平成元年、平成11年、平成21年のわたしへ

【平成元年のわたしへ】
2歳半のわたしへ。平成おめでとう。意味がわからないかもしれないし、キミに話しかけたところで物心はついていないので、まあ適当に聞いてくださいね。とは言えキミはわたしなので、平成元年にいるキミに何を語ろうにも、正直言うとデータがないんだな。物心がついていないので。うーん。あ、写真を撮るとき、できれば少し変顔を控えてもらえると、のちに見返したときに家族に笑われないで済みます。よろしく。おねえちゃんと仲良くね。既にだいぶ恩恵は受けているとは思うけど、姉妹仲が良いことは今後の人生の救いになりますから。今は何も考えず、楽しく過ごしてください。あ、数年後に入る幼稚園はとても楽しい2年間になりますよ。そうそう、幼稚園の七夕の短冊に、みんなが「しょうらいけーきやさんになれますように」などと可愛いことを書いているのに、キミは「くまさんになりたい」と書きます。なれません。もう一度言います、なれません。考え直すように。

【平成11年のわたしへ】
12歳のわたしへ。いじめられ続けた小学生時代はどうでしたか。まあどうでしたもこうしたもないか。持ち前の明るさ、みたいなキャラが裏目に出て、誰に助けを求めても笑って流されて気づいてもらえなかったね。彼らと同じ中学校に上がるのがイヤで始めた受験勉強、どうやら実になったようで何よりです。あれだけ勉強させておいて1校しか受験させないなんて親もどうかしてるけど、自宅学習だけでよく受かりました。おめでとう。社会科を教えてくれたおねえちゃんに今一度しっかり御礼を言いなさい、年号を覚えなさすぎて迷惑かけまくったんだから。で、そこからイマイチな中高生活が始まりますが、おそらく地元の中学に進むよりはよっぽどマシです。ほんの数人ですが、次の時代にも残る友人も何人かできます。そういう人たちを大切に扱ってください。大切に思うことと、大切に扱うことは、実はまったく違います。思うのは、こちら、つまりはキミの勝手なので、それをちゃんと表してください。"今"のキミから見た、大きな反省点なので。あとは色々頑張れ。

【平成21年のわたしへ】
22歳のわたしへ。そろそろ手首の傷は薄くなってきましたか。まだかな。そろそろ絶望し続けるのにも疲れてきているんじゃないですか。色々あったねえ。ほんとうに、抱きしめて一緒に泣いてあげたいけれど、それができないので、これを書いています。キミの迷走は、そこからしばらく続きます。そして、文章が書けなくなります。なぜかというと、キミの"動力"が、そこで途切れるからです。キミはもう今みたいな文章は書けません。良くも悪くも、です。"今"は、それをエモいと呼ぶみたいですが、キミはそこから降ります。なぜなのか、先取りして教えてあげましょう。とりあえず、キミは今気になっている人がいるね。そう、このゴールデンウィークにデートをする予定をとりつけた、その彼。その彼と、キミは結婚します。だいぶ先の話ですが、結婚して、子どもが生まれます。おめでとう。で、ここからが問題なんですけど、そこまでしても、今キミが抱えている、絶望はなくなりません。孤独も消えません。残念だけど、"今"のところ、そうみたいです。でも朗報があります。慣れます。絶望に、孤独に、慣れます。長く続くと、人は慣れるので。慣れると、それが言葉に繋がらなくなります。鈍る。"今"読んでも、今のキミの文章はなかなかだなと思います、色眼鏡かもしれないけどね。でも、書けなくなります。だとしても、がっかりしないで欲しい。キミは慣れたことで、生きることを諦めなくなります。今、死にたいよねー。わかるわかる。でも、気づくんだよ。あれ、これ終わんないんじゃないの?ってなる。だから、生きようね。おねえちゃんもずっとキミを気にかけてくれているよ。人数は全然少ないけど、たすけてくれた友人たちが残ってくれているよ。デート、明後日だっけ?その相手が信じられないほどポジティブで、キミはカーテンを締め切ったその暗い部屋から引き摺り出されて、その彼が夫になって、彼とのあいだにマジでスーパー可愛い娘が生まれます。絶望や孤独がなくならなくても、キミは光を手に入れるよ。だからもう泣かないで。自分にできることが何かわからなくなっても、何かできる、やろうと思えるのは、キミがそこで踏ん張ったからだよ。ありがとね。だから、いろんなものを失って、いろんなことと闘って、苦しいのはわかるけど、どうにかしてここまでおいで。今の文章は書けなくなっても、また違う文章が書けるよ。いつか何か、身になると良いね。進化していこうな。新しい時代を、生きようね。

さよなら、平成のわたし。

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