見出し画像

Christian Villanueva

0.はじめに
四年連続V逸となっている巨人。
打線の得点力不足を解消し、三連覇の王者カープから覇権を奪回するべく、大物の助っ人外国人を獲得しました。
クリスチャン•ビヤヌエバ(27)。
18年MLBで20HR放った若き右のスラッガーです。
今季の巨人の外国人打者は、クラッチヒッターのケーシー•マギー(36)、17年35HRでHRキングのアレックス•ゲレーロ(32)の編成でした。しかし、ゲレーロが十分に力を発揮することができず、マギーは好不調の波はあったものの一年を通じて巨人打線を牽引しましたが、二年契約のゲレーロは残留、マギーは若返りを図るため解雇となりました。
.285 21HR 84RBI OPS.803
マギーがマークした今季成績のハードルは決して低くありません。
そこで今回は、この新助っ人ビヤヌエバがマギーの代替として十分な活躍が期待できるのか、徹底解剖していきます。

1.stats
基本的なstatsを確認していきます。
12年トッププロスペクト100でベスト100位に選出された強打のビヤヌエバは、その才能を15年から発揮しました。
15年AAA(PCL)では、18HRを放ち、長打力の片鱗を見せ、16年は右脚腓骨の骨折により全休したものの、17年に復帰。PCLで15年を上回る.296 20HR OPS.897という好成績をマークします。AAAでは三振が多くはなく、タイプ的には近年のオリックスが好むタイプのstatsを弾いています。
その後は9月に昇格しチャンスを掴むと、32打席で.344 4HRと活躍。強烈なインパケトを残しシーズンを終えることができました。
その活躍の甲斐もあり、18年はスプリングトレーニングで4HRを放つとMLBに定着。4月はナショナルリーグの月間最優秀新人選手に選ばれるなど大活躍をし、最終的には.236 20HR 46RBI OPS.749という成績でシーズンを終えています。

2.左右別成績
ビヤヌエバは18年MLBで20HRを放つ活躍を見せましたが、対右投手の課題は既に色々な媒体を通じて指摘をされているところです。
18年MLBでは、対左が.336 OPS1.118と大当たりだった一方で、対右は.189 OPS.574と不発中の不発。プラトーン要員のような成績でした。
その傾向をAAA時代から遡ると、元々対右投手には率が残らない選手であったことが分かります。15年にAAAで開花し始めた年でも、対右は.246 12HR OPS.719としょっぱいものが残っています。
しかし、朗報なのは17年の数字です。.304 18HR OPS.926と素晴らしい成績を残しており、はじめて右投手にアジャストできました。そして、キャリア全体で見ても、14→15→17年で年々その対応力を上げていることも分かります。
・AAA級の対右投手の課題は年々クリアし、直近の17年で素晴らしい数字を残したこと
・ AAA級の対右投手の三振率は元々高くなく、20%弱程度で推移していたこと
・MLBでもデビューイヤーの17年と比較すれば、三振率が36.8→25.1%と良化していること

この3点を考慮すると、ビヤヌエバの対応力の高さが垣間見え、選手としての伸び代に期待が持てそうな点については、非常に明るい材料と言えそうです。

3.球種別成績
AAA級の数字かわかったところで、17-18年のMLBでの数字を左右別・球種別で確認していきましょう。
また、この記事を読んでいただいている方は、18年のビヤヌエバが、4月に大活躍だったものの、後半戦に失速したことをもうご存知の方が多いと思います。(以下の表を参照)

それを踏まえ、18年に関しては、
・絶好調の3-4月
・大不振の5月〜7月
・滑り込みで状態を上げてきた8月
と、時期を三段階に分けて変化を丁寧に見ていきたいと思います。

