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宇野維正先生考察第六十六段 FM COCOLO Whole Earth RADIO 「ポップカルチャー2022 ハーフタイム」 出演回の宇野先生編

宇野先生より有料配信の文字起こし禁止を半ば名指しで指摘されてしまったために先日の横浜のトークショウと大阪のトークショウの書き起こしはやめましたが、「無料のコンテンツはあんまり良くはないけど禁止まではしない」との宇野先生のお言葉ありましたので今回は更新します。内容はFM COCOLO Whole Earth RADIO 「ポップカルチャー2022 ハーフタイム」 からのピックアップになります。地方のラジオは無料ではあるけど全国のみんなが聴ける訳ではないコンテンツなのでちょうど良いと思い文字起こしします。聴きたいけど聴けない人もいるでしょうし。ちなみは私はradikoのエリアフリーで聴いています。では始めていきます。




『映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』
『我々2人が半年ぶりにFM cocoloからお送りします。今回も2週に渡って2022年前半の音楽、映画、テレビシリーズを中心に世界の最新エンターテイメントについてお話していきます。一週目の今回は今年前半の音楽について話していきます』
『ついに来日とかもバシバシ決まって、今年はおっきなフェスも三年ぶりに万全な形でやれるようになった。良かったですね。とりあえず』

『プロモーター、ライブハウス、大きな会場含めこのコロナの間にね。大丈夫なのかな?と心配で、もちろん水面下では足を漕ぎまくって大変なことにはなってると思うんですけど、とりあえずエンターテイメント、ライブエンターテイメント、海外アーティストのライブエンターテイメントが復活したのは嬉しいですね』
『まずは今年の秋に来日が決定したジャスティンビーバーの最新曲オネストを聴いて貰いましょう』





『ジャスティンビーバー featドントリーバーでオネスト。ドントリーバーはトラヴィススコットと同じレーベルのラッパーで地元のダチというか後輩みたいなラッパーなんですけど、ドントゴー以来ジャスティンビーバーとは馬が合うのかまたやってますが、これもかっこいい曲で、ジャスティンビーバーの浮遊感のあるラップトラックは彼の一つの今のシグニチャーと言って良いんじゃないでしょうか。今年のグラミー賞のピーチズのパフォーマンスも最高で。いきなりピアノの弾き語りから始まってそこから曲に雪崩れ込んで行く。シンガーとしては誰もが一目置くアーティストですが、ミュージシャン、プレイヤーとしての総合音楽家としてのジャスティンビーバーの成長、成熟を凄い感じさせるパフォーマンス。そしてこの曲も今のジャスティンビーバーの一番得意なやつって感じで来日への期待が高まるばかりってところです』
『ジャスティンビーバーは新しいアーティストとも未だに組んでいて彼のおかげにブレイクするアーティストも未だにいるしメディアとしての機能としても非常に音楽シーンを健全化する存在ですよ』
『日本の音楽シーンとか見てるとスターになると自分のポジションを守るためにキャリアを形成していくわけですけど、そうじゃなくてやっぱノブレス・オブリージュというか高貴なる者の義務と言うか売れてる人がどれだけシーン全体を、新しくエスニシティとか関係なく新しい才能をフックアップしていくかみたいなね。全てのアーティストの見本と言って良いんじゃなんですかね』
『他にレディガガとかも来日決まってて、フェスだとサマソニにフジロックも来日もあってようやく戻って来たなという感じだし、世界の音楽シーン全体の話をするとこれは映画にも言えるけど中国が大きなマーケットとして成長してきてそれこそロシアとかもそうだし、相対性でグローバルでの日本の地位が減ってる感じがあったんですけど、かつて世界でアメリカに次いでCDを売っていたけど。ここ来て米中の関係やウクライナの問題で世界のブロック経済化が一気に進み日本は西側なので久しぶりに日本が脚光を浴びてる。日本好きのアーティストは多いし。ジャスティンビーバーとかもそうだしカニエウエストはコーチェラドタキャンして日本で遊んでたりとか。円安とかで大変だけどみんな普通に日本好きなんだなと普通の日本人としての嬉しさを感じざる得ないと言うか。
海外アーティストが日本をフューチャーする事が増えてきてそこには誤解もあるけど、あんまり目鯨立てて文化盗用とかカルチャーの冒涜とかの問題もあるけど取りあえずありがたがっても良いんじゃないですかね』
『ないものにされるのが一番嫌なんで』
『先日のコーチェラでもリナサワヤマ、きゃりーぱみゅぱみゅ、88ライジングで宇多田ヒカル。ラテンやK-POPに勢いがあるけど、コーチェラみたいな世界で一番注目が集まる場所でこんな時期だけど日本のカルチャーのプレゼンスは示していたなと思います』

タナソー「ハリースタイルズでウーマン」



タナソー「ハリースタイルズ今年のコーチェラのキングオブキングはこの人だと思う」

タナソー「ハリースタイルズ最高なんですよ。どう聴いてもロックでしょこれ」「世界で一番のベストロックアーティストですよ


『ビリーアイリッシュも含めてそれはもはやバンドではないと言うのもありますよね』
ロックが生き残るのはソロシンガーだと。矢沢永吉的な』
コーチェラで個人的に印象的だったのは2010年代にピークを迎えたEDMアクト。Swedish House Mafiaを筆頭に。なんだかんだフェスの現場では強いんだなと。もちろんそれは日本でも同じなんだろうけど』
『僕はキングオブコーチェラはウィークエンドだって記事を書きましたけど、カニエウエストのドタキャンが発表されてSwedish House Mafia元々は大トリじゃなかったけど、大トリになって、それを全く出る予定じゃなかったウィークエンドが助けると言う形で。ゲストだと思ったらウィークエンドのが曲数が多いめちゃくちゃな物量のライブをやってピンチヒッターとしてのかっこよさはありましたよね。めちゃニコニコヘルシーでやってた』
『過去、最高にヘルシーなウィークエンドだった』

