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宇野維正先生考察第五十五段 三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast スティーブンスピルバーグ監督回の宇野先生編


今回の宇野先生考察はお馴染みのPOP LIFE THE Podcastからです。今回は巨匠 スティーブンスピルバーグ特集回。ウエストサイドストーリーの公開に合わせてのはずが来年に公開が延期になったのでウエストサイドストーリーではなくスピルバーグの過去の作品についてです。宇野先生がそんなにスピルバーグが好きだったのかと少し意外でした。では宇野先生の発言をピックアップしていきます。






『この間、地下鉄に乗ったら交通広告がウエストサイド一色になっててさ。これは引き上げられなかったんだなと。12月の公開になったままのチラシもまだ並んでるよ。色んな人に迷惑を掛けてる』
『三原さんも参加した文藝から出てるスピルバーグのムック。これだってそれを合わせてみんな一生懸命作ったのにさ』

『みんなの努力を蔑ろにする会社はどこだ?』
タナソー「THE Dですか?」
『そうだね。THE Dだね』 


タナソー「なんで年明けになっちゃったの?」
『知らない。聞いても教えてくれないと思う。でも、呪術廻戦をみんな恐れてるみたいなノリはあるよ』
『某Sの。めんどくさいや。SのSのノーウェイ!な感じの。あっちはヴェノムが送れた玉突きもあるんだけど。とにかく2021年は外国映画大変だったから安全策、安全策を狙ってる』


『これは推測ですけどキングスマンの新作は12月に海外と同時公開される。そこら辺よく分からない。キングスマンはフォックスなんだけど、ディズニー作品を優遇して連れ子のフォックスは冷遇されてる感じ。可哀想に。連れ子でもキングスマンは過保護にされてるけど』
『ウエストサイドストーリーは海外では大絶賛されてるけど興行的には渋い』
『海外でもシリーズ物以外の巨匠ものは海外でもヒットしてない。作り手側のミュージカル熱に客が追いついてない』
『そうだ。自己紹介してないわ。はい、映画音楽ジャーナリストの宇野維正です。僕は1970年生まれなんでETを映画館で観たETリアルタイマーなんですよ。小6の時。ジョーズは日曜ロードショーを正座で観た。ET以降全てのスピルバーグ作品は劇場で観た』
『僕の世代の映画好きはスピルバーグは好きとから嫌いみたいなものではなく血と肉です』
『俺は早熟だったからその感じめっちゃ分かる』
『スピルバーグは映画好きになってから再び出会う感じがある』
『スピルバーグが狙ってアカデミーを撮ったのがシンドラーのリストでこの作品で生涯のパートナーのカミンスキーと組んだ』
『この頃は商業映画の王様で賞を取りたがってる人みたいな感じで、当時僕は20代前半で一端の映画好きだったからアカデミー賞作品とかけっ!みたいな感じはあった。それがプライベートライアン、AI、マイノリティリポート。90年代後半から2000年代前半のターミナル、宇宙戦争、俺キャッチミーイフユーキャンとか大好きなんだけど、あとミュウヘンとかこの5、6年のスピルバーグがエンターテイメントの一番凄い監督からあらゆる意味での巨匠と言うかお墨付きと言うか所謂シネフィル周りでもスピルバーグがより盛んに語られるようになった。映画秘宝的な界隈でも語られるようになりオールマイティ的なカードになったのがこの時代』
『次の作品は半自伝的な映画で、その前はハリウッドの大クラシックのウエストサイドストーリーのリメイク。75歳にしてキャリアのまとめに入ってる感じはある』
『イーストウッドは最近は全部遺作でどんどんゆるくなっている』
『ハイティーンになると映画好きは一度スピルバーグから離れる。俺はもっと凄い映画を知ってるぞ!みたいに』
『映画批評の中での神格化が進むと駄作が駄作認定されなくなる。それはイーストウッドも言えるけど、スピルバーグもみんなBFGとか観なかった事するとか、レディプレイヤー1とかもなんかさあ凄い変な角度で褒めるとかさあ。そういう感じに良くも悪くもなってる感じはあるんだけど木津くん言うようにさあ。近年も凄い作品いっぱい撮ってるもんね』
『太陽の帝国とかフックとかですら再評価をするぐらいのさ。もはや一般層は何を信じたら良いか分からない。イーストウッドは分かりやすいバッククラッシュがあってアンチが出て来たけどスピルバーグにはみんな優しいよね』

