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【#ProcriarFilms】Vol.1「型破り」横川凌大

3年前。初の海外リーグ挑戦。

新参者である私はチームに迷惑をかけないことを最優先に考え、ミスを恐れ無難なプレーを続けていた。

海外のプレースピードに対応できるようになると次第にミスも減り、それが自信となっていった。

そんな中で監督に告げられた言葉が今でも心に残っている。


「型に囚われすぎるなよ」


GKはミスしてはならないという固定観念。

チームとして取り組んでいたパターン化されたビルドアップ。

前線の強靭なFWに素早くボールを届けるというチーム戦術。

この型の通りに動くことでチームは円滑に進むし、迷惑はかからないし、決められたやり方を遂行することでチームに貢献できると思っていた。

だが実際は型に囚われ、自分の持ち味である長短のパスを織り交ぜたビルドアップという特徴は消えていた。

何の味もしないただのチームの駒になっていたことにそこでようやく気付いた。

日本と海外を比べて1番印象に残っているのは、チーム(組織)への貢献の仕方に対する考え方の違いだった。

日本の場合、チームから与えられた戦術(任務)や役割を真面目にこなすイメージが強い。それに加えてチームへの帰属意識や犠牲心が強く、チームの為にハードワークする。これがチームへの貢献の仕方だ。

一方で海外の場合は、与えられた戦術は理解した上で、そこに自分の個性を加えてチームにプラスアルファを与えることで、初めてチームに貢献できるという考え方の人が多い。

具体的にいうと、海外の選手たちは自分の活躍(=得点)でチームを勝たせることへのこだわりが強い。

だから各々ゴールへの意識が物凄く高く、守っていて常に怖い感覚がある。これは日本では味わったことのない感覚だった。

決して日本人の考え方を否定しているわけではない。

チーム(組織)や仲間のためにハードワークできることは素晴らしいことだ。

でもそれはあくまでチームによって決められた戦術(任務)という型の中での話。


じゃあその型が通用しなかったら?


その点海外の人たちは元々型に囚われていないので、型が上手くはまらなかったとしても臨機応変に最善な選択を"躊躇なく"選ぶことができる。

また、チームにプラスアルファを加える働きをし続けるので、見えていなかった可能性がどんどん広がり、型は次第に進化していく。

型に囚われがちな日本人はその進化のスピードについていけず、サッカーに限らずあらゆる面で海外に置いていかれてしまうのではないだろうか。

1つ言っておきたいのは、海外の選手たちはただ好き勝手に行動しているわけではないということ。

チームで決められた型はある程度遂行した上で、ちゃんと判断をもって個性を加えているのだ。

以前、歌舞伎役者の中村勘九郎さんは、

「きちんと基礎を徹底的に身につけて、その上で自分の個性を発揮することを"型破り"という。基礎も会得する前に勝手なことをやる"形無し"とは別物なんだ。」

と仰っていた。

型破りと聞くと常識が通じないとか、破天荒というようなイメージがあり、個性が強い人は嫌われやすい雰囲気のある日本においてネガティブな印象を持つ人もいるのではないだろうか。

でも実際はそうではない。

基礎を会得した上で個性を発揮し、組織にプラスアルファをもたらせる。

より良い組織を作るには、型破りな人間が増えるべきなのだ。

今年は入団初年度ということもあり、クラブの雰囲気や色に染まることも必要だろう。

だがそんな型にははまりすぎず、個性を存分に発揮してチームをより良いものにすることに貢献していきたい。

その方法はまだ模索中ではあるが、ピッチの上ではビルドアップという特徴を活かし、ただ勝つのではなく、自分の活躍でチームを勝たせるくらいの欲は持っていようと思う。


最後に余談だが、この言葉をかけてくださったジョバンニ・テデスコ監督は現役時代ペルージャで中田英寿さんと中盤でコンビを組んでいた。

そのため彼の中の日本人のイメージはヒデであり、「ヒデはもっと主張してたぞ!」「ヒデは戦術に囚われてなんかいなかった!」などど常日頃から中田英寿と比較されていたのはちょっとしんどかった(笑)

ただ私のような何も実績のない若造に対しても高いレベルを要求してくれたのはいい経験だったし、中田英寿が世界のトップレベルで活躍できた理由がわかった気がした。


今年はプロクリアルの中田英寿を目指そうかな。

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