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なぜ台湾茶の文章を書いているのか?


台湾茶ってなに?中国茶と違うの?
台湾茶の愛好家は「台湾茶と中国茶は違う」と言い張るでしょうし中国茶の愛好家からすると「中国茶の一ジャンルじゃないの?」といわれます。現地の情報、資料でも、あるときは中国茶の一部、またある時は台湾独自の茶文化とどっちつかずの蝙蝠のような存在で語られていると感じてしまいます。
私は「台湾茶は中国茶と違う」という立場に立ちたいと考えています。そうしないと「中国由来の品種と手法を使用していれば中国茶」となってしまい、日本茶を含めた世界中のほとんどの茶は中国茶になってしまいそうだからです。また「〇〇茶」のカテゴリーを考えるときにどう定義するのか考えないと、ベトナム茶は「ベトナムで作っているからベトナム茶」なのか「台湾の品種と製法を使用して台湾人が製茶しているんだから台湾茶の海外生産版」なのかも明確になってきません。ですので何をもって台湾茶が台湾茶であって中国茶でないのかをはっきりしておきたいとかんがえます。もちろん私の考え方なので反論のある人はいるとおもいます
何が違うか? 別の国で生産されている
簡単な話です、中国と違う国で作っているから中国茶ではないという考え方で、その国の名を冠して「台湾茶」だという考え方です(中国は台湾を中国の一部と考えていますが、私は独自の文化と国家運営をしている地域なので別の国とここでは書きました)
何が違うか? 原産国以外の国の文化・技術の影響を受けてる
紅茶もそうですが、輸出作物として生産されたときに宗主国や輸出先の国の嗜好に合わせて製造工程や育成工程に変化が起こったものです、台湾でいうと日本の統治下に大きく茶産業の方向転換がされました、現地の老茶農はいまだに日本語が話せる世代が日本の伝習所で教わった技術と精神のもと、台湾茶を作っています。
何が違うか? 自国の喫茶文化として根付いている
単純に輸出商品としてでなく、自国の喫茶文化に根付き独自に発展していること。紅茶にしろ台湾茶にしろ独自の喫茶文化が形成され、その国の飲料として原産国の茶と一線を画して生活に溶け込んでいます
何が違うか? その国の商品として流通している
輸出したときにその国の商品として販売される、要は国際市場でその国の商品と言って認知されている点です、台湾茶でいうと原産国の中国で「台式烏龍茶」というコピー商品を作り、輸出しているぐらいです。
以上の点から、私は台湾茶は中国茶の一部ではなく独立したカテゴリーの「台湾茶」であると考えています。望ましいのは、学術的に整理されてることで、例えば、中国の影響を強く受ける小葉種を使用した「東洋茶」と南洋の大葉種を使用した「南洋茶」ぐらいに大きく分けて、その中の中国茶、台湾茶、ベトナム茶、日本茶という風に分けてくれるとすっきりするのかな?と個人的には考えています。


複雑怪奇な台湾茶
そもそもの話をします。お茶は嗜好品で、どう飲んでもいいですし、どう評価してもいいです。人によって評価が違って当たり前です。台湾のお茶についても当然そうなのです。ところが、台湾茶の特徴の非常に小ロットであるということと半発酵茶の特徴の製品の出来、不出来の振れ幅が大きく劣化やおかつ劣化しやすいことが悪い方向に働いています。
台湾茶はダージリンの紅茶や、珈琲のように国際的なマーケットがありそこでオークションされ等級化されるものと違い、どこか一か所で価格が決まるものではありません。また、ワインのように厳格な産地履歴証明もなく、中国大陸のお茶のように規格化されることもありません。台湾のお茶というのは半発酵茶の入門としては安価で明快な部分もある反面、奥に行くと底なしに細分化され「良いお茶」と「悪いお茶」の入り混じるカオスの様相を呈しています。また、ある人にとって「良いお茶」であっても大多数の人から見ると「悪いお茶」という見方になってしまうこともあります。私のような人間にとってはそれがまた面白いのですが、台湾茶に興味を持ってくれる人にとっては相当苦痛で「複雑怪奇な世界」なこともあるだろうなと思っています。


