【 それでも…私は叫びたい 】


#2000字のドラマ

テーマ【若者の日常】

#4000字の物語 になりました(だめだこりゃ…)

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【 それでも…私は叫びたい 】


『卒業おめでとう!No.2021–72号』

《 これでキミも、晴れて観察官だ! 》



私は72号、
周りからは《ナツ》と呼ばれる

この衛星コロニーで生まれて
すぐに育成プログラムへと投入されてから

9年の歳月を経て…先程卒業したばかり。

自分が何者か?
それは自分でも良く分かっていない

只、分かっていることは

この社会の中で
目の前にある用意された使命を全うするだけ

配属先は【《地球》地中 課 】

まもなく、
地球行きのカプセルがコロニーから排出される。


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ここは地球…、

地中深くでカプセルが開放された

今より始まるは、
地中0.0007kmの奥底で
《観察対象》を見守る物語…

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フッフーン♪

今日もっ♪ごきげんっ
おれはぁ〜♪忍者の空蝉ぃ〜♪

得意忍術はぁ〜【空蝉の術】‼︎ (まんまかいっ!)
( 嫌な事にはぁ〜即退散‼︎もぬけの殻よッ )

座右の銘はぁ〜【《大器晩成》】
土の中にも3年ぇ〜ん♪イェイイェイ♪フーっ♪

『今日も歌声…絶好調だぜっ♪』

(…おっ《みずみ》発っ見〜ん♪)

『ようっ!みずみ!今日も元気に耕してっか?』

「(また来たわ…)うるっさいわね!せみぞう!
 仕事もせず…幼虫のくせに毎日毎日ギャーギャー言ってんじゃないわよ!」

『…っば!せみぞう言うな!おれの名は《セミィ》だって言ってんだろっ』

「はいはいっ【自称歌手の《セミィ》】ちゃん♪…よっ!未来のディーバ様♪」

『 お れ は 漢 だっ! 惚れ直さすぞッツ 』

「え?もとより惚れてないですよ?アタシを惚れさせられたら、大したものですよっ!オホホホ」

『…このっ!(人の気も知らないで…)』

(パンパンッ♪)
《ハイハーイ、夫婦喧嘩は…おしまいおしまい》

『「誰が夫婦だ!(誰が夫婦だ!)」……って、なんだ、アリスかよ』

《そうよ、もうあんたらの夫婦喧嘩は見飽きました、毎度毎度…動線潰さないでくれる?》

『おぉ、すまn…って…また、それ…かよ』

《これが仕事なんだから仕方ないじゃない》

『お前も良くやるよな…【葬儀回収屋】なんて仕事…』

《生きる為には必要なことなの。アンタ達の【未来の成れの果て】でもあるんだから》

「えーアタシ、外なんて出ないもーん♪【セミィ様】とは違って長生きしたいしぃ♪そもそも今の仕事、やり甲斐あって好きだしっ♪」

『みずみ…お前も本当好きだよな…、なぁ土壌改良屋なんて仕事やめてさ!俺と一緒に…』

「『外の世界へ出て、俺の歌を聞かせてやる!』って?もう聞き飽きたってば!
 アリスも、こいつになんか言ってやってよ!」

《はいはい…。そんじゃこれ、あげる【婚姻届】もう仕事戻るからバイバーイ》

『…って、「ぅぉいッ!」(ぅぉいッ!)』



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(…おい、みずみ…起きろって…おいってば…)

