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帰心

帰心
飲み会が終わった後、今すぐにでも家のベットで寝たい「はよ帰りたい」と切に願う気持ち。

この「はよ帰りたい」欲はときに3大欲求を上回る凶暴さを持っている。河原町から地下鉄四条へ、意識が朦朧とするなかその足を突き動かすのは「はよ帰りたい」その一心である。こうべを垂れて、ほとんど地面しかみていないその姿はウォーキング・デッドである。そんな中でも地下鉄に乗り、京都駅で乗り換え最寄り駅まで着いてしまうのは我ながら驚かされる。

だが、昨年の冬に終電で帰ったのだが琵琶湖線の終点まで乗り過ごすというハプニングが起きた。さすがに歩いて帰れる距離ではなかったから、タクシーを選択したのだが、そこにはサラリーマンの列があった。クソ寒い真冬とぼんやりした意識の中で30分以上待たされた。いざタクシーに乗り込むとそこは天国であった。行き先を伝え、一瞬まぶたを閉じるともう家の前であった。が、メーターに表示された価格は7800円でまさに天国から地獄に突き落とされた。

最近はコロナで外出が自粛されいるせいかUberEatsが流行っている。(もちろん地元には無いが)日本ではUberEatsが流行りすぎて、出前の会社だと勘違いされているが、UberEatsはUberというライドシェアの企業が始めたサービスである。ライドシェアとは、公的な認定が無くても、一般人が自家用車でタクシーのようなことが出来るサービスである。

14年日本に進出したUberであったが、既存のタクシー業界が成熟していること、またライドシェアは「白タク」とみなされ違法であるとされタクシー業界からバッシングを食らい羽目となった。

日本はアメリカに次ぐ、世界2位のタクシー大国である。高度経済成長を支えたトヨタを含む自動車産業とともに、日本のタクシーは運転手の知見で古くから発展し成熟期を迎えた。そんな世界に誇る日本のタクシーはデジタル化で劣勢に立たされている。

交通網が複雑な日本地理の知見をもつのはいわば「おっちゃん」で、彼らはデジタルだとかアプリを嫌うのだ。だから、未だにタクシーを止めるために手を挙げたり、列に並んだり、外国人観光客への対応と言ったことが問題視されている。

時代遅れのタクシー大国に、18年再びUberが乗り込んできた。今度はライドシェアを押し付けるのではなく、タクシー業界と手を組んで「交通のプラットフォーム」を作るという形で。Uberは、交通情報から最適ルートを検索できる検索エンジン、顧客とのマッチング、車両と乗客数の需給バランスにより価格が変動するダイナミックプライシングシステムでタクシー業界と手を組もうとしている。

アプリ上で行き先を入力すると、タクシーが迎えにきて、繁忙時でなければ割安で、手元に現金がなくてもモバイル決済で目的地に辿り着ける未来が見える。Uberは、タクシーだけでなく地下鉄やバイクをも巻き込み、UberEatsといったサービスに適応させるプラットフォームを目指している。

そんな世界観が実現すれば、終電のために走ったり、わざわざ早朝からおぼつかない足取りで家に帰る必要もなくなる。

飲み会後のウォーキング・デッドはウーバーイング・デッドになるかもしれない。


最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