もう一度向き合うTwilight Sky

はじめに

 タイトルが示す通り、本記事は多田李衣菜の楽曲「Twilight Sky」についての記事となります。CD発売から既に7年以上経っているという事で今更感半端ないですが、今年2月に行われたデレ7th大阪公演を終えて李衣菜Pとして色々と思うところがあり、この楽曲について考える時間が多くなったので、自分の考えを整理・再確認するつもりで本記事を執筆する事にしました。

 さて、このTwilight Skyという楽曲は、発表された当時から今日に至るまで多くの有識者によって考察を重ねられてきました。ですので、この記事を開いて下さった皆様に於かれましては、この楽曲に対する御自身の解釈をある程度持たれている事かと思います。そんな皆様の解釈を補強するような知見を披露出来る等とは思っていませんし、皆様がどこかで幾度となく聞いたような見解をドヤ顔で書いていたりもするかもしれませんが、本記事がTwilight Sky、ひいては多田李衣菜について改めて深く考えるきっかけ位になれれば幸いです。

 なお、本記事では主に「Twilight Sky"そのもの"のメッセージ性、歌詞解釈」に焦点を当て、歌詞を出来る限り追っていきながら考えていく事を目的としております。本当は李衣菜の事も絡めた記事にしたかったのですが、歌詞を追っていくだけでも中々のボリュームになってしまったため、それについてはまた別の機会にしたいと思います。

 前置きからすっかり長くなってしまいましたが、これより先、本題に入っていきたいと思います。

1番Aメロ

どこまでも広がる グラデーション
ゆっくりと オレンジが燃える

 はい、それでは早速1番Aメロから見ていきたいと思いますが、ここは何となく情景がイメージ出来そうですね。夕焼けのオレンジと空の群青が入り混じったグラデーションが空一面に広がっていく光景を歌っているのでしょう。

光差す放課後 続くエモーション
いつまでも 笑い声響いた

 「光差す放課後」というワードが出ているので、舞台は学校と考えてよさそうです。この楽曲を歌う人は女子高生なので、ここでは高校における日常と考える事にしたいと思います。夕焼けの光が差している教室で続くエモーション。エモーション(emotion)には単純に(喜怒哀楽の)感情という意味があります。「いつまでも笑い声響いた」というフレーズと絡めて考えると、気の合う友達と笑い合う楽しい日常を過ごしていた、みたいな感じで捉えればいいでしょうか。

 歌詞に示される情景を何となく掴んだところで、1番Aメロについてはこの辺で一旦サラッと流して、次に行きたいと思います。

1番Bメロ

Shooting the star
闇を切り裂いて進むよ
Beating my heart
それは止められない すべてを輝かすよ

 このBメロから星に関するワードが頻出するようになります。星と言えば、シンデレラガールズというコンテンツに於いて度々登場する要素ですよね。「星」や「star」といった言葉が楽曲のタイトルや歌詞によく使われますし、ゲーム中で手に入るカードにも、星とアイドルを強く結びつけたものが度々登場しています。この楽曲への理解を深める上でも、「星」という言葉が持つ意味を自分なりに捉える事は避けて通れないでしょう。 

 それを踏まえて改めてBメロを見てみると、「闇を切り裂いて進む」「止められない」「全てを輝かす」といったフレーズが何となく「Shooting the star」に掛かっていそうです。更に、starの前にtheという定冠詞が付いているので、この「星」が特別な"一つ"である事が分かります。闇を切り裂き、全てを輝かせながら進み、止められない……改めて書いてみるとすごくパワフルな単語を連発していますね。向かうとこ敵なし、ガンガン行こうぜみたいな勢いを感じます。

 では、ここで言う「闇」って具体的にどんな事なんでしょうか。李衣菜位の高校生が学校生活において直面する闇……私が考えるに、それは成績だったり、親や先生友達等との人間関係だったり、自分の将来だったりと言った、悩みや不安なのでは無いかと思います。そして、ここで歌われている星がそんな悩みを切り裂いてくれる存在なのだとしたら、それは例えば部活を頑張ったり、バンドを組んでみたり、学校では習わないような分野を勉強してみたり……人によって形は違うけど、それに打ち込んだり、触れている間は悩みや不安を忘れられる、まさに李衣菜にとっての「ロック」に当たるものなのではないでしょうか。