3-1.対右投手
まずは対右投手から見ていきます。

特徴:「2シームには対応できる一方で、その他の速球系(4シームやカッター)に弱く、全変化球に対して脆さがある」

説明:スライダーへの対応の悪さが取り沙汰されるビヤヌエバですが、実は綺麗な4シームに弱いのも大きなネックです。アベレージは17年のデビューイヤーは.286と高かったものの長打は0。また18年は、絶好調の3-4月は.177と低打率な一方、長打はまずまず出ていましたが、その後は長打も減っていきました。またキャリアを通じて空振り率が高く、振り遅れている傾向も確認できます。
2シームについては、キャリアを通じてハイアベレージをマークしているものの、4シームとは異なり長打は生まれていません。
ブレーキングボール(スライダーやカーブ)にはやはり弱く、特に絶不調だった5-7月では全く結果が出ていませんでした。
またサンプル数は少ないものの、オフスピードボールの結果も良くはなく、総合的に見てもMLB級の右投手相手には、まだまだ実力不足なことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

3-2.対左投手
次に対左投手です。

特徴:「速球系に滅法強く、オフスピードボールにも強い一方で、ブレーキングボールには難がある」

説明:対右投手では、2シームを除き速球系にも苦しんでいましたが、対左投手では4シームとカッターも含めて速球系には全般強い傾向が出ています。アベレージのみならず長打も発揮しており、脅威となる得る数字が並んでいます。
またチェンジアップにも高い数字が残っており、甘い球に関しては長打を食らうリスクが高いと言えそうです。
一方で、対右投手同様にブレーキングボールには弱く、スライダー・カーブの両球種ともに打率.150以下と苦しい数字が残っています。また空振り率も高いため、切れ込んでくる横変化の変化球には難がありそうです。

4.球種別のアプローチ
Plate Disciplineを左右別で、さらに球種別を加えた詳細なPlate Disciplineを検証していきます。
O-Swing%:ボール球スイング率
Z-Swing%:ストライクゾーンスイング率
O-Contact%:ボール球コンタクト率
Z-Contact%:ストライクゾーンコンタクト率

4-1.対右投手 
3章において、対右投手のビヤヌエバは、4シームに弱い傾向があることを確認しました。
その傾向は本章でも出ており、特にストライクゾーン内のコンタクト率(70.4/77.5)に低い数字が出ています。
またブレーキングボールのボール球のコンタクト率にも低い数字が出ています。

対右投手のPlate Disciplineについて、球種別に近年の右の外国人強打者(ロサリオ、ゴームズ、ゲレーロ、マギー、ドミンゲス)との比較をグラフに纏めました。
※打席数が少なく極端な数字(ex.14年ゲレーロ)が出ているものを含みます。こういった極値は排除して閲覧ください。

❶ファストボール
ここまで継続してお話ししている4シームへの対応。そのゾーン内コンタクト率の低さは、過去の助っ人外国人と比較しても一回り低い数字が出ています。ボール球コンタクト率においても低めの数字が出ており、綺麗な4シームへの対応には難があることが明らかです。

❷ブレーキングボール
右投手のブレーキングボールについて、ゾーン内コンタクト率は、 NPBで同球種に大きく苦しんだロサリオやゴームズよりは良い数字が残っており、マギーとおおよそ同等程度の傾向が見られます。
ボール球の見極めについては、ロサリオやゲレーロと同等程度の数字が出ており、ボール球に手を出しがちな傾向が確認できます。ボール球のコンタクト率については、ゴームズやゲレーロよりは良好であり、ロサリオ以上マギー以下といった数字が出ています。
ブレーキングボールについては、率や長打は残っていないものの、そのアプローチそのものは我々が想定していたほど悪くないということが確認できます。

❸オフスピードボール
ゾーン内のコンタクト率では、他の外国人選手と概ね同等程度の数字が出ています。ボール球の見極めについては、ドミンゲスやゲレーロと同等程度の数字が出ておりボール球には手を出しがちな傾向があり、またそのコンタクト率についても決して良い数字は出ていません。

4-2.対左投手
❶ファストボール
コンタクト率については、ゾーン内・ボール球ともにゲレーロと同等程度の数字が残っており、左投手の速い球には強い反面、空振りも多いという傾向が見てとれます。
ボール球の見極めについては、今回の他の外国人の中では中間程度であり、釣り球などに手を多く出すということはなさそうです。

