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"元公務員が教える最小コストで補助金活用”補助金活用戦略を徹底解説

新型コロナウィルスを契機に、補助金の施策がどんどん打たれるようになり、これまで補助金の存在を知らなかった方々も、前よりも身近に補助金を感じるようになったと感じています。
そんな中、「元公務員が伝える、補助金を使う前にぜひ知っていて欲しいこと」をまとめました(私の過去のnoteとリバイス版です)。
補助金を活用して「こんなはずじゃなかった…」という方を少しでも減らせることを願っています。

1.補助金はキャッシュフロー対策ではありません!

「資金がないから補助金」と補助金を融資や投資のように考える方がいますが、補助金は融資・投資ではありません。
「補助金は原則後払い」です。融資・投資であれば、着金ありきですが、補助金は、事業終了後、「確定検査」という書類審査を経た後に支払われます。着金のタイミングは一番最後です。

一般的な補助金の流れ

一般的な補助金の流れのコピー

現在資金がない方が、補助金申請してしまうと、そもそも事業を運営するキャッシュが回らない、という状況になります。
補助金はキャッシュフロー対策には有利ではないことにご留意くだ。

2.「補助上限」と「受け取る補助金額」は違います!

補助金資料では「補助上限〇〇万円」と記載があります。そのため、つい「上限〇〇万円で何をするか」という思考に陥ります。
「補助金は段階的にもらえる可能性のある金額が下がっていく」という仕組みであることをご理解ください。

一般的な補助金の流れのコピーのコピー

❏申請
上限いっぱいで申請すること遠慮してしまうと、上限額はもらえません。

❏採択
申請後、採択通知が届きます。多くの場合、申請額を下回る採択額となります。カット率は、その補助金の競争率や予算上限により異なります。

❏交付申請・交付決定
採択通知後、採択額の範囲内で交付申請を行います。交付申請では、見積書等のエビデンスと共に提出が必要となるため、若干数字を減額せざるを得ない可能性があります。

❏中間検査・確定検査
補助金が適正に使われているかを確認するため、「書類が整備されているか」「補助事業の目的以外の使用はないか」という視点で検査がありますこの検査で認められない場合、その金額は対象外とされてしまいます。

このように段階的にもらえる可能性の額が下がっていくのが補助金の仕組みであることに留意してください。

3.事業開始=発注は「交付決定後」

補助事業においては事業開始を発注行為を起点に考えます。
また、採択ではなく「交付決定」がいわゆる国との契約にあたる行為です。
そのため、事業開始=発注は、交付決定した後でないと、補助金として認められません。

一般的な補助金の流れのコピーのコピーのコピー

4.補助金の事務コストを甘くみない!

補助金を利用する際の「目に見えないコスト」として「書類整備コスト」が存在します。補助金を利用して「書類整理が大変」という声はよく聞きます。上記のとおり、きちんと書類が整理されていない場合、補助対象経費から外される場合があります。具体的には「専任1人」くらいのコストは見込んでおいた方がいいように思います。
以下に、参考として1つの契約で用意すべき書類の例を示します。

一般的な補助金の流れのコピーのコピーのコピーのコピー

このように支払が発生するものにすべてに対して、一連の書類を用意する必要があります。
費目によって用意すべき書類も異なります。「人件費」「旅費」は用意すべき書類が多い印象です。
テクニカルにこの負担を軽減する方法としては、「契約の件数を減らすこと」「書類整理が比較的な簡単な費目を選ぶこと」です。
加えて、事業が終了するタイミングでは「実績報告書」を提出し、事業終了後も5年間は「事業化状況報告」を提出する必要があります。
このように補助金を利用する場合は、「書類整備コスト」に見合うリターンがあるかを考える必要があります。

5.「補助金は返さなくていい」は少し違う!

補助金には「収益納付」という考え方があります。「補助金相当額以上の”利益”が発生した場合、国に返す」ということです。

補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)
第7条2項
各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができる

具体的な収益納付の内容は公募要領に記載されます。
「ものづくり補助金」では、賃上げ要件等、条件をクリアすることで、上記の収益納付が免除されていますが、上記のような考え方がある旨をご留意ください。

最後に…

補助金を申請する際は、「いかに採択されるか」が主眼になりがちで、「自社の事業をどう成長させるか」「採択された後にどうなるか」といった少し先のことを考える力が少なくなってしまいます。
そういった意味も含めて、「補助金があるからやる事業」は個人的にはあまりおススメしていません。補助金がなくてもやると意思決定したものについて、補助金活用のコストを最小限にした上で、ぜひ自社事業を成長させるテコとしてご活用頂ければと思います。



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