おばさんだけど

当方40代女性だが、昔より痴漢に遭うことが増えた。20代より魅力的なわけはないと思うので、やっぱりそういう人が増えたんじゃないだろうか。しかも最近は“触らない痴漢”というのが可視化されてくるようになった。物理的に接触しなくても、距離感がおかしいからすぐにわかる。以下は数日前の実体験です。

先日、とある市民ホールでのイベントに参加した。有料だけど、ワンコインなので割と敷居は低いタイプのものだ。前半に映画の上映があり、後半では壇上に上がることもあるので私は先輩とホールの一番後ろの4人がけの席に座った。
通路側には50〜60代とおぼしき女の人が着席していたので、前を失礼して一つ空けて、先輩を奥に4人がけに3人で座っていた。すると、イベント開始直後に男の人、こちらも50〜60代が女性の前を通って、私の隣に座ってきた。

その時は、え、こんな狭いとこに座る?と不思議に思ったけども、もしかしたら通路側の女性の連れかな?とすぐに打ち消した。それに、周りの通路側はどこも人が座っていたからだ。(※一人横切ればもっとゆっくり座れる席はたくさんあった)
けれどこの男性と一つ隣の女性に面識がある様子もなく、イベントはそのまま前半の映画の紹介兼講演になった。

この男性は、講演を聞いて笑っていた。講演者の方は快活な話しぶりだったにしても、映画自体は広島で被爆して東京の高校に通っていた少年のために同級生や高校生たちが作った記録映画についてのものだったので、可笑しくなる箇所なんて一つもなかった。ここで違和感がさらに大きくなった。

やがて……、男性は私の左側にある肘掛に腕を置いた。それは次第にゆっくりとずれて、私の左の二の腕に当たるようになってきた。どうする。いろんな考えが頭の中を巡った。SNSでも、女性の隣に座るだけ、いわゆる「トナラー」の何が悪いのかみたいなことで炎上があったばかりだ。この程度で騒いで逆上されるとみんなに迷惑がかかるのではないか。被害妄想と思われるかもしれないので、声を出したりはできなかった。最終的に極力関わらない方がいいと判断した私は、突然席を立つのも先輩に申し訳ないと思い、スマホを見るふりをしながらイベントの資料で顔を隠して体を右の方に避けていった。

すると、間もなく男性は立ち上がり、ホールから出て行った。映画もまだ始まる前だったのに……。有料のイベントで、まだプロローグの段階なのにホールを出るのはやはり不自然に思った。私の対応が関係してるのかな、と思いながらもどこか安堵していた。ホールは実は上映中も思ったより暗くはならなかったけれど、もしあのままでもっと暗くなっていたら?映画が始まっても、私があの時顔を隠して体を引かなかったら、何があったかはわからないままだ。でも結果的に自衛にはなった。そもそも、何かあってからでは自衛は意味をなさないのだから。映画館ならなおさら本当に気をつけた方がいいんだなぁ、と痛感した。

さて、この「自衛」はやり過ぎだったのだろうか。男性は私の対応が不快だからイベントを中座したのだろうか。すべては私の勘違い、気のせいだっただろうか。けれど心情的には、マナーは悪いかもしれないが、空席に荷物を置いておけば良かったとすら思った。
あまり普段隙のある服装や生活はしていないつもりだったけど、今後はもっとおばさん力をつけて対峙しなければいけないのかと気が重くなっている。

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