❷ブレーキングボール
ボール球の見極めが悪く、マギーと比較すると高いスイング率が残っています。また、ボール球のコンタクト率についても、ゴームズと概ね同等の数字が残っており、その対応には不安が残るところです。

❸オフスピードボール
オフスピードボールは、ブレーキングボールと比較すれば良好な数字が残っています。
ゾーン内のコンタクト率は、マギー以上の数字が残っており、ある程度の対応は期待できそうです。
一方、ボール球については、スイング率が高く、またコンタクト率もゲレーロと同等程度の数字が残っており、やや課題を抱えています。


5.コース別対応
次に、4章の内容をもう少し細かく検証するため、コース別の対応を球種毎に確認していきます。
今回は「打率」「IsoP」「スイング率」「空振り率」「ゴロ率(直球系のみ+ポップフライ率)の通算成績5データを、各コースの1マスに詰め込んでいます。コースはストライクゾーンを9分割、ボールゾーンを16分割の、計25分割で再現しています。
基本的には、オレンジの着色が得意なゾーン、青の着色が苦手なゾーンをイメージしており、色の濃淡によってその度合いを示しています。

また、今回は対右投手のみ「スポット分析」と銘打ち、例えば"右投手の外角のスライダー"に焦点を置き、過去の助っ人と比較する分析を併記しています。
ビヤヌエバの数字だけではなく、他の外国人選手と比較してそのレベルがどの程度なのか、イメージの一助になれば幸いです。

5-1.対右投手
❶ファストボール
ファストボールに関しては、主に2つの視点から観察していきます。
・インサイドの対応
・高めの対応

まず、ビヤヌエバのバッティングフォームは、バットのヘッドを1B方向に傾け、低いトップの位置からバットをボールの下に挿れ、しばき上げるというものです。この手のタイプの選手に共通するのは、ローボールヒッターであること、そしてその宿命としてインサイドや高めの速球に弱いという点です。

そこで今回、スポット分析には、下記の3名を比較対象としてピックアップしました。
・同様に、高めやインコースの速球を苦手としている巨人ゲレーロ
・バットを1B方向に傾けトップの位置が低い、同様のメカニズムを有する元巨人フィールズ、元阪神ヘイグ

(所感)
インサイドの速球は、高さに関係なく苦手としており、トータルで.138とかなりの低い数字が残っています。長打は辛うじてスイング軌道に入るインローからの僅かのみであり、腰高〜インハイにかけては長打が生まれていません。
このインサイドが苦手という傾向は、他の3外国人にも見られるものですが、気になるのは他の3外国人と異なり、インコース全般を苦手としている点です。他の3外国人はインハイのみを苦手(ヘイグはサンプル数少)とし、腰高はやや苦手、インローはむしろ得意としているケースが見られます。しかし、ビヤヌエバは、腰高も大きく苦手としており、インローも決して良い数字は残っていません。
また、腰高〜インハイのポップフライ率は37.5〜42.9%と極めて高く(これは他の外国人選手を圧倒する高さであり不安)、完全に詰らされていたことが確認できます。
インコースのボール球にも、ゲレーロほどではないにせよ手を出してしまう傾向がスイング率からも見てとれるため、高さを間違えたら一発があるという恐怖がない中で、インサイドを執拗に攻められる可能性があるという点は、かなりの懸念材料となりそうです。インサイドの対応は、相当なウィークポイントとなり得る数字が残っているといえるでしょう。

また、高めの速球にも弱く、トータルで.107と極めて低いアベレージで、空振り率も高い数字が残っています。
高めの速球への脆さでいうと、フィールズがずば抜けています。率こそ.200前後残っているゾーンもあるものの、空振り率がハイボールの全ゾーンで50.0%を大きく上回っており、 NPB時代に高めの速球に苦しんでいた姿に容易に納得がいく数字が残っています。
ビヤヌエバは、このフィールズほど高めの速球の数字は悪くなく、また高めのボール球についても比較的にバットは止まり空振り率も低いことが見てとれます。高めの対応は、フィールズほど壊滅的な対応はないものの、そのレベルとしてはおおよそゲレーロ前後くらいであろうことは、数字から読み取れるのではないでしょうか。

