あの輝きを忘れない

2015年8月。カラッと晴れた暑い日の夜、私は満天の夜空を見上げていた。あの輝きは今でも私の目の奥に焼き付いている。

オーストラリアの北西に位置する、小さな島国フィジー。私はそこで、弱冠16歳の時人生初の短期留学を行なっていた。

英語の力を伸ばしたいというほんの軽い気持ちで2週間の旅に出た私だったが、着いて早々日本とは全く異なる言葉・文化に圧倒され、3日後には早くもホームシックになっていた。

そんな中、ホストファミリーが連れて行ってくれた野外フェスティバルの帰り道、途中下車した道から見上げた夜空が今まで見たこともない輝きを放っていて、私は圧倒された。

こんなに綺麗な夜空は見たことがなかった。実際に周りの明かりがなく辺りが晴れ渡っていたこともあると思うが、普段見る夜空とは違い、自分の中のもどかしさ、思っていたよりも厳しい現実と比較してより一層輝いて見えたのではないだろうか。

その瞬間私の心のもやがすっと晴れ、どこにいても、どんなに苦しい状況でも人は夜空を見ることでつながっていられる気がした。次の日から残りの1週間、孤独よりもつながりを意識し、今という状況を全力で楽しめるようになった。

その短期留学以降私は世界中の自然・文化に触れ、今では累計23か国を旅した海外好き人間になっている。

そんな私が少しだけ後悔していることがある。それはフィジーで2週間お世話になったホストファミリーの当時15歳の息子が最後に欲しがった筆箱を譲り渡すことができなかったことだ。今思えば日本ではいくらでも買えるし向こうではえんぴつを買うのも大変だからお世話になった代わりにあげれば良かったのだが、当時の私にとってその筆箱はお気に入りだったのだ。

あの頃から時が経ち、英語力も経験値も上がった。今年は久しぶりにフィジーに行き、大人になった姿をホストファミリーに見せよう、そう思っていた矢先のコロナの流行。

まだ大変な日々は続いているけれど、関西国際空港はまた日本と世界とを繋いでくれる、そう信じ、今は旅行資金を貯めている。

また気軽に海外に行ける時が戻れば、まずホストファミリーに会いに行こう。今も変わらない夜空の輝きへの期待と、筆箱と、たくさんの思い出話を持って。

#私たちは旅をやめられない
#TABIPPOコンテスト
#関空

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?