【 埃 と 塵 】

気にしていないと人の目には見えない、埃。

気づいたら、そこにいる埃。

風に乗って…空気中を漂って…

今日も…
生まれ育った遊び部屋を駆け回る。

遊びに疲れたら、
好きなところへ…一休み。

一休みしていたら同じ空を駆け回っていた
友達たちも、たくさんやってきた。

今日は一日中、
ずっとそこで友達と話をしていた。

…(…ポツ……ポツポツ…サー…)…

お…もうそろそろ、お風呂の時間だ。

湿気という名のシャワーを浴びて
休憩所で過ごす日々。

この時期は、とても快適だ。

1年の中でこの時期は
各人自分で決めた安息の地で
ゆっくりと腰を下ろし佇む事ができる。

次の日も…次の月も、
仲の良い友達たちと、その場で話していた。

それから数日の事だ

…(…サ…ササ…ササ…)…

どうやら、このお気に入りの場所も
引っ越す時が近づいてきたみたいだ。

ある者は離れたくないと
根強くその場所へと残ろうとして

ある者は年に数回、
場所によっては月に数回ある
辺り一帯を巻き込む大規模な引っ越しの日

お気に入りの場所へと来る…不思議な絨毯。

いろんな形…いろんな色をした
その絨毯に乗り
転々と各地にいる仲間達を拾い上げては
次の場所へと連れて行く

友達たちと心を弾ませながら
新たな土地への到着を…楽しみに待つ。

その道中…嵐に遭遇した。

友達とは別の…
大勢の仲間達と離ればなれになってしまった。

ある者は嵐に呑まれて
うす暗い水が流れる洞窟へ。

ある者は絨毯の中へと身を潜め
嵐の恐ろしさからか
そこから出ようとはしない。

私は数人の友達と離れ離れにならない様に
お互いがお互いを繋いだ手を離さずにいた。

その事が幸いしてか…
私達は無事はぐれずに
絨毯から飛び降りる事ができた…

嵐に濡れたその身体は
元の姿とは比べものにならない。

姿形を変える程の…
その嵐の恐ろしさが余計に友達たちと私自身を離れさせる事はしなかった。

…(…ここはいったいどこなのだろう…。)…

まわりの地面は真っ平ら
均等に列を為す溝が所々に掘られている

その少し先には、
大きな湖、小さな川、水たまりが点々とある。

空は…近くに活動中の火山があるのだろうか…
凄い熱気と、噴煙だ。

定期的に起こる、
地震の様な地鳴りも夜が更けるその時まで、
ずっと続いている。


時々降り注ぐ、
大量のスコールは私達にとっては驚異なものだ。

ここで過ごすには、どうしていいかわからないまま、
休めそうな陰を探し、身を潜める。

辿り着いたそこには、
私達と同じ姿形をした者達が同じく身を潜めて、
じっと静かに何かに怯えていた…。

その者達は、
この場所にも長居する事は難しいという。

またもや、引っ越しが必要な様だ。

しかし、今度の引っ越しは、
故郷の絨毯のような、生易しいものではないらしい。

一日のある時間…、
二匹の異形なる者がやってくるということ。

一匹は、
胴が長く、頭の毛一つ一つが手のような、
何かを捕まえようとする化け物と、

もう一匹は、
何ものでも呑み込む、大口を開けた化け物だ。

この二匹が、一日に数度現れるという。

既に、
そこにいた何人もの仲間達が連れ去られたみたいだ。

そんな光景を目の当たりにしていた、
その同じ姿をした者達は、
その当時の事を、怯えながらも…話してくれた。

少しずつだが
この場所のことを知る事が出来た

その情報を元に、少し近辺を探索しようとした

その時…。

シャ……シャ…シャ…、という近づく音に気づいて、
私達は振り返った。

突如現れた、
無数の手が伸びる化け物に…一人の友達が捕まった。

友達を助けようと、
繋いだままだった手を離さずにいた私達は、
そのまま全員…無数の手に捕らえられ、
大口の化け物に呑み込まれてしまう。

その場にいた、
話を聞かせてくれた同じ姿形をした者達は、
怯えるだけで、何もできずにいた。

その者達が居た場所は、きっと…、
化け物達も手が届く場所ではなかったのだろう。

だから、
今まで生き延びられてきたのかもしれない。


大口の化け物に呑み込まれてしまった、私達は、
一体、どうなってしまうのだろうか…。


つづく。

次回

『新たな成長と、新たな出会い…』

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