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Joe Gunkel

【はじめに】
 今回は、阪神の新外国人 ジョー・ガンケル投手(28)について、投球スタイル・特徴・注目ポイントなどをお話しします。

 何故いきなりこんなマイナーな選手に?!(←超失礼)って思われる方もいるかもしれません。一応、理由はあります。昨今はデータをはじめとした情報がありふれ、情報の手に入れ方さえ理解してしまえば、ある程度の情報は各々で仕入れられる時代になっています。

 しかし、それはメジャーリーガーに限定した話で、マイナーリーガーについてはまだまだ情報が乏しいのが現状です。特に、球種や球速といった情報はデータサイトからは手に入れることができません。
 そんなことで、ガンケル投手のような情報の少ない選手は、皆さんに需要あるのかなと思った次第です。     
 
 それではスタート!


【投球スタイル・特徴】
 巨人・戸郷型のアーム式で技巧派のサイドスローワー。沈み込むシンカー系のファストボール(平均142.3km/h)と、縦割れのスライダー(平均125.0km/h)、カット系のスライダー(平均133.9km/h)が武器。稀にチェンジアップも織り混ぜますが、軸となる三球種と比べるとクオリティは落ちます。
 キャリアはスターターとしての実戦経験が豊富ですが、持ち球のレパートリー的にはリリーフ適性もあるように感じます。

 最も優れているツールが"制球力"で、マイナー(3A)通算での四死球率は1.19 (9イニング投げて四死球を1つ出すくらい)と、全く四球を出しません。この"ストライクをとる力"は、近年の助っ人外国人でいえば、西武のザック・ニール(1.21)や、STLのマイルズ・マイコラス(2.01)を上回るため、その力を量り知ることができるのではないでしょうか。

 球種の中で特徴的なのはスライダーで、縦割れの大きなものと、もう少し高速で小さなカット系を使い分けています。シンカーの使い方も、対右打者には外角ボール球からストライクゾーンに入れたり(バックドア)、対左打者には内角ボール球からストライクゾーンに入れる(フロントドア)などの技術も有しています。状態の良い時は、このシンカーと2種のスライダーの出し入れが冴えます。

 これらを武器にゾーンをアグレッシブに攻め、打たせてとる投球を持ち味としています。


※2019年3Aでの投球映像

https://twitter.com/cpmmaff/status/1206412476918550529?s=21


【成績】
 技巧派のシンカーボーラーから奪三振能力が低いように感じますが、3A通算で奪三振率(K/9)は6.24(9イニング投げて三振を6個奪うくらい)と、それなりの水準にはあります。
西武・ニール:5.29
STL・マイコラス:6.83

 GB/FB(グラウンドボール/フライボール)は1.00台強のため、技巧派ではあるものの特別ゴロピッチャーというわけではありません。

 肝心の防御率に関しては、3A(打高リーグのPCL)において2年連続で3点台は中々優秀です。特に2019年の3A(PCL)は、ボールの変更により、投手にとっては地獄のような打高環境に変わり果てました。

 具体的には、2018→2019年でリーグ全体で以下のような変化がありました。
・防御率:4.60→5.48(↑0.88)
・被弾率(HR/9):0.97→1.53(↑0.56)
・WHIP:1.43→1.52(↑0.09)
・与四球率(BB/9):3.46→3.90(↑0.44)

 この超打高化を考慮し成績を簡易補正すると、ガンケルの2019年成績は、従来のボールであれば以下の通りとなります。PCLでこの数字は立派ではないでしょうか。

 19試合(先発15)
2.92ERA 0.57HR/9 1.12WHIP 1.10BB/9

 また、表には掲載していませんが、打高本拠地の多いAwayでの方が成績が良い点もプラス材料と言えそうです。

※参考記事:3Aの超打高化について
https://note.com/cpmmaf/n/n0c61129bc3fc

 

 次に、スリークォーターからサイド気味に腕が出る、リリースポイントが低めの投手で心配な点が、対左打者に対し劣勢になりやすい点です。左右別の成績を見てみましょう。

 キャリアでは対左打者を苦手としていませんでしたが、2019年は被弾が多い傾向がありました。しかし、被打率そのものに変化はなく奪三振率も高いため、これは3Aの超打高化による影響が大きかったものと推察できます。左打者を極端に苦手としている傾向は見られませんでした。
 一方で対右打者については、ここ2年間は成績が飛躍的に向上しており、打たせてとる安定感のある投球が光っています。

 最後に、走者別の成績も確認しましたが、特段大きな違いは見られませんでした。状況に関係なく、のらりくらりと自分の投球を遂行するようです。


【まとめ】

・技巧派のシンカーボーラー。変化の大きい縦割れのスライダーと、もう少し高速で小さなカット系を使い分ける。チェンジアップは、軸となる三球種と比べるとクオリティダウン。

・ここ2年間の3A(PCL)での成績はとても優秀。

・ストライクをとる能力はピカイチ。3A通算の与四球率は、西武ニールやSTLマイコラスを上回る。ストライク先行の投球で打たせてとる投球が持ち味。

・かといって奪三振力が低いわけでもなく、奪三振率はニール以上マイコラス未満程度を記録。

・ニールでいうチェンジアップ、マイコラスでいうドロップカーブのように、緩急をつける球種がないため、レパートリーに不安あり。(スライダーで緩急をつけている)

・対左打者を苦手としそうなタイプだが、数字上は極端に苦手としている傾向は見られない。奪三振は対右打者よりも多く奪える。

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