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宇野維正先生考察第六十七段 FM COCOLO Whole Earth RADIO 「ポップカルチャー2022 ハーフタイム」後編 映画 テレビシリーズ回 出演回の宇野先生編

先週に引き続きFM COCOLO Whole Earth RADIO 「ポップカルチャー2022 ハーフタイム」の後半。映画、テレビシリーズ回の宇野先生の発言をピックアップしていきます。今回もFM出演モードの宇野先生なのでだいぶいつもとは違う宇野先生です。ではピックアップしていきます。





『映画音楽ジャーナリストの宇野維正です。こんにちは。先週に引き続き、我々2人が2022年前半の世界の最新エンターテイメントについて話していきます。2週目の今回は今年前半の映画やテレビシリーズについて話していきます。というか今年、後半もいろんな作品が控えているのでどんな一年になるのか?という話をしていきます。今年は最初はアメリカでは12月公開でしたけど、日本では一月公開のスパイダーマンノーウェイホーム。大ヒット誰もがすると思っていたんですけども、特に海外では誰もの想像を超えての大ヒット。まだコロナの影響が残っていた時期にも関わらず歴代3位のとかの。やっぱりマーベルシネマティックユニバース強いな。これはソニーの配給なんですけど、久々に映画館でしか観れない。何週間経ってもディズニープラスに配信されないと言うのも映画館で内容的にも観ないといけない作品が大ヒットした所から始まった訳ですけども、まあ他の作品と比べての大ヒットし具合がエグくて。公開されたタイミングだとその週末に映画館に行った人の九割以上がスパイダーマンを観てるというめちゃくちゃな事になっていた。日本でも呪術廻戦とか鬼滅の刃とかそういうヒットはありますけど、それでも半分とかは行ってないと思うよ』
『みんなスーパーヒーロー映画しか映画館に行かないと言う大ヒットプラス不穏な始まりだった2022年なんですけど』
『とりあえず最初はスパイダーマンノーウェイホームのエンディングに掛かった観た人なら分かる意味深なデラソウルのマジックナンバーから聴いてください』




はい、ストリーミングにはないデラソウルのマジックナンバー。ラジオならではの選曲でした

『実はオンエアしてるタイミングではですね。公開されてるのはドクターストレンジ マルチオブマッドネスなんですね。我々もまだ観てないですよ』

『監督はサムライミというですね。かつてのスパイダーマンシリーズ3本撮ってた監督がマーベルシネマティックユニバース。しかもディズニーの方で撮るという。なかなかどう出るのか?というね。まあ聴いてる人は観てる人が多いと思うんでね。』
タナソー「我々が何を言っても恥ずかしことになりうるんですけど」
『ははは、そうですね』
『一応言っておくと5月にドクターストレンジの2が公開され、そのあと、ソー ラブアンドサンダー。これはソーの4本目かな?が公開され、そして11月にブラックパンサーの2ですね、ワカンダフォーエバーが公開されて、映画があとドクターストレンジを含めて3本予定されていてテレビシリーズもこれもこのタイミングではシリーズが終わってるムーンナイト。そしてミズマーベル。そして、シーハルクが予定されていて、年末にはガーディンズオブギャラクシーのクリスマススペシャルが予定されていて、我々はマーベルに余暇をどれだけ奪われないといけないんですか?』
タナソー「これは全て捧げよというメッセージですからね。この公開頻度は」
『しかもドクターストレンジはイースターエッグ。作品に隠された卵というか、色んな仕込みがミスリードとかも含めて山のように仕掛けられている訳で世界中のマーベルファンはその考察とかをですね』

『マーベルの安心感はイースターエッグをちゃんと回収してくれると言うかちゃんとさせてくれるのがマーベルの人気と信頼の秘訣で、どのスーパーヒーロー映画もそれをちゃんと着地させてくれるかと言えばそうじゃなくてですね。今年、公開された映画だとモービウス。ソニーズスパイダーマンユニバース。スパイダーマンノーウェイホームは大ヒットしたんですけど、ソニーはあとヴェノムとスパイダーバースというアニメも走られていて、ヴェノムにつづくヴィラン物としてモービウスを公開したんですけど、ノービウスは予告編の段階で本編にないシーンとか公開してるの。コロナで公開が遅れたせいとかもあって、何があったのか分からないんですけど、みんなファンダムが考察をしようとしている時に、そういうスパイダーマンのポスターを壁に貼ってたとかね。それで本編でてねえじゃん!みたいな。ことをちょっとしでかして大バッシング。モービウスは海外でも日本でも興行的に失敗しました。そんな風にいかにマーベルがコントロールしてるか?と言う所でもあるし、その一方でバットマンは我々イベントで大阪来てて、イベントでは本音で話してるんであれですけど、バットマンは大ヒットしてDCはDCでジョーカーもあたり、バットマンもあたり、もうユニバースでは無くなってしまったけど、独自の進化をしてて。バットマンで失敗したら大変なことになるところだったけど大ヒットして良かったですね。それと比べてもマーベルの信頼感とは違いますね』



