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宇野維正先生考察第六十段 三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast 2021年映像作品総括回での宇野先生編

今回の宇野維正先生考察はPOP LIFE: The Podcastの映像作品での宇野先生の発言をピックアップしていきます。配信と記事の順番が前後していますがご了承ください。今回は宇野先生がついに映画ジャーナリストであり音楽は本職ではないという以前から唱えていた仮説が宇野先生本人から証明されたました。ではピックアップしていきます。




『これに関しては本職なんで。はい、映画音楽ジャーナリストの宇野維正です。』
タナソー 「じゃあ、何に関しては本職じゃないんですか?」
『音楽』




『だって俺、映画ジャーナリストって肩書きでもの書く事あるけど、音楽ジャーナリストって肩書きで物書くことまずないもん。映画は入れる』
『アイデンティティとして体重はそっちに乗ってる感じ』


タナソー 「じゃあ、映画・音楽ジャーナリストと言う肩書きもおろす日も近いかもしれない?」
『どうだろうね?けど、タナソー さんなんかより全然若い世代のリスナーとシンクロしてるからね。世の中が降ろさせてくれない感じはある』




三原さん「宇野さんの言葉がサンプリングされてるのやばいですね」
『ああー、東京の女の子どうしたラップあったね。jinmenusagiだっけ?良い曲でさあ。本当にちゃんとした曲なんですよ』
タナソー 「なおかつ発言そのものを肯定的に捉えてる」
『Twitterなんてやめろって言ってる曲ですからね。ようやく成仏した感じですよ。ネットミームもね』

タナソー 「これからまだまだ続きますよ。俺がRadioheadのKID Aで助けて助けてって書いたの未だに擦られてるますよ。この間もわざわざ何故書いてた説明するって言う記事までやりましたからね」
『けどそれはさあ、明確にさあ、敵視されてる母体がないじゃん。鹿野さんの高菜と一緒で遊ばれてるだけじゃん。俺の場合は明確にある層から明確にディスられてる訳だからそれは全然違うよね

『三原さんは大ブレイクしないままプチブレイクを毎年更新してるよね。凄いよね』
『2021年、ここで映画の本を出しますと言ったけど出なかったね。準備はしてるんだけどね。今年は本当に映画に揺れ動いた一年でした。』
『自分の中で大イベントは映画のDUNEでした。あれを観るまでは映画が終わるのは早まったと思っていた』
『ああいう形で映画を復興すると言う動きは出てきた』
『ただ映画の状況は引き続き世界的に厳しいままですが、ただああいう形の復興があるんだなと』
『数年前にここでホラーがいま面白いけど、それの次に面白いのは西部劇だって話したけど西部劇の時代来ちゃったね。俺見えてんなっておもった
今年の賞レースが小粒揃いで目玉がないって言われてるけど、お前らとは見てるものが違う。黙ってDUNEに全部あげとけやって感じ
『映画は全然面白いよ。けど、産業としてのヤバさは相変わらずあるけど』
『濱口竜介監督は見つかったなんてレベルじゃないよね。アカデミーの有力候補と言われてる。クリティックが軒並み上位にランクインさせて賞の会員も観るしかなくなってる』
『ドゥニヴィルヌーヴとかクリストファーノーランとか一部の作家以外は劇場公開が小規模で短期間で配信に移行することをそんなに嫌だと思ってない』
『今は何曜日の何時からは必ずテレビで映画とかテレビシリーズを観ないと消化できない時代になった』
『コロナ禍で人集めて映画撮ってるのなんてリドリースコットぐらいだよ』
『オンラインの試写っていつでも観れると思うと観ないのよ。気付くとリンク切れてたり。』
『大作はオンライン試写会がないから試写会に行く。すると、大作ばかり観てる事になってしまう。こうやって人は環境によって観るものをコントロールされていくんだなあと』
『Netflix映画を映画館で観れるのは都市部の一部の人だけ。』
『エミー賞はクイーンズギャンビットとザクラウンがほぼ独占。どちらもNetflix。結論から言うとやっぱりNetflixが強い』
『計画された頃はディズニープラスもなくてNetflixが強かったから当然だよね』
『賞のラインナップ観ても会員が話題作しか観れてないのが分かる。こんな作品があったんだ!みたいな事がない。』
『僕もDUNEを二ヶ月ぐらいは不感症だったもん』
『良く試写会行けて良いなって言われるけど俺はこの試写会行かなければ行きと帰りの時間合わせて配信映画を3本観れるなと思ってしまう。』
『良く分からないヨーロッパ映画の試写会に行くのと天秤に掛けると良く分からないヨーロッパを負けてしまうよね』
『映画は音楽と違って時間を取られるから』
『リミテッドシリーズかつ全エピソード同じ監督の作品が増えてる。それは監督の作品だからね。イカゲームだって1人の監督が全部取っている』
『観なくても良いやって作品がなくなる。見逃すと観なかったと言う事実だけが残る』
俺はイカゲームは全然良い作品だと思ったよ
『俺は観たものを全然ツイートしてない』
『俺の親世代とか観たい映画も観れない環境で可哀想よ』
『 イカゲームはハロウィン終わったら途端にみんな話さなくなった。あそこで消費された。俺はイカゲーム結構評価してるんですけど』
『いまは下手な映画館より家で良いテレビで観た方が全然鮮明に観えたりする』
『世界的にフランチャイズ物しか当たらなくなった。一番の例は最後の決闘裁判。日本で酷かったけど、アメリカでも酷くて。まあディズニープラスで配信されてそこそこ観られてるらしい。けど、リドリースコットはブチギレてる。今の若い客はバカだからみたいな。アメリカの女の子どうした?みたいな事を言ってる』
三原さん「言ってなーい」
『いや本当本当』

