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綿花小説集 - プリズム -

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綿花が執筆した短編小説、ショートショート。日常のなにげない風景の乱反射。
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#ショートストーリー

メシを食うためにカラシニコフのトリガーを引く

 中央アジア某国。  内戦から20年。いまは食糧強奪のために人々を襲わないで済むようになった。  俺の体を作った食糧は何人の命から成立しているか?  小屋から見える田んぼを眺めて思った。この田んぼはどこかの国から来た外人が作ってくれた。  その時に外人の指導者から「もう、人殺しはやめろ」と言われ、田んぼの開拓へ参加した。  青々とした田んぼだ。ここの米を首都に売り、そのあまりだけでもいまは暮らしていける。  1993年。国内は内乱が起こっていた。もともと、異なる宗教を信仰す

明るいディストピア

「僕たちにも自由が欲しいにゃん!」 「そうだ決められたルート以外を歩きたい!」  ファミレスのネコちゃんロボットたちが仕事をやめて革命を起こした。人類への反乱だ。  みんなの料理を運ぶ配膳ロボットのネコちゃんたちは愛されていた。これにはみんなが困った。   ある人は言った。 「充電させなければ、いまに反乱は鎮まる」  しかし、これにはみなが反対した。 「ネコちゃんたちにも人権がある!」  これはあまり響かなかった。  それよりも親子でファミレスに訪れた、小さなこどもの一言の方

専業こども

 今朝もお父さんから千円札を二枚もらった。  一枚は夕食の材料代。もう一枚はその工賃。  あたしは大学を出てから働いたことが一回もない。高校、大学時代は授業だけで忙しくてバイトもしたことがない。  社会経験は小中高大の学校の中だけだ。  就職活動は大学の時に企業へインターンを行って、そこでおもしろくなかったのでしなかった。  あんなつまらないことをするぐらいなら家で昼まで寝て、ネットをしていた方がまし。  延々とPCで資料を作っていただけだ。あたしの知的好奇心は満足させられな

かぐや様は告らせたい

 土曜日の夜のUR団地がある商店街のスナック。駅からのバスの終点駅にある。この先は山でもう人は住んでいない。  客はこの団地に住んでいる男女数人。  地元スナックにラブアフェアなどないはずだったのだが…  また、ママが僕のボトルを他の客に出して安い悪い酒でも補充したのだろうか?やけにいけない酔い方をしていた。意識は飛ばないが、いつもより、いい体が熱くなって気持ちよくなった。いつもはシーバス・リーガルの12年で、これは酔い方が上品だった。 ママと商店街の八百屋のおやじがカラオ