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宇野維正先生考察第五十六段 FM COCOLO WHOLE EARTH RADIO 2021/12/26 ON AIR 「田中宗一郎 宇野維正が2021年の映画、テレビシリーズを語り倒す、 必聴の1時間」出演回の宇野先生

今回の宇野維正先生考察は先週に続きFM COCOLO WHOLE EARTH RADIOに出演した宇野先生の発言をピックアップしていきます。

今週は映画、テレビシリーズ回です。宇野先生の専門分野ですね。


ではピックアップしていきます。


『はい、映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』
『前回は音楽回だったので、今回は映画、テレビシリーズ回。そうなんですけど、いやー見切れてます?』
『誰もが映画ファン、ドラマファンが向き合ってる問題だと思うんですけど、Netflix、HBO MAXをやってるU-NEXT、Amazon prime、AppleTV+、Disney Plus、screamingでこの辺から毎週ように新作が出てくる。エミー賞はクイーンズギャンビットとザクラウン。あのあたりにノミネートも受賞の重なってて、どちらも良い作品でNetflixの作品ですが、そもそもエミー賞とか選んでる人たちが全て観切れているのかな?と』
『そのくらい観切れないぐらい出てる中で話我々はなにを観て来たのか?と言う事を話すことになるのかな?』

『僕なんかは仕事柄、年末に映画とかテレビシリーズの年間ベストを出したりするので必死になにがあったかな?と思い出しながら書いてますけど、今日はタナソーさん相手に気楽に今年を振り返っていければと思います』
『春にこの番組に出た時は大豆田とわ子の話もしてたけど、日本の物の観つつだからね。それもあるんだよ』
『U-NEXTはHBO MAX作品の日本での配信の遅さはもう少し頑張れと思うけど、過去の名画座的な充実はすごくしててそこは凄いと思う』
『そんな中で世界的にみんなの共通言語になってるのがスーパーヒーロー映画だと思うんですけど、こういう状況だからこそみんなが共有できるものとして大きくなってると言う見方もできると思うけど、この12月に公開されるヴェノムの曲。先週も話に出たリトルシムズの曲を聴いてください。ヴェノムリミックス』




『今回は映画、テレビシリーズ回なのでリトルシムズには語りませんが、ヴェノムが12月に公開されましたが、た だ し アメリカでは10月に公開されていて、それが二か月遅れて、それによって世界中で12月17日に公開されるスパイダーマンが日本では三週間遅れる玉突き事故が起きてしまった。そんな感じで今年のディズニーのマーベル映画、スパイダーマンとかソニーがやっているマーベル映画、そしてDCだと今年はスーサイドスクワット、あとハーレークイーンも今年だ。とか色々ありましたけど、共通言語たる今年のスーパーヒーロー映画を振り返ってみたいと思います』
『僕は今年のスーパーヒーロー映画だとダントツでスーサイドスクワッドが良かった思います。けど、日本だけじゃなくて世界的にも苦戦した。ある種のヴィラン的なヒーローが集まってグレーゾーンで戦うんだけど、スターがいないとか。DCはユニバースが崩壊してて何人かは続投してるけど、それが話も特に繋がってなくて単体の映画として公開されてて、興行的に難しい。その一方でエターナルズは世界的に大ヒット。あれも十人スーパーヒーローがいる集団物。今年は集団物が多かったかも知れない。』
『ディズニープラスでワンダヴィジョン、ファルコン&ウインターソルジャー、ロキ、ホークアイを始めたことによってプラットフォーム自体も広がり、とりあえず手数を増やし、手駒を増やしと言う。一回、エンドゲームで大団円で終わった奴を、パンデミックもプラットフォームにとっては追い風になり、一応の成功を収め、映画館でかかった作品だとブラックウィドウ、シャンチー、エターナルズがありましたけど、当然、エンドゲームとかスパイダーマンファーフロムホームほどの大ヒットにはならなかったけど、一定の、一定と言うには十分過ぎるちゃんと大ヒットをしてると言う地ならしをししちゃんとヒットをしてる。マーベルは盤石な感じはありますよね』
『来年は凄いよ。日本では一月にスパイダーマンが来て、ドクターストレンジも重要な役で出てくるのが予告で出てて、3月にはDCのバットマンがあるしね。A級ヒーローたちがどんどん出てくる』
『最初に言ったようにただでさえコンテンツが溢れかえってるのにマーベルだけを観るのもテレビシリーズで言うと、我々のテレビやスクリーンの前にいる時間の何パーセントをマーベルに持っていかれるのか?と言う。僕ですら10%ぐらい持っていかれてると思う。マーベルしか観ない人は良いけど、逆に言うとディズニーはマーベルだけにさせたいんだよね。これだけ観てれば満足でしょ?と言う。それはちょっと恐ろしい感じはしますけどね。けど観ざる終えない所もあるんですよね。数少ない共通言語ですから』