『ラップアーティストはラップフェスが増えてるから無理にコーチェラに出なくても良いのかな?って感じになってる』
『チャートを見ると、まだラップの時代が続いている。春先はリルダークのアルバム、4月末からはプッシャT、フューチャー、ジャックハーロー、ケンドリックラマーの4週連続の大物ラッパーリリース祭りに僕は浮かれてます。』

『フューチャーでウエイトフォーユー』




『いやージャスティンビーバーの時にも名前は出ましたがテムズは引っ張り凧ですね』
『フューチャーのアルバムが出る前にベストラッパーアライブっていうね。雑誌の特集で現在生きている最高のラッパーはフューチャーだって言うね。誰もそれに異論を言ってないと言うね。リルウジバートやジュースワールドとかその当時、世間から批判されていた若手のラッパーと組んで作品を出す。とにかくフットワークの軽さと作品の量と人望。ラップの世界はある時期まで若手が出て来るとベテランが若手を批判して世代間闘争になるけど、その例外としてスヌープドックはいたけど。けど、フューチャーが出てきて以降、顔役というか人望ですよ。そういう老害化しないラッパーというか。我々も老害と言われがちな年齢ですけどフューチャーを見習い常に若い才能を持ち上げていきたいなと思います。人望を集めて良いアーティストを集めて良いアルバムを作る。本当に見習いたいなと思う』
『我々物を書くときにみんなを幸せにする文体みたいな物を持っていたいなと思います』


『コーチェラでラッパーは21サベージとかベイビーキームとか良いライブをしてましたが、わざわざコーチェラに出なくて良いとか、わざわざグラミーに出なくて良いとか独自の文化圏と独自の商業圏。商業圏で言うなら圧倒的にいまだに強いって意味では混ざって楽しい時代から分断ではないけど』
タナソー「グラデーションが出来た」

『今年、ポストマローンの新作が控えててサマーソニック来ますけど元々ポストマローンはクロスオーバーのタイプのミュージシャンだから良いけど、日本だとラップのライブエンターテイメントは大物がいきなり来てクラブでやれみたいな中々成り立たないと言うのは個人的には色々フラストレーションがあったけどアメリカの感じとか見るともうラップフェスをやれば良いんだなと思えてきた。だからフジロックとかサマーソニックの中途半端なスロットに無理やり向こうでは人気のラッパーをねじ込むのって発展的じゃない気がして来た。ラップのファンは日本にもいるわけだから。そこに日本のラッパーも出ても良いし。日本でもラップのフェスもあるし。ラップって独自の文化圏とその世界のリテラシーだったりとかカルチャーとして独自性が強いのでそこは前向きに考えたい。ドレイクとかフューチャーとか来日公演観たいからさあ。僕は絶対来ないと思ったから海外で観てましたけど。日本でもライブネイションとかAEGとか向こうのプロモーターもだいぶ日本に入って来てるんで、そういうのを実現してくれないかな?とお客さん集まりますよ。』
『ぶっちゃけCDが売れてた時代はレコード会社がそのアーティストを日本でも売り出すための協賛金じゃないけど持ち出しで日本に呼んでライブをやってファンをつくって2回目の来日でファンを呼んでリクープするみたいなそう言うスキームがあったけど、今はCD売れてる時代じゃないから最初の段階の0を1にするのが難しくなった。』






『お父さんのウィルスミス大変なことになってしまったけどウィローのラップ良いね』
『これ聴いてて思うのは並行世界で宇多田ヒカルが二十歳くらいの時に海外にこう言う形で出ていればなと思う。ピンクパンサレスと同じくスクリレックスともやってるじゃない。時代がね。今だったからこういう形もありえたのかな?って』

この間のファーストラブやオートマティックがオフィシャル、アンオフィシャルでアジア全域で聴かれていて、夜な夜なアジアのカラオケでどれだけ歌われていたかは知っているので。本当に百万以上レベルでアジアで売れてたんですよね。そう言うのが25年経ってああ言う形でコーチェラで歌われるのは感無量ではあるけど、25年掛かった事を考えると今の時代の早さが羨ましい。』
我々こうやってここで年に2回ラジオで話しているのは大阪で年に2回トークイベントをやっているから。東京ではやらないんですよ。大阪でだけ』
タナソー「大阪を愛していますから」
『そうなんですよ』

『で、話していると止まらなくて4時間半話してしまいました。まだアーカイブで観れますので是非観てみてください。あなたたちラジオではこう言っていたけど本音はこうだったんかい!みたいな事もあるかも知れませんので』
『最後は何聴きますか?』

タナソー「アンバーマークスでワズイット』




『じゃあその曲を聴きながらお別れです。また来週、テレビシリーズや映画の話をしますので』



【総評】

いつものFMラジオモードの余所行きの宇野先生とタナソーでした。個人的に同意したのはタナソーの今の世界でベストロックアーティストはハリースタイルズという所ですね。私もコーチェラで彼のライブを配信で観ましたがこれぞロックスターという佇まい。最高でした。

宇野先生は本も書いているようにたまに宇多田ヒカル愛がにじみ出るときがありますがまさに今回はその日でした。

宇野先生もタナソーも何か言いたげだけどFMラジオなので…感が凄かったですね。








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