タナソー 「日本映画は排斥しよう」
『本当、そう。いや、本当そうじゃない』


『けど、全然違う物が同じ土俵に乗ったの。シンエヴァンなんとかとか、そばかすなんとかとか。ずっとやってちょっとずつ積み重ねる映画と二週間で一日一回上映になって45日後にストリーミングされる物って商品として全然違うんだよね。動員とかで勝負になるわけ無い。あえて洋画って言いますけど洋画メジャーのビジネスモデルは崩壊した。唯一、入れるのは007とかワイルドスピードとか。はっきり言ってシャンチーもエターナルズも全然数字悪いですよ。ディズニープラスのせいだと思うけど、ディズニーはそれで良いんだと思う。だってディズニープラスで観れるんだもん。外国映画で当たったの007とワイルドスピードだけですよ。凄く無いですか?そんなので今まで食べた人が全員食える訳もなくどうするんでしょうね?と言うのは産業として思う』
『全てが変わった日がべらぼうに面白かったのに誰も知らない。これも西部劇だけど。あとテイラーシェルダンのモンタナの目撃者とかも面白かったけど誰も知らない』
『数年前にはこんなことはなかった。映画好きなら観てなくてもあああの作品ねって話が通じたけど、いまはこういう作品が増えた。いよいよ情報と作品量が増えて誰も掴めなくなった』
『本当に機能してるのは一部の映画ジャーナリストや映画ライターのツイートぐらい。後は、王様のブランチのLiLiCoさんの映画紹介。多分あれはやってくれって言われたやつ以外にもLiLiCoさんがやりたいやつのバランスを取ってるはずなんだよ。民放だから全部が全部本音では無いだろうけど魂がないものでは無いだろうし、あと、町山さんとか宇多丸さんとか。町山さんとかもう話題作の解説になっちゃってる。忙しいと。俺もPVで金を稼いでるわけでは無いけど、誰も知らない全てが変わった日について書くならブラックウィドウについて書いちゃうわけよ。だって読まないないなあって思われたく無いからさあ。どちらかしかやれないないならそっちをやるしか無いじゃん』
『なんらかのアウトプットとなんらかのシステム作りはしないと』
『言いにくいけど映画会社によってなんとかにご招待されましたってツイートしてくださいって言われるのよ。ステマだと思われるからって。あんたらかつてステマしたからだろって。なんでそれをライターに負わせるのよ。三原さんがちょっと目を背けちゃったけど。』
本当、そうなの。ステマだと思われるのが嫌だからこの一文を入れてくださいって言われるのよ。だったらツイート自体しませんよって』
『2番館で映画が権利問題で上映できないとか、パンフ問題もあります。全部、同じ会社だな』
『俺もTwitterで参考にしてる人が何人かいるんだけど、この人働いてるのかな?って思うことがある。金曜日に配信が開始されたシリーズ物をその日に12時ぐらいに完走みたいな。どうした?大丈夫か?みたいな。これからはジャンルを切り捨てていく必要がこれからあるのかも知れない。アニメは観ないとか逆にアニメしか観ないとか』
『最近ビックリしたのは取材が出来ますって言われて全部英語でやらないといけないとか。ライターに求められるスキルも変わってきたのかな?と思います』
『僕の問題提起は大作のシリーズものは残りますよ。あと、作家の映画も残る。例えば濱口竜介監督のドライブマイカーとか。それ以外の映画はどうしたら良いか本当に分からない。例えばダークウォーターとスティルウォーター最高だけどみんな全然分からないじゃん』