かの有名なしんげきの神回「だから背中を押せるんだ」でも、自分が夢中になれる何かを持っているか、李衣菜がファンに問いかけるこんな一コマがあります。

12008305 1コマ目


 まだ1番のAメロBメロしか見てないのにかなり早計ですが、ここは一先ず

星=夢中になって打ち込める程好きなもの

という風に捉え、以降を見ていきたいと思います。

1番サビ(1)

無我夢中 きらめいて 流れる星のストライド
才色兼備 いいけれど 三日月も綺麗だよね

 無我夢中は、我を忘れる程に物事に熱中する様……まさに先ほどBメロにて登場した「星」を表す言葉ですね。そしてストライド(stride)は「歩幅」という意味です。自分が夢中になれるものに対して、脇目も振らず大股でガンガン進んでいくみたいな感じでしょうか。Bメロでの勢いをそのまま受け継いでいるフレーズだと思います。

 次のフレーズでは、「才色兼備」という四字熟語を引き合いに出して、三日月も綺麗だと言っています。完璧である事を表す才色兼備が満月なのだとしたら、三日月は不完全、未完成である事を表していると捉えてよさそうです。そんな三日月を肯定しているのだとしたら、このフレーズは自分より優れている人がいたとしても、自分は自分のままでいいという風に読み取れそうです。先ほど考えた「星」の意味を踏まえてもう少し踏み込むと、自分が打ち込んでいる事について、どれだけ優れているかよりも、自分がそれを好きだという事実が大事なんだと捉える事も出来るかもしれません。

1番サビ(2)

純真無垢に 見えるけど 星の海翔けるグライド
賛否両論 いいじゃない

 (いい感じに筆が乗ってきたのでどんどん進めて行きたいところですが、このフレーズについては、2番のあるフレーズと併せて考えた方がよいと感じたので、ここでは一旦スルーしたいと思います。)

1番サビ(3)

繋がって 離れる
連なって 輝く
心を 追いかけてく

 1番のラストです。ここで初めて登場する「連なって輝く」というフレーズは、この楽曲の中で3回も使われています。落ちサビのあのフレーズと同様、とても印象深いフレーズですよね。

 では、ここで「連なって輝く」ものとは一体何なのでしょうか。Bメロからここまでに掛けて星にまつわるフレーズが頻出していましたし、「輝く」とくれば、星が輝いているのかな?と何となく考える事は出来るでしょう。しかし、ここまで星というワードを夢中になって打ち込めるものという特別な"一つ"として読み進めてきました。星が一つだけなのだとしたら、連なる事は出来ませんよね。「連なって輝く」という事は、星に寄り添う形で輝いている何かが無ければいけません。

 それを踏まえて「星」と繋がりそうなものを考えると、それは最後に登場する「心」なのではないでしょうか。「心」に注目して全体を見てみると「繋がって離れる」「連なって輝く」というフレーズは、いずれも「心」に掛かっているように見えてきます。心が星と繋がり、自分から離れていく……つまり、心を奪われ自分から離れていくほどに夢中になれるもの(=星)に出会う。そして、星と共に輝く心を追いかけるように、自分という存在もまた、自分が巡り合った星に向かって突き進んでいく、そんなフレーズのように私は感じました。(正直ここ自分でもかなり強引に纏めてる自覚があるので、是非皆様の意見や見解をお聞きしたいところです)


 という形で、ここまで1番のフレーズについて考えてみました。振り返ってみると、終始「星=夢中になれるもの」へのアツい想いが歌われていたように感じます。楽しい事も不安や悩みもある学校生活を送りながら、自分が夢中になれる好きな事に打ち込み続けている、みたいな感じですね。


