか言って全然行動してねぇじゃねぇか!」


林「ぐぬっ…」


○「やっと行動したと思ったら何がたけしのモノマネだよ何がダンカン馬鹿野郎だよ!お前の脳みそが馬鹿野郎だよ馬鹿野郎!あとドロップキックは普通にごめん!」


林「…う」


○「う?」


林「うるさいよ○○馬鹿野郎!別に良いよドロップキックくらい許してあげる!!」


○「なんか逆ギレされたし音速で許されたし今までで一番たけしに似た馬鹿野郎が出てきた」


林「私だって分かってるよそんなこと!でも、でも…!」


林「…何も、したくっ…なさすぎるっ…」


○「悲痛な顔でなーに言ってんだお前は」


林「何より失敗が怖いよぉ…失敗を恐れれば恐れるほど行動力が削がれていくやどりぎの種システムに私は苦しめられているのだ…」


○「…もうその例えはスルーするけれども」


林「うん頼むわ…もう作者のボキャブラリーも限界だから…」


○「理由が生々しすぎる」


○「…まあ別に失敗してもいいじゃねぇか。この世は正解を選び続けなきゃ泥だらけになるマルバツどろんこクイズじゃねぇんだからよ」


○「なんでも挑んでみりゃいい。失敗しても気にしない。不安を頭に残し続けるより、いつかのおやつに食べたプリンの味をうっすら覚えてた方が人生楽しいんだぜ、多分な」


林「…うん」


○「ああもう、いつまでも落ち込んでんなよ!今日を一歩目の記念日として、はま寿司奢ってやるから行くぞ!」


林「・・・」


○「ん?なんだよまだ何かあんの?」


林「どうせカッコつけるなら回ってない寿司連れてけよ馬鹿野郎」


○「やっぱお前一年間人面魚扱いされろ」


fin.

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