❷スライダー
スライダーに関しては、主に次の視点から観察していきます。
・アウトコースの対応
・低めの対応

スポット分析には、下記の6名を比較対象としてピックアップしました。
・ NPBで外角のスライダーに苦しんだロサリオ、ゴームズ
・ 打撃は粗いものの、NPBで成功をおさめているパワーヒッターのゲレーロ、レアード、ペーニャ
・タイプの異なる巧打のマギー、マートン

(所感)
生粋のローボールヒッターのビヤヌエバは、外角にも踏み込むため、内〜外寄り+低めからは長打を打つこともできています。オレンジのかかっている3コースのIsoPは、他の6外国人と比較してもズバ抜けており、外角のリーチは比較的あるタイプであることが推察されます。

ポイントとなってくる外角のボール球のスライダーの見極めですが、スイング率に注目してください。ゾーン内の外角の腰高と低めの2コースはスイング率が何も100.0%であるのに対し、そこから逸れていく外角のボール球のスイング率は計39.5%と見極めが意外にもしっかりしていることが分かります。参考までに、他の外国人と同ケースを比較すると、ビヤヌエバ(100.0→39.5)、ロサリオ(79.0→43.3%)、ゴームズ(71.7→33.7)、ゲレーロ(84.6→41.5)、レアード(75.0→59.1)、ペーニャ(46.7→37.5)、マギー(65.3→20.6)、マートン(78.6→16.7)になります。

次に、低めのボール球のスライダーについてですが、こちらは、ゾーン内の低めの真ん中〜外寄りの2コースのスイング率が計93.3%であるのに対し、そこから落ちていくボール球のスイング率は計63.9%の数字が残っています。
以下に他の外国人との比較を明記しますが、こうしてみると低めのスライダーの見極めは、外角と比べればどの選手もタイプの違いに関わらず見極めが悪く、低いレベルの中ではありますが、ビヤヌエバはむしろ見極めはできていることがわかると思います。
ビヤヌエバ(93.3→63.9)、ロサリオ(79.3→65.9)、ゴームズ(70.7→55.9)、ゲレーロ(84.6→84.6)、レアード(70.6→53.8)、ペーニャ(37.5→52.8)、マギー(69.9→50.0)、マートン(70.6→60.0)

纏めますと、ストライクゾーン内の外角そして低めのスライダーには、今回リストアップした外国人の中では最もスイング率が高く、極めてアグレッシブにも振っていく傾向が出ています。
このストライクゾーンに来た球は殆ど全て振っている前提の中、外角のボール球には約60%、低めのボール球には約36%スイングせずに我慢ができています。全体的にみても、マギーやマートンほどではないにせよ、ロサリオやゲレーロやレアードらよりは良好な数字が残っています。
同コースのボール球のコンタクト率に関しても良好な方であり、今回リストアップした選手の中ではマートンについで高い数字が残っています。

右投手のスライダーへの脆さが大きく懸念されていたビヤヌエバですが、 NPBまで球速レベルが落ち、また日本の野球に慣れてくれば、スライダーに関してはついてこれる可能性を感じられるのではないでしょうか。

❸カーブ

スライダーは想定以上に対応が良かったのにも関わらず、4章でのPlate Disciplineにおけるブレーキングボールのアプローチがまずまずに落ち着いてる要因はカーブにあります。
特に低めのボール球の見極めが悪く、低めのストライクゾーンのスイング率が71.4%なのに対し、ボール球は75.8%とストライクゾーン以上にスイングしている結果が残っています。
以下の数字と見比べるとゲレーロに次いでボール球に手を出しており、巧打者マギーが率は低いものの見極めがしっかりしていたことがよく分かるかと思います。
ビヤヌエバ(71.4→75.8)、ロサリオ(71.4→50.0)、ゴームズ(66.7→64.7)、ゲレーロ(66.7→84.6)、レアード(58.8→57.9)、ペーニャ(61.5→63.6)、マギー(91.0→25.2)