タナソー「ルカグァダニーノの僕らのままでから一曲聴いてみましょうか。ウイングスでLet em in」




『ルカグァダニーノの僕らのままではそれだけでPodcastの番組を短期間集中でやったりとかしたですね。最高でしたね。』
『僕らのままでを語る時に二つの大きな流れがあってルカグァダニーノって長編を撮ればカンヌやベネチアやなんならアカデミー賞にノミネートされるような久々のイタリアが産んだ大名監督ですよ。それの新作がテレビシリーズだと言うこと。全8エピソード監督しているということ。だから映画監督にとっての新作と言うのが、例えば日本語のWikipediaだとルカグァダニーノの項目にすら入ってない。だからなにも追いついていないんですよ。日本の環境って。いま、3本の指に入る監督が普通にテレビシリーズの監督をしている。かつてだとデビットフィンチャーみたいに一話、二話だけ監督してそれを見本に他の監督が続きを撮るみたいなのが多かったんですけど、例えば今年僕が良かったと思った作品を言うと真夜中のミサ。これはNetflixなんですけど、マイクフラナガンが全話監督してます。あと、メアーオブイーストタウン。これはケイトウィンスレットが主演なんですけど、これもクレイグゾベルって監督が全話撮ってる。その流れが少し前からあって例えば、ビックリトルライフのジャンマルクバレだったり、ある家族の肖像のデレクシアンフランスとか。まあみんな新作が出ればカンヌならコンペティションに無条件で入るような監督の作品が全部テレビシリーズになっていると言う傾向がある。かつてテレビシリーズはストレンジャーシングスとかザクラウンもそうですけど、人気が出ると次のシーズンをやる傾向にあったけどクイーンズギャンビットみたいにワンシーズンで完結するリミテッドシリーズが増えた。その方が契約者が増えるなら。人気シリーズを育てるのではなく優れた監督に好きなようにリミテッドシリーズを撮らせるのがここ最近の傾向。本当に我々はこういう物を観る時は六時間、七時間の映画を観る気持ちで望む。極上の体験なんだけど時間は奪われていく。それの象徴的な作品』
『ルカグァダニーノは溝口健二めちゃくちゃフェイバリットですから』
『完成度の高さをテレビシリーズは求められるけどそこじゃない所を観せてくれた』

タナソー「山田太一の二人の世界の主題歌です。」





『あおい輝彦さんの二人の世界の50年前の曲ですよ』
『毎週のように新作が上がる時代に過去の名作が観れる時代。なんなんだろうね。うれしい悲鳴なのかただの悲鳴なのか。』
『僕も山田太一は大好きなんだけど、僕が生まれた年の作品ですしこの作品は観たことないですね。』

