16. 外直筋のたるみが加齢関連性遠見内斜視(age-related distance esotropia)の唯一の原因ではない

Objective excyclotorsion in age-related distance esotropia

Oohira A. Strabismus. 2022 Jun;30(2):72-77. doi: 10.1080/09273972.2022.2055091. Epub 2022 Mar 31. PMID: 35354422.

加齢関連性遠見内斜視(age-related distance esotropia:ARDE)は,sagging eye syndromeによって引き起こされると考えられています。外直筋のたるみは自然に起こる老化現象に由来し,眼球の外回旋を誘発する。現在までに,ARDEと年齢をマッチさせた斜視のない人の回旋偏位を比較した研究はない。本研究では,ARDE患者の眼底写真における客観的な回旋偏位を測定し,年齢をマッチさせた健常者の結果と比較することを目的とした。ARDE患者38名(年齢74.1±7.9歳),健常者76名(年齢73.9±8.1歳)の2群から得た眼底写真のDFA(disc-to-fovea angle)により,客観的な回旋偏位を測定した。ARDE患者のDFAは対照群と差がなかった(Welch t-test。ARDE vs 対照群,右眼;7.7°±2.9° vs 6.8°±3.9°,p = 0.18。左目;10.0° ± 4.5° vs 9.4° ± 3.6°,p = 0.54。両目の合計;17.6°±5.8° vs 16.2°±4.7°,p = 0.21)。これらの所見は,外直筋のたるみがARDEの唯一の原因ではないことを示唆している。加齢に関連した別の要因,例えばphoria adaptationの低下もARDEの原因である可能性がある。

※コメント
sagging eye syndromeが有名になり,高齢者の遠見内斜視やわずかな上下斜視症例は軒並みSESと診断されていると感じています。
両眼の外直筋が同程度にたるむ(sagする)と遠見内斜視が起こるのが,SESの機序として説明されています。今回の報告から,いわゆる開散不全タイプの内斜視=sagによるもの ではないという事がわかりました。加齢によるphoria adaptationの低下は原因の可能性の一つとして非常に有力だと思いました。

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