「…ん、んん?誰よ…こんな時間に…なんだ…バカぞうじゃない…」

『誰が、バカぞうだ…馬鹿!せみぞうだわッ せみぞう違う!《セミィ》って言ってんd…』

「どうしたの?こんな朝っぱらから…(はぁ…ねむい…)」

『お…ぉお!そうだった、なんか【キソウ】な予感なんだよ!』

「一体、何が…、って、え…、羽化?早くない?みんな大抵日暮れくらいじゃない」

『俺にもよくわっかねんだけど、外出て歌いたいpassion?が叶えた…感じ?ってやつ?』

「へ、へぇ、んじゃ…いってらっしゃーい!もう一寝入りするわ…zzz」

『おぅ!行ってきまーす…っじゃねぇわっ!お前も行くんだよ!』

「…え?なんでよ?アタシずっと外出ないって言ってんじゃん…」

『お前に見せて…やる事は出来ないけれど…
 聞かせてやりたいんだよ!肌で感じさせてやりたいんだよ!』

「アンタのpassionってやつを?…いやいや、だからもう聞き飽きt…」

『ちっげぇよ!【外の世界】をだよ!お前が…本当は…、見たかった世界…』

『ちっちゃい頃、よく言ってたじゃん…、「外の世界へ行ってみたい!」って…』

「いやいや…確かに言ったけど、アタシこんな目だし…諦めたって…何度も…」

『諦めんなよ!…今なんだよ!お前を連れてってやれるのは!俺だけなんだよ!』

「どうしたの…急に…変だよ」

『…ごめん、いや、俺らがまだちっちゃい頃…天敵の土竜に襲われて孤児になってから…』

『家族も、誰も居なくなっても…、お前、今まで仕事…ずっとひとりで頑張って来たろ…?
 俺は手伝う事も出来ないから…出来る事って、これ位しか思いつかなくてさ。』

「だからって…、無理だよ」

『無理じゃない、俺が作る道ついてくるだけだし!大丈夫だって!
 ……だし、もう…これっきりだから…。一度羽化したらもう…俺は戻れない。』

「わかってる…、わかってたから、早く行っちゃえばいいのに…って思ってた。」

『…、そっか。なら話は早い!善は急げだ!みずみ、外の世界堪能したら…
 お前は来た道を戻ればいいからな!…良し!行こう!【我らの憧れの世界へ♪】』

「仕方ないわね…フフフ♪…はいはい、頼りにしてますよ♪…(私の)【歌の王子様】っ♪」

『まっかせとけって♪…ハハハハハーッツ♪』



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「…ね、ねぇ、…いる?……いるよね…?」

『ん?…ぉお、すまん、ちょっとペース早過ぎたか…大丈夫!ちゃんと居るぞ!』

「…よかった!ちょっとさ…初めての場所だから…肌の感覚が違くって…少し不安…」

『大丈夫大丈夫♪あとちょっとだし!ちゃんと感知出来る距離に居るから!
 なんなら、俺の美声を聞かせてやろうか?フッフッフ♪さぁ御所望してごらん』

(かっちーん…)
「…いや、いらんし!羽化する前の自分の歌聴いたことあるんか?ぉぉん…?自分ひっどいものだぞ」

『…え?…マジで…?そんなに…?いやでもほら…【今】しか聴けない…ぜ?レアだ…ぜ?』

「………まぁ、それもそうか…、んじゃ我慢するから頼むわ…無いよりマシだし。」

『…こんのっ!……、ったく…へいへい…、すいやせんねぇ…音痴で…、では…(すぅっ)』

「ねぇ。何でアタシだったの?」

『ぶふぉぁッ…、何だよ急に…(結局、歌わせないんかいっ…くっ…)』

「いや…、もう話す事も出来なくなっちゃうんだな…って思ったらさ…
 ちょっと聞きたくなっちゃって…、ダメ?」

『だ、ダメじゃねぇけど……ってか、バレてたんか。……』

「バレバレでしょ…フフっ…アンタくらいじゃない?そう思ってるの♪」

『…そっか、そうだよな…』

「…うん、…で、なんで?…こんな男か女か、わかんないやつにさ…
 どうして、そこまで想ってくれるの?女の部分に惹かれた?」

『…確かに、そういう部分もあったのかもな…でもさ、
 お前の言う男の部分も悪くないんだよ…寧ろ心地良いくらい落ち着けるっていうか…』

「性別とか関係なくって事?」

『平たくいうとそうなるかもだけど…ちょっと違うかもな…、
 俺…馬鹿だから…って、知ってるか…フフ♪…だから、巧く言えねぇんだけど…』

『どんな時の《みずみ》と居ても、嫌な理由が見つからないんだわ…、それが答えかな。』

「………、そっか…、嬉しい…。私も全部の《あなた》が好き…」

