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新クトゥルフ神話TRPG ~Nyarlathotep is Home Alone.~

1、はじめに
 これは、矢鹿(やしか)@TRPG&ボドゲ勢 ボドゲ製作中(@rusty_keeper)さんの呼びかけた #同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ #ムビシナ の企画用シナリオである。今回テーマとなったのは『Home Alone』である。

 このシナリオは『新クトゥルフ神話TRPG』基本ルールブックに対応しており、推奨サプリメントは特にない。

 探索者2人向けにデザインされているが、1人でもプレイは可能である。2人でプレイする場合、あらかじめ知り合い以上の関係が望ましい。プレイ時間は探索者の作成時間を含まずに3時間前後だろう。このシナリオは戦闘シーンは少ないが、ギミックが中心であり、比較的な探索者の体力は高いほうが良いだろう。

 舞台はアメリカ。季節は冬。クリスマスシーズンとする。シナリオの導入場所は町から少し離れた小さな家屋とする。

 シナリオの都合上、探索者は泥棒であることを強く推奨する。もちろん、本職を別に持ちながら、盗みを行っていることにしても問題ない。興味ポイントで泥棒が所持している技能を会得しているとシナリオの攻略が優位になる。とんでもない悪党で挑むのもよし、義賊として人々を助けている探索者でも構わないとする。もし、泥棒を生業としている継続探索者で臨んでもいいだろう。そして、それはソコソコ名が知られていることも前提として伝えておく。

 シナリオの演出上として、『PCが現状、欲しがっているモノ』をPL より、KP に伝えてもらう必要がある。(スリルを求めている等、感情のみで動くのもOK!)
※無論欲しいモノがコミカルなものでも物騒なものでも支障はないが、シナリオの進行を著しく妨げる可能性が高い為、KP の負担は大きくなるだろう。しかし、面白ければヨシとする。そこはKPの手腕と判断に任せる形となる。

 本シナリオ執筆において筆者は1990年代のアメリカ、シカゴ郊外を想定して作成しているが、クリスマスシーズンという概念さえあれば時代背景は戦時中を除けば、1920年でも現代でも問題ないとする。改変等大歓迎である。
 たとえば日本を舞台とする場合、家族でケーキとプレゼントでお祝いする日として定着したのは、1960年頃である。そして80年代以降になると、恋人同士で過ごすロマンチックな日へと変わったと言われている。このような事情や歴史を調べたうえで行った方が、リアリティが増すと考える。

2、キーパー向け情報

このシナリオで遭遇する小さな男の子の正体はクトゥルフ神話界のトリックスターであるナイアルラトホテップだ。

 ナイアルラトホテップは、クリスマスシーズンで浮かれる人々に気まぐれながら興味を持つ。そこで人の姿を借り、サンタクロースやクリスマスプレゼントなどの人間の文化を知り、とある映画から着想を受け、面白いことをしようと考える。

 彼は都市郊外だが、豪邸が軒並み並んでいる町に目を付け、一つの建物を自分のものにした。そして、次は遊び相手を探しているところである。

3、プレイヤー向け情報

 クリスマスシーズンに入って数日が経ち、人々はクリスマス休暇に備えて旅行の計画やパーティーの準備を支度し始めている頃、探索者は都会から少し離れた小さなアジトでくつろいでいる。何をしているかは探索者の興味や嗜好に任せるとする。
 その時、「ガコン」というアジトのポストに聞きなれない音が響く。探索者が見に行くと、見慣れない妙なクリスマスカードが届いていた。
 カードには、とある豪邸にある本を盗んできてほしい。君たちが欲しがっているアイテムもそこにはある。これは君たちに対する挑戦状でもあると記されていた。”盗めるものなら盗んでみな……”
 アジトの住所がバレた?依頼という名の挑戦状?と妄想を膨ませながら、探索者は行動に移すことになるだろう。
 世にも不気味なクリスマスの泥棒劇が始まる。

4、主なNPC

ナル・トリックスター(8歳)、顔が見えず、神出鬼没な男の子?