『公開されて話題になっても公開が終わってしまう。それは本当に問題だと思うよ。こんなに人が入らないと映画公開自体がされなくなってしまう』

『U-NEXTは頑張ってると思うけどサクセッションとかの配信を早めて欲しい』

『往復時間も含めて四時間掛けて映画館に行くより家でストリーミング観てるほうが映画ジャーナリストとしては絶対に有益だからね』

『映画自体はストリーミングで新作を観る事を受け入れさえすれば映画は全然面白いですよ』

『昔の汚い映画館よりは今の配信のが綺麗ではある』

【寸評】

個人的には私が以前唱えた仮説である宇野先生は映画の人説が本人から語られた事がハイライトですね。映画が対する思い入れと音楽に対する思い入れが全然違うように感じていたので。

しかし、世間が音楽ジャーナリストから離脱することを許してくれないという流石の自信家の宇野先生。

そしてこの

「東京の女の子どうした」が恐らく世界で最初にリリックになったOREGA DAREKA。

ついにここまで来た「東京の女の子どうした」

癖になる曲です。







『はい、映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』

『赤ちゃんを産みたいの?みたいな会話を今時大丈夫なの?ってツッコミを入れなきゃいけないなって思う事自体から早く脱却したいよね。しかも、俺がやってるって言うね
『けど、その辺の風景も世界とか映画とかも変わってきた感じはしますけどね』
『インディーワイヤーが世界の批評家187人に2021年のベスト映画のアンケートをしたんだけど。その中に俺は入ってないなあ。』
『そのアンケートの3位はポールトーマスアンダーソンのリコリスピザ、2位は濱口竜介のドライブマイカー、1位はジェンカンピオンのパワーオブドッグ』
『凄いよね。濱口竜介は。フランスとかアメリカとかじゃなくて批評家のメタスコア的にここに来てる』
今年は小粒だって言われてるけどそんな事ないよ。お前らが小粒な作品選んでるだけじゃんって感じだけど
『俺もドライブマイカーより寝ても覚めてものが好き』
『俺はパワーオブドッグのジョニーグリーンのスコアが過剰でさ。最初から不穏じゃん。もうさ、不穏な話なんだろうとは思うんだけど、あれが二時間ずっも不穏なのがトゥーマッチというか劇伴でネタバレしてると言うか。そういう感じはちょっとして。ポールトーマスアンダーソンのゼアウィルビーブラッドっぽいと時代設定もそうだし劇伴がジョニーグリーンウッドだし。テンポ感も含めてそう言う感じだよね。批評家受けはするんだろうけど俺の映画ではないって感じ』
『濱口竜介監督は偶然と想像って短編3本。これは良かったね。濱口竜介ムーブメントはこの作品が後に続くことも含めておっ!って感じだね。トップですよ。黒沢清どころじゃない。是枝さんも飛び越えちゃったね』
『ドライブマイカーは村上春樹が好きすぎて車が好きすぎてちょっと引っかかったってレビューに書いた事ある』
『映画を撮る能力と脚本を書く能力って全然違う能力じゃん。それがどっちも高次元にあるのは優れた作家の条件だしそうじゃないのに脚本書いてる人はそういう映画に比べると色褪せて見える』
『ヨーロッパやアジアのインディーズの作品はストリーミングに来ないから映画会社が観れるようにして欲しいよね」
『世界中でA24イズムが浸透して来た感じはあるよね』
『話が面白い物がテレビシリーズに吸い取られて映画はエンターテイメントとアートが残ってる感じが少しするな』
『デジタルの発達が優れた新人監督が増えた理由でもある』
