331. 若年成人における調節麻痺の有無によるスポット・ビジョン・スクリーナーを使用した場合の測定精度

Measurement Accuracy When Using Spot Vision Screener With or Without Cycloplegia in Young Adults

Tatara S, Maeda F, Ubukata H, Shiga Y, Yaoeda K. Clin Ophthalmol. 2023 Nov 21;17:3543-3548. doi: 10.2147/OPTH.S431202. PMID: 38026593; PMCID: PMC10676106.


目的:スポットビジョンスクリーナー(Spot Vision Screener:SVS)を用いた調節麻痺下屈折の測定精度については不明な点が多い。本研究の目的は、近視に関する調節麻痺下SVS測定の精度を検討すること。

材料と方法:健常者49名を対象とし、屈折を測定した。SVS、卓上型オートレフラクトメーター(RT7000)、手持ち型オートレフラクトメーター(Retinomax Screeen)により、非調節麻痺状態および1%サイクロペントレートによる調節麻痺状態で、他覚的屈折を測定した。自覚的非調節麻痺下屈折は、認定視能訓練士がクロスシリンダーを用いて行った視力・屈折検査によって得られた。一元配置反復測定分散分析を用いて、測定された屈折が検査の違いによって変動するかどうかを検討した。

結果:非調節麻痺条件において、自覚的方法、SVS、RT7000、Retinomax Screeenによって測定された等価球面(spherical equivalent:SE)の平均値(±標準偏差)は、それぞれ-2.56±3.00、-2.62±2.38、-3.05±2.84、-3.26±2.97であった。SVSで測定された自覚的SEと他覚的SEは、2台のオートレフラクトメーターで測定された他覚的SEよりも有意に近視値が小さかった(p < 0.001)。調節麻痺条件では、SVS、RT7000、Retinomax Screeenで測定したSEの平均値(±標準偏差)は、それぞれ-2.07±2.66、-2.62±2.98、-2.66±3.02であった。SVSによって測定された他覚的SEは、他の方法で測定されたSEよりも有意に近視値が小さかった(p < 0.001)。調節麻痺条件下では、SVSは固定誤差を示し、自覚的方法によるSEよりも遠視的であり、SVSは比例誤差を示した。

結論:調節麻痺条件下での測定では、SVSのようなフォトレフラクトメーターではなく、オートレフラクトメーターの使用が望ましい。

※コメント
discussion抜粋-
メーカーが公表しているSVSの測定精度は、-3.50Dから+3.50Dまでは±0.50D、それ以上は±1.00D。強い屈折値では測定精度が不安定になるという装置の特性上、誤差は避けられない。
RT7000とRetinomax Screeenで測定された調節麻痺下SEは高い測定精度を示した。逆に、SVSで測定した調節麻痺下SEは、他の測定法に比べて有意に遠視的であり、SVSには固定誤差と比例誤差があった。近視の被験者を対象とした本研究では、近視の程度が高いほどSVSで測定した屈折値が低くなるという比例誤差が見られた。SVSは軸外光屈折装置であるため、屈折値は内蔵された固定値の瞳孔径をもとに算出されていると考えられる。SVSはスクリーニングに特化した装置であるため、屈折は無散瞳状態(自然瞳孔状態)での瞳孔径に基づいて算出されることが予想される。従って、SVSの場合、調節麻痺をすると測定精度が悪くなる可能性がある。

測定精度が機器の特性上避けられないという事を理解した上で、
SVSの方が近視が低く算出されるためNGというのは、やや飛躍した内容かなとも思いました(幅広くみるとという事だとは思いますが)。卓上オートレフの値を基準にすると…ということですが、軽度近視等であれば本当は卓上の方が本来の値より近視が強めに出ている可能性もあるかなと。考え方のひとつです。

ちなみに本研究の対象者の平均年齢は19.2歳です。

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