木津さんのベスト スピルバーグ映画
激突
リンカーン
未知との遭遇
レイダーズ
シンドラーのリスト

レイダーズはETに変えてもいい


宇野先生のベストスピルバーグ映画
ミュウヘン
未知との遭遇
続 激突
ジョーズ
激突
AI
宇宙戦争
マイノリティレポート
ブリッジオブスパイ
プライベートライアン

『激突、ジョーズ、未知との遭遇はスピルバーグを語るだけじゃなくて映画について語るときに観ておかないといけない3本』

『激突はアメリカでは劇場公開されずにテレビで放送された』
『俺にとってはテレビで最初に観た映画。あれで映画に出会った。映画に出逢わせてくれてありがとうと言う感じ』
ビートルズに出逢えてなくてもスピルバーグにフレッシュな感じで出会えた。70年代に生まれてよかったと思ってる
昔は各テレビ局が自分の会社の映画作ってなかった。今ではどこも作ってるから自分の会社の映画か権利を持ってるジブリとかエヴァとかしかやらない。マトリックスの映画が公開されても前のマトリックスをテレビで放送しないのは自分たちの映画をヒットさせるために敵に塩を送らない為。別に数字が取れないと思ってる訳でも権利の問題でもない。他の洋画が最近、放送されないことも同じ。彼らは放送法に護られてるはずなのに自社の利益の追求のため文化を壊している』
『僕がETを初めて観た小6の時に公開日にテレビでET特集をやっていた。いまから行かないと!ってなる訳。テレビの影響を大きかった。それが使えなくなったのが三原さん達の世代ぐらいから。踊る大捜査線以降だよね。各局が映画は金になるんだって気付いたから自社の映画に力を入れるようになった。あんたら映画を放送する義務があるはずなのに義務を放棄して自分たちの枠で自分たちバラエティに自分たちの映画の役者を出してっていう。あれはね、法律違反です。はっきり言って訴えるべきです』


『今では映画とテレビは対立みたいになってるけど実は蜜月な時代があってその象徴がスピルバーグだと思ってる。子供でもただでテレビで観れたし、テレビで盛り上がったし、正月になると堺正章と井上順はインディージョーンズを隠し芸でやる。毎年、その年の洋画をスパイダースの二人とかとんねるずがパロディでやっていた。それで子供を知っていく。その時に一番ネタにされるのはスピルバーグ。そうやって我々はスピルバーグとかマイケルジャクソンとかを知って育って来た。それはテレビから子供はお金がないから受け取る。今の子供はテレビでずっと鬼滅の刃宣伝見せられてるみたいな。可哀想。あたかも好きなような気持ちになってる』



