岡村 直央 Side Memories読後メモ


 読んで思ったことのメモ。考察ではない。
 内容に触れるのでネタバレ配慮もしていない。


・第1話「始まりのベル」
 電話と書かずにベル。羊の首につけるベルとかけてる?ベルは居場所を知らせるため。直央くんからの支援要請だからか。頼れる大人としてPに電話をかけてくるシーンでハッとしたけど、彼はまだ11歳。

・第2話「母への想い」
 おそらく普段はこぼさないお母さんへの寂しさを、Pには話してくれる。信頼度が窺える。

・第3話「無邪気を前に」
 あまり話したことがないから、同年代の子は苦手。大人とは仕事でたくさん話す。頑張れば褒めてくれる大人(長い目が多少ある)と違って、子どもはすぐに反応や結果を求めるから?

・第4話「指名」
 お母さんとの時間がほしいから、もっとすごいアイドルになる、という直央くんの悲壮をきっと誰も知らない。Pさえも。キャラに全部吐かせて弱みを曝け出させてプレイヤーに優越感を味わせた上で解決、を選ばないモバ。もどかしいけど丁寧で現実味がある。そんな簡単に何でも話せない。

・第6話「冷たい病室」
 第3話で子どもに囲まれ逃げ出した時も、Pが助けようと思えばできたはず。だけどその時は手や口を出さない。今回「代役の人間が元キャストに挨拶」という「できる限りやった方がいいこと(避けられないこと)」だけど相手は好意的じゃなくてちゃんと挨拶できるか不安、という直央に対して、Pは手を握る。大雑把な激励じゃないのがいい。直央の恐れと、決して皆無じゃない「でも頑張らなきゃ」という気持ちにそっと寄り添って応援している。

・第8話「勇気を出して」
 矢野さんの言う「直央くんはかっこいいんです」をここで強く感じた。
 元キャストの男児が怒って、そのまま部屋を出る場合もあり得るシチュエーション。直央くんが選んだのは、頑張ってきたお芝居を見てもらうこと。言葉で伝えられなくても、お芝居を見てもらえたら自分の全力は見てもらえると思ったのかも。
 男児の言った「否定されたくないってか?」という理由では多分ない。だけどもう言葉であれこれ弁明はしないと決めてるから否定を返さず、Pに台本を持っていてほしい(覚えているから)と頼む。かっこいい。
 直央くんが「お芝居だけはずっと頑張ってきたこと」と言ったのは、大人からの評価で自信を持ってるからではなさそう。元キャストの男児に「天才子役・岡村直央が代役っていうから期待してたのにな」と言われた時も「天才子役って…ボクのこと…ですか?」と返している。直央くんが自分で、頑張ってると感じる何かをお芝居に見出してるのでは?褒められたいからというよりは、しっかり最善を尽くしたいから頑張る。精神がプロ。自信がないのも、もしやそこに起因してる? もっとよくしたいから満足してないとか。

・第9話「2人の約束」
 元キャストの男児を単なる悪者にしないのが好き。演技指導も、彼が一生懸命本番を目指してやってきたから言えること。直央くんの本気(>「……台本、もう覚えたんだ」)を見たから、彼も彼の矜持で向き合ってる。プロ同士の会話。
 「頑張れよ」じゃなく「代役、頼んだぜ」が言えるのは世界で彼しかいない。同じ言葉を大人に言われることはあっても、こもってる感情が違う。優劣の話じゃなく男児の描き方が好きって話。

・第10話「岡村 直央」
 最終話にフルネームが来る演出だいすき。
 全力で元キャストの男児にお芝居を見せたけど、指導もあったしまだ課題があるなって反省モードになってそうな直央くん。勇気も実力も努力も見せて、でもまだ「ボクってアイドルなのに、取り柄がないのかも。アハハ…」と落ち込んでいる。そこにきちんと「自信を持って」(だけでなく根拠も述べて)「直央の演技力は、直央自身の力だよ」と返すP。
 先日囲まれた時に逃げてしまった小児科の子たちにも尻込みするけど、Pが「そっと直央の背中に触れる」ことで勇気を増加させて動ける。直央くんには勇気がないんじゃなく、足を動かすまでに「ちゃんと存在する勇気」を使おうか迷ってしまうだけなんじゃないかと思う。だから心配ないって言ってるわけじゃなく、直央くんは勇気のない意気地なしではないという話。


 直央くんがもふもふえん以外の同業者(いわばライバル)と関わるお話。なぜか、もふになる前の直央くんにも想像がはたらいてとてもよかった。
 もふがいなくてもいいんじゃなくて、多分サイメモで直央くんが勇気を出せたのはもふがあって、直央くんのそばに大人としてのプロデューサーがいたからじゃないかと思う。もふの名前が出ないのに、直央くんを支えているものの存在を窺い知れるような物語だった。読んでよかった。

おわり