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人生のような1日

昔から美術品や工芸品が大好きで、流行りの刀剣も元々興味があった。
そして出来れば本物を観たいし、その響きに触れたいと願う方である。
だから、ボストンから浮世絵や刀剣などが里帰りして展示される、なんて情報を仕入れたら、どうしても足を運びたくなるわけで。
でも、世はコロナ禍。
化学薬品に過剰なアレルギーを持つ自分は、ワクチンを接種していない。
……というか、打てないのだ。
持病の薬さえ飲めなくなってしまってから長い。
当然出かける先は慎重に選び、以前と比べると極端にその回数も減った。
だが観たい、せっかく本物が里帰り展示されているのだから観たい。
しかも個人所蔵の刀まで展示されるという……更に観たい気持ちは募る。
スケジュールと体調を照らし合わせながら日程を探る。
丁度お彼岸で、墓参の為に故郷に帰る予定だった。
そのついでに、足を延ばしてみる事にした。

自宅から故郷までは愛車と一緒に往路260kmをばびゅ~ん🚗💨
その後、高速バスに乗り換え🚌バスタ新宿へ。
それから大江戸線に乗り換え、六本木へ。
その行程を考えて出発するため、起床は4:00amにした。
気分は遠足の日の子供と同じ、アラームが鳴る前にパチッと目覚める。
日課の四方鎮めの盛塩を換え、身支度を整えて洗濯を済ませ、荷物を再確認して車に積み込む。
やけに身体が動く、2日前に体調を崩していたのが不思議なほど。
お陰で出掛ける準備が早く済んだので、予定より早めに出発出来た。

高速260kmは順調だった。
連休中なのでいつもより自家用車が多めなのは否めないが、工事区間も少なめで、事故渋滞も起こらなかったから予定より早く故郷に着くだろう、乗車する予定の高速バスも1本早いのに乗れるかもしれない、と思っていた。

処が、故郷のインター出口1km手前から、出口渋滞が起こっていた。
出口1km手前からインター出口のETC手前まで、1時間。
1本早いどころか、予定していたバスに乗れるかどうかになってきた。
そしてETCをくぐる手前から、その先の信号を含んだ渋滞が更に20分。
完全に、乗車予定のバスを見送ることになった。

何とかETCを抜け、インター真ん前にある宿泊予定のホテルに愛車を預け、予定より1本遅れたバスにギリ間に合って飛び乗る。
座席に着いて経路と所要時間を確認、余裕をもって予定を組んでいたが、入場時間には到着できるだろう、という感じだった。
……バスが20分遅れて到着、万事休すか?
だが諦めない!地上3階から地下6階までダッシュ💨 
気圧差に弱い気管支が悲鳴を上げる、でも入場時間ギリ間に合う最後の地下鉄への乗り換えに成功!……車内で周りの方が引く程ゼーゼーしたけれど。

六本木駅到着、あとは会場まで黙々と歩け時間に合うはず。
事前に確認してあったので、疑いもなく六本木ヒルズ方面の出口を目指す。
改札を出て、地上まであと一息のところまで来て、現れた案内板の前で立ち尽くす……「サントリー美術館」方面への逆方向の矢印……。

間違えた…!!
何故そう思ったのかわからないけれど、咄嗟に「こっちじゃない!」と思い、近くにいた駅員さんに逆方向への経路を伺う。
手短だけどとても分かりやすく教えて頂き「気を付けて」と送り出される。
……走れば間に合う!大丈夫、走れば間に合う!!
気管支はすでに悲鳴を通り越し、無意識に胸元を掴みながら走っていた。

入場時間6分前に到着……取り敢えずトイレによる。
潰れそうな肺のあたりを抑えて、深呼吸を繰り返す。
……間に合った、良かった、これで観られる。
入場時間2分前、入り口付近で絶望感を味わう……「此処じゃない!」

行先は『森アーツセンターギャラリー』……六本木ヒルズ森タワーだ!
何故駅で「こっちじゃない!」と思ったのか、まったく分からない。
(今回の遠征前に『サントリー美術館』で開催されていた展示会を2回見送っているのでそうゆう反応してしまったのだろう、と帰路に思い返した)
分かっているのは、入場時間には絶対に間に合わない、という事実。
それでも踵を返して来た道を辿る、しかし動転しているので戻る途中で地上に出てしまう……既に自分が何処に居るのかも分からない。