『日本映画の監督のインタビューシリーズは既に名のある監督じゃなくてなるべく新しい監督、若い監督にしようと思ってる。濱口竜介監督に俺がやれる事は批評以外はないからさあ』
『日本では映画のプロフェッショナルな脚本家という仕事が成り立たなくなってる中で脚本が書けない映画監督が自分で脚本を書いてそもそも脚本で時点でこの作品は…みたいな事が出て来る』
『金が回ってる所に金が集まってるのは映画と音楽は似てる二極化してる』
『メディアと批評の権威が失墜してるのはその通りだと思う』
『俺の2021年のトップ3にインザハイツは入る』
『レオンカラックスのアネットは最初の5分は奇跡の映画だと思ったけど全部観たらそこまでじゃなかった』
『作家の映画とエンターテイメントの二つ中間がねえなって感じ』
『最後の決闘裁判みたいな映画がこれまでだったら賞の対象になってそれなりに当たる作品だった。あれだけスターを揃えてるし、なんだけど、大コケしてるって状況』
『ベンアフレックのマットデイモンがアメリカでは軽いme tooをやられたらした。それの懺悔的な意味も実はあった作品。それにベンアフレックもリドリースコットも喋ると失言も多いのでそういうノイズもあってそういうのを批評家が擁護しなくなった』
『ウエストサイドストーリーの主演の子も問題があった』
『批評家が擁護しなくなったのはしんどい』
『最近は映画の外側の問題が映画を侵食して来てしまっている』
『リドリースコットはリドリースコットなりに女性の立場に立って撮影してるのに誰にも理解されてない』
サクセッションはまあ面白いよ。シーズン2の最終回とかテレビの前で久しぶりにワオ!って声出すよね。』
『あとU-NEXTで観れるメアーオブイーストタウンも面白い。ケイトウィンスレットどう考えてもキャリアハイだよね』
『あと真夜中のミサも良かった。ホラー映画監督のマイクフラナガンが全部監督してる』
『全然どこに行くか分からない映画で最後は感動してしまう。是非観て欲しい』
『木津くんも僕もスターチャンネルのお世話になってるのにその前でタナソーさんがBlu-ray貸してあげるってそりゃねえわって』
『映像って観るのに時間かかるからさあ。ディズニープラスはディズニープラスだけ契約すれば少なくともあなたの余暇だけはカバーするよって気概で作品作ってるし、それはNetflixもしかりだし。だからそれは解決しないよね。ある程度STARみたいにまとまるかもしれないけど、それでも四つ絶対残るでしょ。だから四千円、五千円ぐらいら払わないと。でも、今月一回も観なかったってことがあるから。だから皆出たり入ったりしてるけどその負荷はしんどいよね』
『パラマウントとかピーコックが何かに吸収させる事はあってもNetflix、Amazon、ディズニー、HBOの牙城は崩れないので最低でもその四つは絶対必要だよね』
『Apple TV頑張ってだけどApple TVの番組みんな全然観てないじゃん。ヴェルベットアンダーグラウンドのドキュメンタリーとか全然話題になってないじゃん。みんなApple TVを観る習慣がないからなんだよね』
『ラストナイトインソーホー観て欲しい』
『個人的にはアイデンティティポリティクスの時代が終わることを感じる作品が試写で多かったから2022年はそういう年になっていくと思う』
タナソーさんは音楽は自分が正しいと思い過ぎてる』

【寸評】

宇野先生がジェンダー的なセンシティブな突っ込みを自分がすることへの違和感を実感しているのは興味深い話です。

そして相変わらずの自信家発言。これぞ宇野先生ですね。

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