タナソー「バットマンはオリヴィアロドリーゴ、ハリースタイルズのファンに向けて作っている」


『ここで普通はNirvanaのサムシングインザウェイをかける所かも知れませんが、と言うかあのサントラ。ずっとサムシングインザウェイの旋律をアレンジしてしつこいなーと思いますけど、我々はNirvanaではなく Nirvanaが意味嫌い、蹴落としたあのバンドの曲を聴いてください。ガンズアンドローゼズでスイートチャイルドオーマイン』



なんでこの曲を掛けたと言ういま、アメリカでこの曲が大ヒットしてるんですよ。なんでかと言うとソー ラブアンドサンダーの予告に使われたから。それをきっかけにみんなストリーミングで聴いてる。なんてみんな単純なんだろうと思いますけど、それぐらいカルチャーに対する影響力はマーベルは別格ですね』

僕はバットマンのNirvanaよりもソーのガンズアンドローゼズとか盛り上がるんですよ。一応言っておくとガンズよりNirvanaのが好きですよ。そういう世代だしそういう教育を受けた時世代ですから。でも、別にいまNirvanaでこんな感じで沈鬱にやっても…と。ティーンには刺さるのかも知れないですけど。けど、ガンズを聴いてる方が上がるのは偽らざる本音ですね』

『スーサイドスクワッドは一作目のがヒットしてたけど、ジェームズガン版の2作目のが何十倍も良い。』

『ただ興行的には失敗したけど』
『そんな中でのピースメイカー。プロレスラーのジョンシナです。ワイルドスピードにも出てますが。』
『ピースメイカーは盛り上がってるんじゃないですか?ストリーミングは数字は分からないけど』
『いまはドラマシリーズが面白いやつが多いのでどれだけ話題になってるかは他の作品とも兼ね合いもありますが面白いじゃんピースメイカー』
『あれのオープニングで踊ってる曲だ』

『我々がメタルとプロレスの話をしてるのが我々にとってジャストフィットなのか?って問題はありますけど。』



タナソー「聴いてみましょう。Wig-Wam でDo Ya Wanna Taste It』






これ調べたんですけど2010年の曲なんですね。いかれてますね。2010年にこのプロダクションは』
『良く見つけて来ましたね。ジェームズガンも』
タナソー「一度解散してけど、これで再結成したらしいです」

タナソー「ロックが復活したと思ったらティーンエイジャーがやるパンクロックとハリースタイルズがやる王道ロックと一番なしだと思われていた80年代のバットボーイロックが復権する可能性ありますよ」

『けど、そっかあ。全然ありうる話だなあ』

『さっきガンズをかけたのは僕とタナソーさんが今年前半一番興奮しているWOWOWが放送して、海外だとHBO MAXが配信しているトーキョーバイス。マイケルマンが監督と監修。主演はアンセルエルゴート。第一話でこの作品は90年台後半の東京が舞台なんですけど、赤坂や六本木の外国人ホステスがいるキャバクラでカラオケが歌えるんですけど、そのホステスが歌ってるシーンで延々使われていて、ただのあの時代ですら懐メロで場末の感じで歌ってるのが印象的だったんですけど、そういう文脈もあってさっきは選曲しましたが歌ってるのはレイチェルケラーと言うホステスをやってる女優さんなんですが、トーキョーバイス面白いね』
『日本人だと渡辺謙さん、伊藤英明さん、山下智久さんが出演しているというね。ただ、これだけストリーミングがある中でまさかWOWOWの作品を一番熱く語るとは思わなかった』
『海外ではHBOの作品なんですけどね。』
『これだけプラットホームが乱立し、僕は仕事なんで仕方がないなと思って全部契約してますけど、まず一般の人にとって四つも五つも契約するのはちょっと非現実的だと思うし、何より契約したところで観る時間なんてないじゃないですか。で、本当に仕事とか学校行ってる人にとってピークTV。ここ10年ぐらい続いてるんですけど、コロナのせいで映画の企画がポシャったりするならで配信のプラットホームがどんどん成長していってそこにどんどん企画が集まってるっていうのも受けてると思うんですけど、さっきのマーベルだけでもどれだけ我々の時間を奪われるんだって話ですけど、その外にも山ほど観るべき作品があるというですねところをよく話ますけどタナソーさんともどうした物かと言うね』