 こんな感じで、次は2番の歌詞を見てみましょう。必要に応じて1番のフレーズとの比較も行っていきたいと思います。

 それではAメロから見てみます。

2番Aメロ

果てしない夜空を ペネトレーション
ちょっとだけ 暖めてほしいよ

 1番が夕焼けを歌っていたのに対し、2番では夜空について歌っているように見えます。ペネトレーション(penetration)は「侵食・浸透」という意味だそうです。そして、「夜空をペネトレーション」の後に「ちょっとだけ暖めてほしいよ」と続いています。という事は、1番の夕焼けから時間が経って、空はほとんど闇が覆っているけれども、夕焼けの明るさがまだほんのちょっとだけ残ってて夜空を侵食してる、みたいな感じでしょうか。となると、完全な夜というよりかは、夕方から今にも夜に切り替わりそうな時間帯と考えられます。ですので私は、まさにここで歌われている空こそ、この楽曲のタイトルにもあるtwilight(=黄昏時なのではないかと考えています。

鍵掛けた放課後 グラデュエーション
いつまでも 続くと信じてた

 グラデュエーション(graduation)、これは「卒業」という意味です。更に、「鍵掛けた放課後」は1番の「光さす放課後」に、「いつまでも続くと信じていた」は同じく「いつまでも笑い声響いた」にそれぞれ対応しているように見えます。友人と楽しく過ごしていた日常がいつまでも続くと思っていたけれども、卒業を迎えそんな日常から別れを告げなくてはならない時が来てしまった、といった感じでしょうか。

 ここで1番と2番のAメロと見比べてみると、Aメロの歌詞は、

前半⇒空模様の描写 後半⇒学校生活の描写

 といった同じ構造で成り立っている事が分かります。

 更に、1番における歌詞の内容が

前半:夕焼け⇒後半:放課後の教室で過ごした日常

であるのに対して、2番では

前半:黄昏時⇒後半:過ごしてきた日常からの卒業

となっており、空模様の変化(夕焼け⇒黄昏時)と年月の経過(放課後の教室で過ごした日常⇒過ごしてきた日常からの卒業)がリンクしているように見えてきます。
 これを踏まえてもう一度2番Aメロの歌詞を読んでみると、「ちょっとだけ暖めてほしいよ」というフレーズには、

まだもう少しだけ夜にはならないでほしい
⇒この日常をもう少し続けていたい

みたいな学校生活に対する名残惜しさが込められている気がしてきます。

 1番Aメロだけを見ると単なる風景描写のように見えていましたが、2番と併せて読むことで、人生における年月の経過を空模様の変化に例えて表している事に気づく訳ですね。

2番Bメロ

Fallin'skies
星は束になって 落ちて
Guiding lights
それは幸せな道へと続くサイン 

 1番と同じように2番のBメロでも星について歌われていますが、両者を見比べると、「星」のニュアンスが若干違うような気がしてきます。1番では「闇を切り裂いて進む」とか「止められない 全てを輝かす」と言った、自らが先に先に進んで行くようなニュアンスのワードが使われていましたよね。ですが、2番ではguiding lights(=誘導灯)や「幸せな道へと続くサイン」と言った、道しるべのようなニュアンスのワードが使われています。また、1番では星が特別な"1つ"であった事に対して、2番では「束になって落ちて」って書いてありますから、星は1つだけでは無くていくつもある訳です。1番では「星=夢中になれるもの」として読み進めてきましたが、こうなってくると改めて星の意味を考える必要がありそうです。

 ここで注目したいのが、2番Aメロの項にて先述した「空の様子の変化と年月の経過の対応」です。1番から2番に曲が進行する際、空模様は夕方から黄昏時に変化しています。黄昏時という事は、今にも夜になって星が輝き始める時間帯です。そして黄昏時=卒業というようにリンクしているのならば、2番における星は、普段の学校生活(=夕方)では見えないけど、卒業が近づいてくる(=黄昏時)と見えてくるものに該当するのではないか、と考える事が出来ます。

 卒業を間近に控えた高校生が迎えるものと言えば、それは環境の変化です。進学や就職等を迎える事で、これまで共に過ごしてきた人達と別れ、住む場所が変わり、周りの人間関係が変わり、自分が取り組むべき事も変わる……何もかもが新しい未知の世界に足を踏み入れていきます。そして、自分のやりたい事や進んで行く道をある程度自由に選択出来るようにもなります。    

 そのように考えるのならば、この2番においては、

 星 ⇒ 未来、未知の経験、選択、可能性

 と言う風に捉えて読み進めて行った方がよさそうです。

2番サビ(1)