『俺は子供の頃、映画館のトイレに隠れて他の映画も観ていた。まあ、戦後の闇市みたいな話はやめよう』
『スピルバーグは映画の民主化を果たした』
『スピルバーグが製作で入ったバックトゥザフューチャーとかグーニーズとか監督してない物でもスピルバーグ印で子供が観たいものがどんどんどんどん供給されていくと言う状況は色んなものとの共犯関係にあって、あれを明確に再現してるのが83年から始まるストレンジャーシングスだよね。ストレンジャーシングスの子達はハロウィンになったらゴーストバスターの格好したりとか、スピルバーグじゃないものも入るけど。80年代のエンターテイメント映画って今のマーベルとかDCとかともちょっと違う。今でもハロウィンでイカゲームの格好してるのは新しい時代のスピルバーグがNetflixにあるんだなと言う感じはするけど』
『続 激突、ジョーズ、未知との遭遇の三つは明確にカウンターカルチャーとしての、ハリウッドの新世代としてのニューシネマと完全に連結してるスピルバーグです』
『ハリウッドがずっとやって来たストリーテリングの方法をバッドエンドにすることによって破壊すると言う明確な意思がある』
『サメのあのデザインは画期的だったし、ジョンウィリアムズの音楽も全て合致した感じ。全てがアイコンみたいな』
『未知との遭遇は10代の頃はオールタイムベストだと思ってた作品』
『未だにどこにいくか分からない映画に興奮する。それは未知との遭遇のせい』
『 俺の親父はちょっといかれる人だった。俺も自分の子供にこいつイカれてるなと思われてると思うけど、いかれてて良いんだと思ったのは未知との遭遇の父親役の影響』
『俺の父親は86歳なんだけどめちゃくちゃ映画を観る人。その世代の人たちの特徴かも知れないけどリアリズムを踏み外した時点で興味を失う。激突とかジョーズは一緒にガチ上がりして観てたけど、未知との遭遇から反応が悪くて。うちの親父は未知との遭遇でスピルバーグから離れた。あの瞬間からスピルバーグは親父の物から自分のものになった』
『スピルバーグは自分でほとんど脚本を書いていない。当時の監督でそんな人は珍しい。実はスピルバーグは失読症だったから』
ロンドンでスピルバーグにインタビューしてる。明らかに普通の人じゃなかった。子供みたいだった。佇まいからして特別な人だと思った。こんな人会ったことないよって。恐らくマイケルジャクソンとかプリンスとかに会うとこんな感じなんだろうなと。でも、マイケルジャクソンやプリンスは自己演出してる所もあると思うけどスピルバーグはそれをしてない。本当に子供と話してるみたいに感じた。話してる内容はちゃんとしてるけど。イノセントな感じをこんなに受ける人と話したことない』
僕も人の顔を覚えらない病気。ブラッドピットもそうだけど。みんな多かれ少なかれそういう事はある。』
『俺、ディレクターの金子さんとか街であっても分からないもん。木津くんがギリだよ。失顔症って奴』







『映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』 
『三原さんのペンタゴンペーパーズの原稿良かったですよ』
『メリルストリープに自己投影しててメリル三原ですよ』
三原さん「何もうまいこと言ってないですよ」


『2005年に観たミュウヘンはこの監督の作品を死ぬまで観ていく幸せ感じた。その前のプライベートライアンぐらいから再会をはたしてるんですけ、何千本も映画を観た体で改めてスピルバーグの凄さを再認識すると言うか。あのタイミングでは完全にぶっ飛んだ作品だった』
『シンドラーのリストで言われてるのはテーマがテーマとは言え残酷過ぎるんじゃないかと。人類史的な酷い話を映画が上手すぎるが故にエンターテイメントとして、一番有名なのはガス室のシーンでシャワーでした。みたいな。そこもサスペンスに使うの?みたいな。映画が上手すぎるが故に踏み外してしまうような。けど、そこのスリルなんだよね。プライベートライアンもそうで、戦争映画はプライベートライアン以降で変わったと思っていて、90年代にあそこまで腕吹っ飛ぶんだとか、音も今まではただの効果音で本当の銃の音はこんな音なんだとか。そう言う無邪気がゆえの残酷性もスピルバーグのゾクゾクする所の一つで、それは激突にもジョーズにもあった物なんだけど、ミュウヘンもあれも人殺しを楽しむ映画じゃん。復讐のために。延々、人殺しをしていく映画。なにこれめっちゃ面白い!って思って。密やかなと言うかちょっと後ろめたい面白さを久々に感じてこれをまだあの立場でやるなんて一生ついて行きますと思った。これが俺の好きなスピルバーグはここなのかな?と思った』
『久しぶりに見直したら100点の映画ではなかった思ったけど、当時は痺れたね』
『スピルバーグは良い作品作ってる時は同時に複数の良い映画を撮っている傾向にある』
『映画は過程が全てだと思ってるから最後があれ?と思って評価はあまり落ちない。本音が終わりにあるとは思ってない。ふとしたシーンにスピルバーグのイノセントが故の残酷さを見出すみたいな。本音は真ん中に隠れてるのを感じる。』