 豪邸に1人でいる男の子。SIZ25、DEX200+、APP90。

 正体は小さな男の子を姿に化けているナイアルラトホテップである。探索者を物で釣り、自分が想像した異空間の遊び相手を探している。明確な目的はなく、彼自身も純粋にクリスマスを楽しもうとする気まぐれからである。しかし、根本的にクリスマスが何であるかは理解していない。

フーリー(89歳)、トリックスター家の隣に住む温和な老人

 シャベルで淡々と除雪作業を行っている。SIZ60、APP50。ボケ始めている節があり、探索者を息子と勘違いして家に招き入れる。長いことおしゃべりをしていないのか、聞いたことに対して何でも答えてしまう。

5、採用ギミック

 このシナリオでは、ダイスによって罠の種類が変わるギミックを導入している。これにより探索者がキーパーが探索者に理不尽な状況を与えるのではなく、探索者自らがダイスの女神によって、首を絞めていく状況ができていく。

例として、扉関係のドアノブに1D6ダイスによって結果が分かれる罠があるとする。探索者は触れる前に道具や技能を駆使して突破する場合を除き、触れた場合、以下の罠が発動されるギミックを用意している。

1、何も起きない
2、熱されたドアノブ、1D3のダメージ判定
3、電気が流れるドアノブ、1D6のダメージ判定
4、ヌメッとした感触が残るドアノブ、成功1/失敗1D3の正気度消失
5、ドアノブに噛まれる、

1D3のダメージ判定+成功1/失敗1D3の正気度消失
6、何も起きない

 このシナリオはキーパーのさじ加減で、探索者の死亡率や狂気の進行をかなり変動してもよい。ここで記されている罠は、あくまで目安であり、そのまま導入してもいいし、キーパーの嗜好と探索者の嗜好をすり合わせて、どのくらいの危険度にするか調整することも問題ないとする。

6、シナリオの導入

 探索者は各々アジトでくつろいでいる。盗んだ宝石や絵画を鑑賞していたり、次の計画を準備していたりと自由に行動している。ある程度時間が過ぎた頃、郵便受けであるポストに何かが入れられた音が響く。探索者が2人の場合、どちらかが見に行くか決めることを相談するだろう。
 ポストを覗くと1枚のクリスマスカードが入っていた。配達人が間違えたのかは分からないが、クリスマスカードが置かれている。
 探索者がクリスマスカードを調べる仕草を行った場合、以下の情報を描写する。

それは差出人不明のクリスマスカード

それは、まるで子どもが
書いたようなものだった……

内容はとある本を盗んできてほしい

さらに探索者の名前や素性なども書かれていることに気づくだろう……

アジトの住所も名前も素性もバレている
そのことに嫌悪感と恐怖を抱くだろう

ご丁寧に盗み先の住所も記されていたが、肝心の盗んでほしい本のタイトルは文字がかすれていて読めない……

しかし、そのクリスマスカードを
じっくり見ていた探索者は、
さらに身震いすることだろう……

クリスマスカードの絵が突然動き出し、
燃えるトナカイ、爆発する雪だるま、
赤から黒く染まるサンタクロースに
変化していく……

そして、“君が望んでいるものもあるよ”と文字が浮かび上がり、宙を舞う

他にも探索者を煽るような言葉や
理解しがたい謎の言語が
文字となっては浮かび、
直接探索者の脳内へと響かせる……

 このクリスマスカードを調べたまたは見てしまった探索者は成功1/失敗1D4の正気度を失う。そのクリスマスカードを他の探索者に見せると同じ現象が再び起きて正気度チェックを行ってもらう。
 それを間近に見ていた探索者も再度正気度チェックを行うこととする。その場合、成功0/失敗1とする。

 探索者はこの不可思議な現象に戸惑うことがあるかもしれない。しかし、行動を移さないという選択肢もとれる。ここで行う探索者の行動は自由にキーパーが導いてもよいとする。

Call Winnetka Illinois」。

 〈コンピュータ〉等の技能を用いれば、盗み先の間取り情報や近隣住民がクリスマス休暇で出払っていることもわかってよいとする。

 間取りの情報として、赤レンガの邸宅であり、4つの寝室や設備の整ったキッチンのほか、暖炉、サンルーム、窓のついた屋根裏の寝室、独立したガレージを備え、土地の広さは約600坪であることがわかる。

 泥棒に必要な道具はアジト内から持ち出してよい。しかし、常識の範囲内で行うことを推奨する。持っていく荷物を車など用いて運び出すことは可能だが、豪邸に侵入する場合、手で持ち込めるまたはポケット、カバンなどにしまえる量で留めておくことに注意しなければならない。
 たとえば、火炎放射器やショットガンなど持ち込んでも構わないが、かさばることを重々に伝えておかなければならない。

7、とある豪邸の周辺

 豪邸付近に昼頃辿り着いた探索者は、特に怪しい雰囲気を感じることもなく、周辺を探索することが可能である。どこの住宅も人の出入りはなく、閑静なものである。

 目的の豪邸はすぐに見つかり、中に人の気配は感じられない。表札を見ると、トリックスター家と記されている。探索者が〈目星〉等の技能を行った場合、庭には不格好な雪だるまのみ確認できる以外ない。家に侵入しようとと門から足を踏み入れて進むと視界が暗くなり、一瞬で門の前へと戻されてしまう。その不気味な現象を経験した探索者は成功0/失敗1の正気度を失う。何度同じ行為を試してもその繰り返しとなる。