諸行無常 絶え間なく 流れる星のファインダー
未来永劫 変わらない それじゃつまらないよね

 諸行無常は、軽く調べてみたところ「物事は常に変化し続け、一瞬たりとも同じ姿であることは無い」みたいな概念らしいです。絶え間なく星々が流れていく様が、諸行無常だと言っているんですね。なるほど、確かに空に浮かぶ星々は常に同じ位置にある訳ではありません。時間の経過や季節の変化に応じて、星空は移り変わっていくものです。夏には見えるけど冬には見えなくなる星座とかありますもんね。

 ですが2番における「星」の意味を考えると、これはある意味ネガティブなフレーズにも見えてきます。星空が常に変わっていくのだとしたら、いずれ「星=未来・可能性」を見失ってしまう事もあるでしょう。具体的には挫折とか失敗とか、人との別れと言った事がそれに当てはまるのではないかと思います。

 もちろんネガティブな事だけではありません。確かに見えなくなる星もあるけれど、逆に新たに見えてくる星もあります。挫折や失敗だけではなく成功の体験を通して自分では思いもしなかった可能性に気づいたり、新しい知見や価値観に触れたり、人との新しい出会いもある事でしょう。しかし、星を見失う事(挫折や失敗)を恐れていては、そのような星々に出会う事は叶いません。だからこそ「未来永劫変わらない それじゃつまらないよね」というフレーズは、挑戦しなくては成長も進化も出来ないという事を歌っているのではないかと私は考えています。

 「挑戦」や「チャレンジ」といった言葉は李衣菜自身もよく口にする言葉だったりします。

ダウンロード (4)

2番(1番)サビ(2)

清廉潔白 だけじゃない 星降る海のサレンダー
悪口雑言 気にしない

 このフレーズについてですが、先程スルーした1番サビ(2)も併せて見てみたいと思います。1番サビ(2)のフレーズをもう一度見てみましょう。

純真無垢に 見えるけど 星の海翔けるグライド
賛否両論 いいじゃない

 これらのフレーズ、並べてみると何となく同じような事を言ってるような感じがしますよね。純真無垢と清廉潔白はいずれも穢れがないとか心が清らかみたいな意味ですし、その後ろに「見えるけど」「だけじゃない」と言った逆説的な言葉が続いている事も共通しています。更にその後星の海でグライドしたりサレンダーしたりしていて、最終的に外野からの口出し上等みたいな感じで同じように締めくくっています。言っている事が共通しているという事は、曲中の中でも特にメッセージ性が強いフレーズと捉える事も出来るでしょう。気合を入れて考えていきたいところです。

 とりあえず言葉の意味から整理しておきます。まず、1番のグライド(glide)は「滑空する」という意味です。そして2番のサレンダー(surrender)はカードゲーム等で「投了」の意味で使われるのをよく目にしますが、「溺れる、身を任せる、耽る」といった意味もあるそうです。ここでは後者の意味で捉えた方が何となく意味が通りそうですね。それを踏まえると「星の海翔けるグライド」は、数ある星の中で自分が出会った夢中になれるものと共に進んで行く、「星降る海のサレンダー」は、これから出会っていく無数の未知や未来に耽っている、みたいな感じに捉えればいいでしょうか。

 賛否両論や悪口雑言についても、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。この賛否両論は悪口雑言は誰から発せられるものなのでしょうか。例えば、子供が漫画家になりたいとか、ミュージシャンになりたいとか、それこそアイドルになりたいとか言い出した時、「止めた方がいい」とか「無理に決まっているだろう」とか「将来の事本気で考えてんのか」と言った言葉を浴びせてくる存在……それは決まって周囲の大人達ですよね。そのように考えれば、ここで歌われている純真無垢や清廉潔白は、「大人が子供に求める姿」と捉える事が出来るでしょう。
 