『タナソーさんは呑気で良いよねー。仕事にしてない人は。』
私は最前線で戦ってる映画ジャーナリストでもあるので私のベストはドゥニヴィルヌーヴのDUNE 砂の惑星です。』
『満場一致で大絶賛されてるわけではなく大絶賛してる人と首を傾げてる人がいるような作品なんですが、私は全ベットその作品するぐらい大変感銘を受けました』
『ようは昨年からなにが起きてたかというとディズニープラス、HBO MAX、海外だとピーコックとか色々あるんですけども、ようは新作をストリーミングでリリースと言うね。パンデミックだから仕方がない面もあるんですけど、パンデミックが終わってもこの流れが常態化していくと言う流れがあるんですけど、ストリーミング配信した方が親会社の株が上がる。それだけの理由でなっていたんですが、今年はワイルドスピードもそうだったけど、海外だとブラックウィドウもDUNEも映画館でヒットしたんですね。DUNEはIMAXのシーンが半分近くあると言う作品で家で観てもよく分からない』
『じゃあ、ハンスジーマのサントラから軽く聴いて貰おうかな。Ripples in the Sand』





『ハンスジーマのボーンと言うと重低音とよくわからないあーあーあーと言うチャントですよ』
家のテレビで観てもなんのこっちって感じだと思うと思うんですけど、皆さんもラジオ聴いてもなんのこっちゃとさっきのあおい輝彦に続いて思ってると思いますが、とにかく映画館で観ないと体感しないと伝わらない映像と音響と本当それを目掛けて作った作品でしかもこれ話も終わってませんから。なんなら始まってもいないか。それで二時間四十分ぐらいある。やってくれたなと。けど、映画館で映画観るってこう言うことだよなと。僕もそうだけど世界中の観客に知らしめて、ちゃんと日本以外ではヒットしてめでたく続編が作られるなったと言う晴々しい思いです。これもさっきも名前が出たティモシーシャラメが主演。スター映画でもありつつやりたい放題やった作品なんですが。もともと砂の惑星はデビットリンチが撮って失敗した作品。難しいんですよ。原作がとにかく長いから。それをこういうやり方があったのかと』
『ようやく始まったかと思った所で終わるのにその前の段階で細かい設定とかを省略しまくる。けど映像の力で観せ切ると言うですね。あんまりこんな映画なかったよね』
『引きか寄りばかりの絵』
『これ聴いた人で観逃した人は普通ならソフトや配信でって言いますけど、残念な機会を逃しましたね。映画館で観ないと伝わらない映画ってありますからね。それによって映画館にかかる映画は産業としても続いていく。こういう作品が続くことによって流れを食い止めたんですよ。もちろん配信で観れる映画。Netflixの映画は劇場だと限られた場所で短い期間しかやらない。もちろんそういう作品で素晴らしい作品はたくさんあるんですけども、ただ映画館で観れる時は観た方が良いよって言うのと、パンデミックであやぶられていた映画の未来が少なくとも延命したなと言う。というかこれは無くならないなという。良かった。良かった。本当に仕事なくなちゃうからね。』
『日本も映画産業自体はアニメーションが引っ張ってなんとかこの時期を乗り越えみたいな所はあるんですけど、最初に言ったマーベル作品とかもコンスタントに人を集めるようになってますが、ネームバリューのないシリーズ物でもない映画のヒットのしなさ加減がちょっとやばい感じになってるんで。これはメディアとかが取り上げられる機会がどんどん減っている問題を抱えているんですが、若い世代これ聴いてる人には映画の面白さを体感して貰いたいなと思う。せつなるお願いです。』
『けどそういう形で来年はデカイ作品が続くんで見逃さないように。特にすぐに配信に行ってしまうので映画館で。特に外国映画に関しては』

タナソー「維正さんにはこの作品は映画館で観た方が良いとか、この作品は早めに観た方が良いからとか発信して貰いたいと思います」
『わかりました。頑張ります』


【総評】

宇野先生は完全に先週と違いラジオモードなのでそんなに爆弾落すことになかったですね。

しかし、遠回しながらディズニー及びマーベルの策略を話したしギリギリの範囲で攻めようとしてるのは感じました。

映画が続きそうだから仕事も続きそうだと宇野先生が仰ってましたが、以前、このままだと仕事が無くなるかもしれないと心配していたので安心出来たようで良かったですね。


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