ベビーカーを押した若いご夫婦に道を尋ねる。
ご自身のスマホで地図アプリを広げ、駅の位置や大通りなどとても丁寧に教えて頂けた。
礼を言って速足で駅を目指す、大通りも見えてきた。
地図アプリのナビを観る、……先ほどのご夫婦に教えられたのと全然違う道を示している。
「此方の方が近道なのかもしれない」と、更に速度を上げて歩く。
どんどん大股になっているのがわかる、既に入場時間から15分過ぎていた。

大通りまで出ると、六本木ヒルズが視界に入る。
今思えば、手元のナビアプリより、ビルを目指して歩けばよかったのだが、ここまで失態に次ぐ失態だったので、アプリに頼ってしまったのだろう。
ご想像の通り、六本木ヒルズがどんどん遠ざかっていく……。

「こっちじゃない……と思う」判断も消極的だ。
可愛らしく着飾ったお嬢さんふたりに道を尋ねる。
先ほどのご夫婦同様、地図アプリを広げて丁寧に案内て頂けた。
「10分くらいで着くと思いますから」と、手を振って見送って下さった。
既に入場時間を30分近く過ぎていた。

ナビも必要ないくらい丁寧に伺った通り、人波を縫うように大股で歩く。
既に入場時間を40分過ぎている、到着しても入場できないかもしれない。
でも着かなければ、入れるか入れないかも分からない。
会場入り口までのエレベーターを待つ時間が永遠に感じられる。
気管支がヒューヒュー音を立てているのを感じる。
入り口の階段を上り、入場列に並ぶ。
係りの方を見つけたので、道に迷って遅れた旨を話す。
マスク越しにもわかる笑顔で「大丈夫ですよ、こちらにどうぞ」と列を離れて案内され、滑り込むように会場へのエレベーターに乗せられる。
一気に50階以上昇っていく箱の中で、只管肺の痛みと闘っていた。

連休中、それもあと5日で閉幕なので、会場は大盛況だった。
観たかった浮世絵が、刀剣が、時代ごとに並べられていた。
あぁ…本物だ、と、幾度となく印刷物やネットなどで観たモノの直の響きを感じながら会場を歩く。
会場内で流れていたビデオも最前列に座って鑑賞できた。
逢いたくて逢いたくて、この機会を逃したら二度と会えないかもしれない個人所蔵の刀剣にも逢えた……ありとあらゆる方向から写真を撮った。
かなりゆっくり、時間をかけて眺め歩いたけれど、出口に着いてしまった。
観たいモノは観たよね?撮りたいモノは撮ったよね?……何度も確認する。
この先海外に出向くことはほぼ絶望的なので、この展示物たちと相見えるのはこれで最後かもしれない。
出口の手前で、何度も頷いて、心の中で展示物たちに手を振った。
逢えて嬉しかったよ……、諦めないで良かった、有難うね、と。


この話を受講生やサロンのメンバーに話したら、こんな言葉を頂いた。
「まるで人生みたいですね…」
そうだね、と答えた。

今回、立ち塞がったモノがあるとすれば、それは「時間」だ、と思う。
順調な旅だったのに渋滞に巻き込まれ、出口を目の前に1時間20分がただただ過ぎていくのに抗えなかったこと、とか。
ギリ間に合って乗った高速バスが20分遅れて到着したこと、とか。
六本木駅の周囲を40分以上迷い歩いたこと、とか。
これを『不運』だとしたら、そしてこの事実をそう受け止めていたら、腐って凹むばかりの遠征だっただろう、と思う。

だが、この一日を過ごして自分の記憶に残ったモノは。

手短だけどとても分かりやすく経路を教えて頂き「気を付けて」と送り出してくださった駅員さん。
突然お声掛けしたにも関わらず、地図アプリを開いて丁寧に案内してくださった、若いご夫婦と、可愛いお嬢さんたち。
遅れてきて焦りまくっている自分にマスク越しでも分かる笑顔で迅速に対応してくださった、男性スタッフの方。
素晴らしい浮世絵たち、刀剣たち、様々な工芸品たち。
そして、ゆったり鑑賞したのに、予定より2本早い高速バスで戻ることができたので、その分ホテルでゆったりと休めたこと。
すべて良き思い出ばかり。

こんな風に物事をとらえられるようになれたのも、【在り方】を身につけたから。
でなければ、不満ばかりが膨らんで、出来事を楽しめなかっただろうと思う。
鍛え、創り上げてきた自分の内側を感じ、この経験を「事実」として平らかな気持ちで話せることに歓びを覚えた。

まさに人生は山あり谷あり、良きことも悪しきことも半々に訪れる。
それをどう捉えるかで、受け取る学びが変わる。

全ては受け取る器を鍛える為の修行。
進めば訪れる学びと向き合い、歩み、磨き上げていく為の旅。

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