 以上の事を踏まえれば、何故このフレーズが同じような意味で2回に渡って登場したのかが何となく分かる気がします。大人達が言うように、堅実に、真面目に生きる事も確かに大事だけど、それよりも大事にしたい事がある。例え自分が「三日月」だったとしても、自分が出会った「星=夢中になれるもの」を必死で追いかけていきたい。例え失敗や挫折を味わう事になったとしても、自分の心を動かすような「星=未来、可能性」に出会っていきたい。大人達が言う事よりも、自分の心を揺さぶるものを信じる……反骨精神に溢れた、この楽曲の中で一番ロックなフレーズだと思います。

2番サビ(3)

連なって 輝く
絆いだ この先
交わって また始まる

 2回目の「連なって輝く」がここで登場します。1番と同様に「つなぐ」というワードを伴っていますが、1番では「繋」だった事に対して2番では「絆」という漢字が使われています。となると、ここでは何となく人と人とのつながりの事を言ってそうですね。ここまで2番の歌詞を見ていく中で、卒業・環境の変化に伴う別れや、流れていく星々を追う中で訪れる別れについて言及してきました。しかし、例え一度別れて違う道を歩んだとしても、互いがそれぞれの「星」を見上げているなら、いずれ見ている「星」が重なる瞬間があるかもしれません。そんな時、一度絆を紡げたのならまた始める事が出来る……そのように考えれば、ここで連なって輝くのは、自分の未来と出会ってきた人達の未来であると捉える事が出来るでしょう。


 という事で2番の歌詞についても一通り見てきました。1番では、ひとつの事に対して無我夢中に打ち込んでいるようなフレーズが多かった印象ですが、2番では学校生活からの卒業を迎えて、未来に思いを馳せるようなフレーズが多かったように感じますね。


 それでは、いよいよ落ちサビからラストに掛けて、一気に見ていきます。

落ちサビ(1)

巧く歌うんじゃなくて
心を込めて歌うよ
世界でたった一人の
君に伝わりますように

 Twilight Skyという楽曲を象徴し、この曲を語る上で最も解釈が分かれるのはこのフレーズではないでしょうか。ここまでの歌詞を振り返ると、「グラデーション」と「エモーション」、「ファインダー」と「サレンダー」のように韻を踏んだり、サビの歌い出しを四字熟語で統一したりと、歌詞の構造に技巧的な部分が見受けられました。しかし、これ以降の歌詞を先読みしてみると「君の歌聴かせて」とか「間違ったっていいんだ」とか、何かを訴えかけるようなフレーズが頻繁に登場するようになります。このフレーズに差し掛かった時、この楽曲はまさに「世界でたった一人の君」へのメッセージに姿を変えると言えるでしょう。
 この楽曲を「アイドル多田李衣菜のデビュー曲」として捉えた時、「世界でたった一人の君」とは誰を指す言葉なのか。この命題について触れていくと、歌詞そのものに対する理解を深めるという趣旨から外れていきそうなので、別の機会に譲りたいと思います。

落ちサビ(2)

幾千幾億無限の
流れる軌跡の中で
本当の自分の気持ち 見逃さず出逢うために

 先述したように、「巧く歌うんじゃなくて心を込めて歌うよ」は、これ以降の歌詞に掛かっています。そして、「幾千幾億無限の流れる軌跡」は2番サビ(1)の項で登場した「諸行無常絶え間なく流れる星」と同義と捉える事が出来るでしょう。味わう失敗や挫折、成功の喜びや得られる新しい知見や価値観、そして人との出会いと別れ……そんな沢山の経験の中で、本当の自分の気持ち=自分が本当にやりたい事、なりたい姿を見つけて欲しい、というような願いが込められている気がしますね。

落ちサビ(3)

明けゆく東の空で
目覚める夢の続きが
たとえ違ったとしても 君の歌聞かせて

 ここまで、この曲の歌詞を追っていく中で、

夕暮れ ⇒ 放課後の教室で過ごした日常

黄昏時 ⇒ 過ごしてきた日常からの卒業

という風に空の様子の変化と年月の経過がリンクしており、

星 ⇒ 夢中になれるもの/未来・未知の体験・選択・可能性

を表しているのではないかと考えてきました。
 であるとすれば、この曲において夜明けを迎えることはどんな事を表しているのでしょうか。ここまでの歌詞を振り返ると、夕暮れから黄昏時を経て、そして夜を迎え、夜空には幾千幾億もの星が絶え間なく駆け巡っている様を歌っていましたよね。これを年月の変化に置き換えると、夢中になれるものに没頭していた高校生活からの卒業を経て、新しい環境に飛び出し、幾つもの未知の体験や可能性に出会っていく、という事を表しています。     
 しかし夜明けを迎え空が明るくなると、当然星々は見えなくなっていきます。これまで眼前に広がっていた「星=未知や可能性」が見えなくなる……そして、「目覚める夢の続き」は、「現実」に戻り、向き合う事であると考える事も出来ると思います。
 そのように捉えると、この曲においては