数字上は、スライダーよりカーブの方が課題になりそうなビヤヌエバです。

❸オフスピードボール(チェンジアップ+スプリット)
ここも低めの外寄りにアベレージ及び長打が残っています。これは全球球に共通する傾向となっています。
ボール球の見極めについて、腰高〜低めのストライクゾーンのスイング率が83.3%なのに対し、そこから落ちるボール球は53.2%という数字が残っています。他の外国人選手と比較すると以下のとおりです。
ビヤヌエバ(83.3→53.2)、ロサリオ(84.9→29.1)、ゴームズ(84.8→39.3)、ゲレーロ(80.0→69.2)、レアード(71.4→41.9)、ペーニャ(94.4→52.6)、マギー(90.1→41.5)
こうしてみると、比較的に低めのボール球に手を出してしまう傾向が確認できます。

5-2.対左投手
ここまでくると皆さんもお疲れのことと思います。私も疲れてきました。。
対左投手については、簡潔にビヤヌエバのみの情報を載せていきます。

❶ファストボール
まずは直球系から確認です。
さすがはローボールヒッターのビヤヌエバ。対右投手と同様に圧倒的な強さを見せています。その一方で高めのストライクゾーンに着目すると、アベレージこそ.462という高い数字が残っているものの、低めとは異なり長打が殆ど出ていないことが分かります。また空振り率も、低めが6.67%なのに対し、高めは32.4%と増加しており、高めには振り負ける傾向が確認できます。
対右投手と比較すれば対応は明らかに良い一方、高めを集中的に攻められた場合にどうなるか(ゲレーロのように苦しむ可能性あり)注視する必要がありそうです。

❷スライダー
低めやインサイドに切れ込んでくるスライダーの見極めに難があります。また、すっぽ抜けて高めに入ってきたスライダーにも高い空振り率が残っているため、対左投手のスライダーに対しては打てるポイントが少ない印象を受けます。

❸カーブ
スライダー同様に食い込んでくる軌道に弱さを見せていますが、対右投手と比較すれば良い数字は残っています。
とはいえ、食い込んでくるブレーキングボールには難があるビヤヌエバです。

❹オフスピードボール
対左投手の落ちる球には滅法強く、腰高〜低めにかけて、ボールゾーンまで及ぶほど外に広いポイントをもっています。ストライクゾーン下の空振り率も特筆して高いわけでないため、左投手の落ちる球の使い方には注意が必要でしょう。特にセリーグでは、左腕大国のDeNAをはじめとしてチェンジアップの切れるスターター左腕が多いです。彼らはビヤヌエバ相手にはチェンジアップの連投は避け、高めの4シームや曲がる球を上手く使っていきたいところです。

6.打球について
打球の傾向もチェックしておきましょう。
打球方向について、MLBでのスプレーチャートは、対右投手、対左投手でそれぞれ以下の図の通りとなっています。
(上:対右投手、下:対左投手)


MLB通算で引っ張り方向の打球は50.0%、センター方向が30.0%、反対方向が20.0%と極端なプルヒッターです。マイナーでもその傾向は色濃く出ており、キャリアで引っ張り方向が45.0%を下回ったシーズンは一度もありません。

一方で、GB/FBは、MLB通算0.73 7、MiLB通算0.75と極端なフライボールヒッターであり、この点は、本拠地東京ドームや狭い球場の多いセリーグのおいては有利に働きそうです。

7.守備 

・UZR:
「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」
・DPR:
併殺処理による得点
・ RngR:
打球処理による得点(=失点阻止への貢献度)
・DRS:
守備防御点 ex)DRS=-5.0 → 平均的野手と比べて5点余計に与えた。