『…え?…ま、ま?…まままマジで?(落ち着け俺…)』

「…うん、…あ、もう出口じゃない?なんか、また土の感触変わってきた…」

『…ぉ、ぉお、ほんとだ、いつのまにか抜けてたわ!』

「…そしたら、いってらっしゃい♪羽化頑張ってね…♪」

『…ぉ、ぉう、少しの間…ひとりになっちゃうけど…、』

「大丈夫大丈夫♪初めての外の世界…前倒しで…ちょっぴりそこら辺堪能して来ますわ♪
 うふっ…、うふふふふふふふ…♪」

(若干怖いな…笑)
『…あんまり遠く行くなよ?
 羽化終わったら…日が昇る迄の間…一緒に回ってやるから!』

「うん…、待ってるね♪ほら!行った行った!しっしっ!」

『しっしって…、なんやねん…、たくっ♪…んじゃ…行ってきますッ!』



「…行ってらっしゃい……」



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《…………、》


《…ねぇ、みずみ…今日も…、聴こえるね…。あいつの歌声…上手いんだか下手なんだか…
 相変わらず幼虫の時の歌い方…歌い癖取れないのって…あんたの為なんだってよ…♪ 》

《…、ねぇ知ってた?セミって成虫になってから、長くて1ヶ月しか生きられないって…》

《『ミミズは10年生きられて良いなぁ』って、
 あいつ、いっつもあんたにつっかかってたもんね…、しょーもない…》

《…、もうあれから何年経つんだろう…、そうそう…噂になってるの知ってる?》

《その噂…、その名も【《寒ぃ寒ぃ虫》の怪奇】…ウケない?…ねー♪本当ウケる…
 アイツらしいというか…、なんていうか…》

《その噂の現象も…徐々に聴こえなくなってきちゃった…
 あいつが生まれてから…もうすぐ、10年目…、あいつも頑張るよねぇ…本当…》

《…ねぇ、みずみ…私も…もう良いかな…?
 身分隠して勤めてきた…この仕事…もう…、つらいよ…》

《昔はさ…毎度毎度…動線潰して、イチャついてるあんたら見ていて正直、
 リア充爆発しろって、強ち本気目で思ってたんだけど…》

《いつのまにか…そんな、あんたらと仲良くなってた…。》

《だから…、こうして、あんたらが離れ離れになってるの…見守るの…もう…つらいんだ》

《だから、ごめん…先行くね…もう、疲れちゃった…》



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(…ブツン…、ブゥン…)

『No.2021−72号、データが不完全の様だが…これは?
 途中が抜け、最後に至っては途切れ途切れの音声データのみ。説明せよ』



「はい、抜けている部分は地中課の範囲外だった為、不要部分は削除致しました。
 最後の映像欠如は、土竜にかじられた際に不具合でも起こったものだと思われます。」



『不慮の事故…だと?』



「はい。」



『わかっているのか?
 この結果次第で貴様の査定が決まる事を。撤回するなら今の内だぞ?』



「致し方ないかと。」



『そうか、
 そんなに表沙汰にしたくない内容だとも思えんが、まぁ良いだろう。結果覚悟しておけ』


「はい。」



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《…せよ、…おーとーせよ《ナツ》さん聴こえますかー?》

「…何ですか《ナミ》さん…、何かありましたか?」

《ナツさんつれないなー…折角、【地上課】の良い情報を…》

「早く教えなさい!」

《フフフ♪ナツさんも…、やっと【らしく】なってきましたね♪同期としては嬉しい限r…》

「…73号、いい加減に…」

《わー♪ごめんなさい、ごめんなさい!…そしたら、次の作戦と一緒に…例の場所で!》

「遅刻は厳禁ですよ」

《へいへーい…まったく…厳しいんだから…あの頭でっかt…(やべ通信…オフオフ…)》

「………。」


「アリスさん……、やっと…わかる時が来そうですよ」

セミィさんと、みずみさん…、
あの後、どうして…あぁなってしまったのか…

アリスさんの想い…まだ間に合うなら最期に一瞬だけでも希望を繋げてあげたい…

今でも、みずみさんを想いながら…叫び続ける…セミィさんの為にも…………。




つづ…



おしまい…



ほんとに…?


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