このような台湾茶の世界をさらに分かりにくくする厄介な存在
ひとつはもともとの輸出茶で財を成した老舗茶荘とその業界団体です。彼らの考え方は安定した商品を輸出することですので、このシングルオリジンが乱立するような現在の状況を当然面白く思っていません。このような団体が主催するセミナーに行くと「台湾のお茶は清茶・高山茶・焙煎茶・紅茶・東方美人茶の5種類がありそれの違いが分かれば十分です」と言われます品種も産地も彼らにとっては自分たちの商品を細分化され売りにくくされる邪魔な情報で、消費者に知恵をつけてしまう「禁断のリンゴ」だからです。
もう一つは茶業改良場です、彼らは政府の機関で、当然こうなるべきという政策に従わせるべく行動します、このため意図的に情報を歪曲しプロパガンダを行うことがあります。一つ例をお話しします。屏東港口茶は現在も一貫して「蒔茶」で繁殖する実生のお茶です。ところが2000年ごろまで改良場は金萱への改植が進んで蒔茶よりもそちらにシフトしていると宣伝していました。その情報と日本で金萱で作った屏東港口茶と言って出されたお茶がひどくおいしかったため、2005年に現地に行ってみました。夜行バスを乗り継いでそのあとレンタルバイクで満州郷の産地に入って金萱など一本も生えていないことに愕然として農家の家で聞いてみたところ「昔改良場の人がやってきてこれに植え替えたほうがいいといって強引に金萱を植えていったが2年くらいで全部潮風で枯れてしまってないよ、ここは昔からの蒔茶しかない」と言われ愕然としました。彼らは自分たちが金萱への改植を推進している中で失敗した事例を隠したかったのだ…もう公的機関の言うこともあてにできないと私は考えました(現在の改良場は当時よりは比較的情報を正確に公開するようになってはいるということは名誉のために一応申し上げておきます)。
もう一つは、日本の販売店です。いくら詳しく現地の情報や産地の概況を書いているお店でも、その目的はどうしても自分の商品を売らんがための情報になります。それはわかるのです。ですが、全く根拠のない情報で顧客を操作するのは論外だと思うのです、彼らが名人、茶師と呼んでいる人を調べていくと「棺桶屋の社長」だったり「性犯罪者」だったり「政府から土地の不正使用で召喚状が出ているお尋ね者」だったりしたことが本当にあります。また、自分の商品を正当化するために他の店の商品を否定したりしあって私たち愛好家を混乱させます。
現地の老舗茶荘、改良場、日本の茶荘が自分の利権やプロパガンダのために情報を流している台湾茶の世界を見るにつけ、「実際に現場に行き、情報をあつめ、事実を知っている素人が最強なんじゃないか?」と私は思うようになり、どんどん現地の奥深い場所に入っていくようになりました。今となってはお茶を丸めるQ茶工から茶摘みの手配師から大会社の社長までそれぞれの人からいろいろな意見を聞くことができるようになりました。


複雑怪奇な迷路で迷っている人たち
私のLab.(研究会)に来る人の中にもこういう人がいるので他にもこういう人は他にも多いのではないかと思います
なんでもお金でしか測れない人=とにかくお茶を飲むと「このお茶はいくらのお茶ですか?」と聞いてくる人がいます、価値=価格なのでしょうが、産地をめぐっているときの価格なんてあてになりません。
自分の経験則から離れられない人=「私が飲んでいる〇〇茶荘のお茶と違う」どう違うかは言えずにただ「違う」としか言えない人。
スペックマニアの人=このお茶の標高は何mですか?茶園の向きは?肥料は何を使っていますか?と矢継ぎ早に質問してメモしているけれども「標高が高いと何がいいの?」と聞いても「???」な人
狂信者=「パッケージに「福寿山」と書いてあるからこれは福寿山なんです」「私の信頼する〇〇さんがそう言って売っているから間違いない(え?産地の生産者の言ってることと違うんですけど…)」
感覚的過ぎて共感できる内容で話せない人=「このお茶はピキーンって感じでこっちはバビューンです(断言)」ほかの人がくみ取れればいいのですが、そうでないときは不幸です。
誤解しないでほしいのですが、興味を持って聞きたかったり話したかったりするのは悪いことではないのです。一番悪いのは「沈黙してわかったようにふるまってしまうこと」ですね。あとは聞く内容が的確になったり、基礎情報がわかる資料があればいいのではないかと考えています。


だからみんなが楽しく台湾茶を飲めるように
みんなが理解できて、そのお茶を表現できて、自由に良さを交流するためには、評価の物差しや共通に話せる土台が必要だと私は考えました。そこで自分の経験をもとにと台湾の専門書を精査してまとめ加筆修正し、自分の意見も加え一つの本にしようと考えたのです。

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