夜明け ⇒ 大人になる事

と捉える事が出来るでしょう。
 そして大人になった時、思い描いていたものとは違う道を選んでいるかもしれません。だとしても、君の歌=これまで進んできた道のりを聞かせて欲しい……夢を叶える事ではなく、夢を追いかけようとする事を肯定する優しいフレーズだと思います。

ラスサビ(1)

一度きりの旅だから
自分だけの旅だから
好きなもの集めるんだ 間違ったっていいんだ

 一度きりで自分だけの旅。卒業(=黄昏時)を迎え、外の世界に飛び出す事で始まり、本当に自分がやりたい事・なりたい姿に出会い、大人になる(=夜明け)まで続く旅。黄昏時が旅の始まりであるなら、この楽曲のタイトルである「Twilight Sky」はまさに「旅の始まり」を意味していると言えます。そのように考えると、アイドルという世界へ旅立つ多田李衣菜という女の子に最初に贈られるデビュー曲として、これ以上に相応しいものはないと感じますね。エモい(確信)。

 そして、そんな旅の中で、自分が「良い」と感じたものや、心動かされるものに出会っていく。例えその過程で、失敗や挫折を重ねてもいい。だってそれさえも含めて一つ一つ集めてきたものが「幸せな道へと続くサイン」なんですから。

ラスサビ(2)

忘れない この気持ちも
忘れない この痛みも
ねぇ 感じていたいんです

 先のラスサビ(1)を受けてのフレーズだと思います。好きなものを集めていく旅の中で出会う感情、心躍る体験や辛い思い出、その一つ一つが幸せな道に繋がっているからこそ、忘れてはならない。忘れないように感じていたい。説明不要なまっすぐなフレーズですね。

ラスサビ(3)

連なって 輝く
止めても あふれる
I love you because you are you

 最後の「連なって輝く」です。落ちサビからここまでに歌われていた事を考えるならば、ここで連なって輝くのは「自分だけの旅の中で集めてきたもの」でしょう。良い事も悪い事も含めて、溢れる程に集めてきたもの一つ一つが、これから大人になっていく自分を作っていく……

そして最後の一節

「あなたがあなただから、あなたが好きなんだよ」

 誰かに言われるでもなく、自分で考え、自分で選択して、自分らしく生きていく事を肯定してくれるフレーズ。そんなフレーズで締めくくるこの曲はまさに、なりたい自分を見つけるために旅立ち、大人になろうとする者達への暖かくも力強いエールであると私は思います。一生に一度は言ってみたい台詞ですね。こんな台詞がスッと出てくる大人になりたかった。

おわりに

 いかがでしたでしょうか。普段はこのような文字書きをしないもので、自分で読み返してもかなりとっちらかった文章になってしまったなと思います。こんな記事をここまで読んで下さった方がどの位いらっしゃるか分かりませんが、ほんと読みにくくてすみませんでした。ここまで長々と書いてきましたが、この記事は考察等というカッコいいものではなく、もはや「こうだったらいいな」という私の願望に過ぎません。あまりの解釈違いっぷりに憤りを感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、御自身の考え方や想いを改めて思い返すきっかけになれたのなら、この記事を作った意味もあったのかなと考える次第です。 

 内容的にも歌詞の解釈を書き散らかしただけでかなり宙ぶらりんなものになってしまいましたね。本当はタイトルの意味等も含めてきちっとまとめて締めくくろうと思っていたのですが、このような形になってしまいました。今後このような記事を書く機会がいつになるか分かりませんが、今度はもう少し纏ったものを披露出来るように頑張りたいと思います。

ともあれ、ここまで読んで頂きありがとうございました。


 

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