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バルテュスの作品『旅路』と    『山(夏)』について      


画家バルテュスについて:
バルタザール・クロソワスキー・ド・ローラ通称バルテュスの父親は美術史家、母親は画家。
作家のライナー・マリア・リルケと彼の母が恋愛関係となり両親は離婚し母と暮らす。
ピエロ・デッラ・フランチェスカなどの模写をし絵画を独学で学ぶ。
古典を消化した、堅固な構成と繊細な描法で女性や少女像を多く描く。
アントワネット・ド・ワットヴィルと最初の結婚をし離婚。五年後に出田節子さんと運命的な出会いの後、結婚した。
一般的な鑑賞者のバルテュスへの印象は猫好きなロリっぽい少女を描く人なのかもしれない。

私の好きな作品:
私は『街路』と『山(夏)』が好きだ。

『街路』には1929年バージョン(所在
不明)と1933年バージョン(ニューヨーク
近代美術館所蔵)の2つがある。
これらの画は時間が一瞬の間、停止している
ような印象と言われている。

胸に右手を当ててこちらに向かってくる
丸顔の男の右手の角度と別の男が肩にかつ
いだ角材の角度の絶妙なバランスによって
静止世界を作り出しているように思う。


『街路』(1929年バージョン)

また1933年のバージョンではそれに加え
襲いかかる男と逃げる少女との前にまるで
邪魔をするかのように、子供が配置されて
いたり、象徴的な黒服の人(?)の登場などの
相乗的効果によって、異世界へと我々鑑賞者
を誘ってくれるように感じる。


『街路』(1933年バージョン)

『山(夏)』 1937年
この作品は構想としては山の四季のシリーズになる予定が夏だけになったと言われている。
また、画面の影の部分は夜を表していると言う。

バルテュスは狂言自殺を起こしてまでして他人と婚約していた人と6年越しの恋を実らせ結婚した(結婚当時29才)。その幸せな頃の大作で前面に新妻アントワネットを配置し、バルテュス自身は山のはるか彼方に小さく背中を向けた人物だと言われている。
新婚夫婦の実生活とは異なり、この画は夫婦間の距離があまりにもあり、2人は永遠に交わらないように感じるが新妻の表情からは悲壮感はなく清々しささえ感じてしまう。
2.49m×3.66mという大作なだけに自身を消え入るような小ささで描いているのは何故か?!
そんな疑問が残るところも魅力だったりする。


             新妻アントワネット                 バルテュス

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