『シネフィル界の評価と世の中の評価は基本乖離。カイリーミノーグなんで』


『青山真治とかフックとか褒めてるけど俺は何度観ても面白くないと思う』
『最近の映画がつまらないのはコロナでモブシーンがないから』


『もしかしたらヤヌスカミンスキーが撮影してマイケルカーンが編集してジョンウィリアムズが音楽付ければ俺でも傑作作れるかも知れない』



冗談ですよ。本当に。それぐらい彼らが凄いって』
『カミンスキーもジョンウィリアムズも十八番じゃなくて最近ごとに手法を変えてる』
『このチームは決まった型がある訳じゃなくて作品ごとに変えている。そこが凄い』
『直接会った印象だと彼のエゴのなさがそうさせてると思う』
『ボブディランと違ってスピルバーグは駄作少ないじゃん。』
『BFGは駄作すぎて度肝抜かれたけど』
『添野さんが言ってたけど実はスピルバーグはSFが苦手なんじゃないか?と』
『確かにそうかもね。なんとなくSFの人のイメージはあるけど。完全に受け売りだけどね』
『レディプレイヤー1はスピルバーグでニューオーダー聴きたくないなあって絶対スピルバーグが選曲してないじゃん』
『80年代はやっぱりETなのかな』
『インディージョーンズは今観るとしんどそうだなあと』
『ハリソンフォードは不思議な役者だよね』
『ETは大クラシックだからしょうがないよ』
『ETは未知との遭遇の語り直しでもあるしね』
『あとはカラーパープルで良いんじゃないですか?』
『90年代はシンドラーのリストとプライベートライアンが鉄板すぎませんか?』
『僕は2005年のミュウヘンと宇宙戦争で良いと思うけど、久しぶりにキャッチミーイフユーキャンを観直したら面白かったあ』
『日本はナチスがいかに酷かったかみたいな映画は小さな映画でも入って来やすい。一定の支持層がある』
『ユダヤ系の人が撮ったナチス映画は凄く怨念が乗ってるけどスピルバーグの映画にはその感じが余りないシンドラーのリストにもミュウヘンにも。リベンジ感があまりない』
『モラルで映画を撮ってない。だから観れる』
『メッセージ性とか説教めいた感じを感じない』
『詐欺師を撮ってもこの人は法律とかから離れたたこにいるのが一番軽やかに出ているのがキャッチミーイフユーキャン』
『スピルバーグのアイデンティティはユダヤ人より反権力』
『スピルバーグは道徳はないけど正義はある。それは影響されてる』
『シンドラーのリストで政治化していくかと思ったらしなかったのは流石だと思った』
『プライベートライアンも変な構成の映画だもんね。最初観た時はビックリするよね。普通の戦争映画のクライマックスシーンがいきなり来るんだもん』
ETトラウマあって、駄菓子屋がETのおもちゃを仕入れすぎたみたいで駄菓子屋のおばちゃんにET100匹ぐらい貰ってET数十匹と過ごした日々を思いだすね。あれ以来可愛いと思えなくなった』
『作品としてはウェルメイドの代表みたいな人だけど、撮ってるシーンは変なシーンとかいらないシーンとか結構撮っててそれが面白いんだよね』
『BFGはそれやり過ぎててついていけねえわ!みたいな』
『なんでレディプレイヤー1とか撮ることになったのかね?スピルバーグに俺はガンダムで行くとか撮ってほしくないじゃん』
『良い意味で普通の人ではないからずっと撮ってるかも知れないからね』
『ティモシーシャラメは一度スピルバーグと仕事した方が良いんじゃないかな?俺がティモシーシャラメだったら』
『合いそう二人は』
『俺は全部Blu-ray焼いてます』
『ウエストサイドストーリーが大絶賛のなかアメリカでは半分コケ気味。日本で当たるイメージが湧かない』
花束みたいな恋をしたなんてこの番組でおかげで40億行ったようなもんだからね』
『ウエストサイドストーリー自体が当時として進歩的だった』


【総評】
宇野先生の業界の話は普通にためになります。ハリウッド大作が軒並み延期されてる理由やテレビで洋画が流れなくなった理由はなるほどと言う感じですね。

突然の鬼滅の刃ディスに、当然の乖離ーミノーグと言う親父ギャグに突然の俺のスタッフがスピルバーグのスタッフだったら傑作撮れる発言。流石の宇野先生です。たまに出る宇野先生の謎の犯罪告白も出ました。

宇野先生のスピルバーグに会った話も興味深いですね。
何より宇野先生は実はこんなにスピルバーグが好きだったと言うのも意外な感じでしたね。

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