『僕は仕事だから観てますよ。おすすめの作品。WOWOWだとトウキョウバイス、スターチャンネルだとスモールアックス。スティーブマックイーンの。Netflixだとベターコールソウル。Apple TVプラスのパチンコ。U-NEXTだとピースメイカー。あと、パラマウントプラスのイエローストーン。これはWOWOWでニ、三年遅れでWOWOWでやってる。結局、そうやって日本にないプラットホームを観るためにはWOWOWとかスターチャンネルが拾ってくれてキリがない。と思ったらこれも大きな話題になってますけど、Netflixの契約者が下降傾向にあるという報道を受けて株が暴落しました。で、Netflixばかりニュースになってますが、音楽だとSpotifyとかこれまで軒並み株が上がってたのが落ちて、一つこんな作品観切れないと言われてる一方でストリーミングサービスバブルの終焉とも言われていて分かんないけどすぐには戻らないだろうと思ってる。流石にすぐには潰れなくても作品数が減って行ったりはすると思う。2022年はちょっと異常な年なのかな?とは思う』
『良く言われてるのは、ディズニープラスが他を削って強くなっていると言われている。ディズニープラスが強いのは事実だけど、かと言って全部が順風満帆なかといえばそうでもなくディズニープラスだけでも観切れないよって普通の生活してる人のリアリティだと思う。我々はこう言う不思議な時代を生きてると思う』

『90分とか二時間で終わる映画の素晴らしさは確実にありますよね。こうやって映画やテレビシリーズの話をすると自然とテレビシリーズに話が流れてしまう傾向にある時代だけど、映画はやっぱり良いよね』

『ちょっと映画の話をしていく中で僕の今年のベストワンはポールトーマスアンダーソンのリコリスピザなんですけどそこで使われていていたドアーズのPeace Frogを聴いてください』




『はい、聴いても貰いましたドアーズのPeace Frog。このポールトーマスアンダーソン。名監督なんですが、その新作で1973年のロサンゼルスのサンフェルナンドバレーを舞台にした作品で、ここは彼が生まれ育った街で。本当にその街だけの話で、彼自身は1970年生まれなんで彼の少しお兄さん、お姉さんの話。ポールトーマスアンダーソン版のアメリカングラフティのような作品。主演はハイムの三女のアラナハイムで男の子がポールトーマスアンダーソンの映画に出てた亡くなってしまったフィリップシーモアホフマンの息子さん』
『ハイムとポールトーマスアンダーソンはMV撮ったり非常に近い。そういうパーソナルな環境で、パーソナルな人間関係で作った映画で今年のアカデミー賞にもいくつかノミネートされてましたけど、そういう凄くパーソナルな作品。やっぱ映画って良いなと思うのはポールトーマスアンダーソンはこれまでスケールが大きな映画が多かったけどこれだけスケールが小さい中で、しかも大事件が起きる訳でもなく、わかりやすく起承転結もなく少年少女たちの日常をスケッチしていくような作品。しかも自伝的な。僕思うんですけどテレビシリーズが充実して来た中でガツんと言うのはテレビシリーズの長い中でやるのがあってる。その一方で映画はスーパーヒーローとそれ以外に作家のパーソナルの作品とかそういう物語で見せると言うよりはエッセイで二時間で気持ち良くなるみたいなそういう作品が良い作品に多くて、映画の役割が再定義されてるんだなと言う気はする。無理に二時間に物語を詰め込むのはどんどん鈍臭くなっていくんだなと言う感じがします』

『テレビシリーズに映画が遅れたと言うよりも映画が何をやるべきか?が明確になって来たような気がして来て。』
『割と残酷に言うとそこを意識して作っているかどうか差がどんどん広がっていると思っている』

『そう言う意味では日本映画大丈夫か?とは色んなところで思ってますけど』
『もう一本、最後にオススメしたのが私は最悪って言うこれはデンマークのヨアキムトリアって言う監督の作品なんですがちょうどリコリスピザと同じ7/1公開の作品で、しかもリコリスピザのポールトーマスアンダーソンが去年観た映画で一番と言ってる作品。30歳前後の女性主人公で彼女の恋愛遍歴をエッセイのように綴っていった作品なんですが、花束みたいな恋をしたみたいなのを思いっきり女性目線にしたと言うとなんて言ったらなんだけど、なんて言ったら良いのかな?デンマークだとアートっぽい映画だと思われるかも知れないけどめちゃくちゃ面白いです。坂元裕二さんの作品を観てるみたいな面白さなんで、7/1は今年の映画のピークだと思ってる。なので最後にこの映画のエンディングでかかるアートガーファンクルのウォーターズオブマーチを聴きながらお別れです。また秋ぐらいにお会いしたりですね。この番組で。二週にわたってお送りしてきました。宇野維正と』
タナソー「田中宗一郎でした」



【総評】

FMモードの宇野先生なのでかなり言葉は抑えてますがそれでも言葉にとげがある言葉が結構ありました。日本映画への警鐘とかバットマンに対する評価とか。

個人的には音楽は好きだけど映画は全く分からない人間なのでHAIMのアラナハイムが主演のリコリスピザは気になりますね。HAIMは好きなバンドなので。ガンズがここに来て流行ってるのは面白い話ですね。80年代の曲なのにYOUTUBEの再生数が13億とかあってやっぱり別格だなと。



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