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物語の余韻
お話をひとつ、読み終わって深呼吸。
まだもうすこし、その世界から離れたくなくて、わたしは目を閉じる。まだかすかに響いている音に耳をすませる。
本を読み終わる時のうれしいような、寂しいような、不思議な気持ちはなんだろう。
最後のページ、白く空いた空間を目の端にとらえながら、段々と最後の行が近づいてくる。扉の向こうの景色が狭くなっていく。「かちゃり」と静かに、しっかりと扉を閉じる。
扉の向こうではきっと、「彼らのお話」は続いてゆく。わたしはその一部分を一緒に過ごして、時が来れば去る。そして、わたしには、「わたしのお話」というものがある(しかし、それはそれで、何やらややこしく不思議なものなのですが)。
さてさて、いつもの薄暗い廊下には、ずらーっと扉が並んでいます。読書の秋、次はどんな扉を開けてみましょうか。
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