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バス停

 路地に面した小さな神社に、見慣れぬ影を見止めた。入口の石段に若い女が腰かけている。お出掛けに行くような軽いおめかしをしている。脇へ肩掛け鞄を置いていた。女は茶色く染めた長い髪を垂らして両手で顔を塞いでいた。そうして辺りを憚らずさめざめと泣き声を立てていた。往来には車が荒々しく行き交い、老人の自転車がふらふらと過ぎて行った。神社の前にはバス停があった。
 神様はだまって女の泣き声を聞いていた。私の背中で蝉しぐれが女の影を塗りつぶした。



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