守備については、サンプル数が確保されている3Bの守備のみ簡単に検証します。
ここに記載がありませんが、エラー数が今季12とやや多く、守備率.947と少々粗さが目立ちました。しかし、各種指標は決して悪くなく、後ほど動画を載せますが肩が強く、動きも良いので、多少のポカはあるもののマギーよりは動けるのではないかと見ています。

巨人としては、3B岡本の構想もあるようですが、互いに慣れており、岡本の負担を減らす意味でも、3Bビヤヌエバ、1B岡本の布陣が最も強力な布陣になるのではないでしょうか。

8.走力
最後に走力についても触れておきます。
ビヤヌエバのスプリントスピード(走っている間の一番速い1秒間)は、17→18年にかけて、秒速8.14m→7.83mと推移しています。
この数字がどの程度のレベルなのかというのを元阪神ロサリオ、巨人ゲレーロと比較しますと、15年のデータでそれぞれ秒速8.14m、秒速8.32mとなっています。
基準として彼ら程度と想定しておくとイメージしやすいのではないでしょうか。

9.動画

------

※追加検討(12/21)
対右投手相手にキーとなるファストボールとスライダーへの対応をより詳細に知るため、球速別の成績を整理しました。ご参考ください。(既出のデータと誤差はございます)

・4シーム
対右投手の4シームに大きく課題のあるビヤヌエバですが、150㌔以下の球速帯では見れる数字が残っていることが確認できます。一方、150㌔を超えてくると低打率及び長打も減っていることが見てとれます。インサイドの対応に課題がある選手ですので、この分析のみで一概に判断することは難しいですが、NPBの球速帯まで落ちた時に多少なりとも対応が良くなることは可能性としてあり得るかもしれません。(弱点であることには変わりない。)

・2シーム
4シームとは異なり、150㌔オーバーに対しても率は残すことができています。

・スライダー
通算では1割台と低打率な一方で、球速別の蓋をあけてみると140㌔オーバーの高速スライダーに大きく苦しんでいたことが分かります。140㌔以下については、2割台のアベレージが残っており、長打を含めて多少なり数字は良化する傾向が確認できます。


10.まとめ

・生粋のローボールヒッター。外寄り低めにツボがあるので、低め低め、外へ外への配球はかえってツボに入るため危険。

・対右投手が課題であり、事実18年MLBでは右投手相手に通用していなかった。その一方でAAAでは毎年着々と右投手への適応力を上げ、17年PCLでは、.304 18HR OPS.926 19.6K%とアジャストした。このように伸び代には大きく期待できる。

・対右投手ではスライダーへの脆さがピックアップされているが、外角及び低めに限定してみれば、ストライクゾーンとボール球の見極めそのものは過去のパワーヒッター達と比較しても良好な数字が残っている。NPBまで球速帯が落ちてくれば対応できる可能性そのものは感じられる。

・むしろ右投手の最大の懸念はファストボールの可能性が大。インコースに大きな穴があり、高めにも振り遅れる傾向あり。こことのコンビネーションによってスライダーの対応が悪化する可能性は十分に考えられる。(ここが最大のポイントになってくると思います。)
また同じブレーキングボールでも、スライダーよりはカーブの方が見極め・コンタクトともに数字が悪い。

・対左投手ではファストボールとオフスピードボールに滅法強い一方、インサイドや低めに食い込んでくるブレーキングボールに難があり。

・対左投手のファストボールは、対右投手ほどではないものの高めに振り遅れる傾向あり。オフスピードボールは、アウトローを中心に外低めに広範囲にツボを持っている。

・守備は荒いが強肩でよく動ける。走力はロサリオやゲレーロと同等程度のスピード。


タイプ的には、マギーのようなクラッチヒッターというよりはゲレーロやレアードのようなスラッガータイプになりそうなビヤヌエバ。タイプ的に似たような打者を増やしてどうするんだという点はごもっともではありますが、伸び代豊かなスラッガーが巨人という厳しい環境の中でどうアジャストしていくのか一外国人ファンとして見守りたいと思います。

球春を楽しみに待ちましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?