 そのほか周囲を見渡すと、雪かきをしている老人の姿1人のみである。老人はこちらに気付くと、笑顔で挨拶をし、『おお~息子よ、帰ってきてくれたんだね』と探索者の1人に抱き付く。話を聞くと、ここ数年、老人の家族は帰省していないことが分かる。老人に〈心理学〉を振っても嘘をついている様子はない。何度誤解を解こうとしても、探索者を息子と勘違いしており、ボケているということも理解できる。老人は探索者に抱き付いたまま、離れようとせず、そのまま豪邸への侵入は困難になる。老人を振りほどこうとSTR対抗をしてもいいが、自動で失敗となる。

 老人は、探索者をなかば強制的に目的の豪邸の隣にある家に招き、コーヒーなどを振舞ってくれる。この状況に探索者は困りながらも、拠点として利用できるだろう。老人も探索者が欲しい情報に対し、すべて受け答えてくれる。例として、以下の情報を載せておく。そのほか、キーパーのアドリブ力を試す形となる。

・隣の家は最近、越してきたんだが、大人の出入りを見たことがない

・夜になると、明るくなったり、変な音が響くこともある

・小さな子どもらしきものが庭で雪だるまを作っていた

・ここらの家はクリスマスシーズンになると、誰もいなくなってしまい、寂しい

・道具が必要なら、納屋に置いてあるから自由に持ってていい

・儂は夜7時くらいには寝るから部屋などで自由にしてもらって構わない

 探索者は老人の話を一通り聞くと自由に行動することが可能となる。しかし、外へ行こうとすると老人は『もう行ってしまうのかい』と寂しそうに声をかけてくる。『もう少しいてくれんかの~』の老人の頼みを聞くかは探索者の判断に任せるが、その場合、今後老人の家に入ることはできなくなることを伝える。

 探索者が断らなかった場合、夜7時頃から目的への住宅の侵入を試みることとなる。昼頃に足を踏み入れた場合、門の入り口に戻される現象は起きないが、人の気配を感じなかった豪邸はすべての部屋に電気がついており、リビングに置いてあるクリスマスツリーの電飾は輝きを発し、ピアノなどの楽器の音がかすかに聞こえてくる。その光景に探索者は成功0/失敗1の正気度ポイントを失う。

 探索者は事前に調べていた場合、正面の玄関か、勝手口のどちらから侵入することを選択できる。玄関を選択すると以下の描写になる。

 玄関の扉の前に立つと汚いペンキで文字が描かれていることが理解できる。〈知識〉など、その他の技能でハード成功すると、文字を解読することができる。文字の意味は、“門のところに安息はない”と書かれている。

 探索者がドアノブに手をかけた場合、1D6の判定を行ってもらう。その結果を並べておく。また、この罠はキーパーの任意でドアノブをキーワードに自由に発動して構わないとする。

1、何も起きない
2、熱されたドアノブ、1D3のダメージ判定
3、電気が流れるドアノブ、1D6のダメージ判定
4、ヌメッとした感触が残るドアノブ、成功1/失敗1D3の正気度消失
5、ドアノブに噛まれる、

1D3のダメージ判定+成功1/失敗1D3の正気度消失
6、何も起きない

 勝手口を選んだ場合、カギがかかっており、〈鍵開け〉の技能で成功すれば侵入することができる。その場合、DEXロールを行ってもらう。失敗した場合、目の前にある火炎放射器があなたの衣服を燃やすことになるだろう。〈幸運〉、その他の技能で難を逃れようと心掛けた場合、成功すればダメージ判定はなしとする。

 窓からの侵入や〈跳躍〉の技能などにより、2階からの侵入も問題ないとする。窓から侵入する場合、選択できる部屋はリビングか、ダイニングまたはキッチンの3つからしか選べない。

 〈跳躍〉などの技能で2階から侵入した場合、子供部屋2の中へと入る。

 そのほか、探索者が雪だるまを調べたいといった場合、〈聞き耳〉の判定を行う。成功した場合、チクタクチクタクと雪だるまの中から音が聞こえる。何も考えず、探索者が手を突っ込むまたは破壊をした場合、中にある爆弾に衝撃を加えたことにより、爆発が起きる。その時の探索者は防寒具による装甲値を引いて、3D6のダメージ判定を行う。黒く変色し、飛び散った雪だるまの跡地に屋根裏部屋のカギの一部が見つかる。

8、罠だらけの豪邸

 豪邸の1階に足を踏み入れた探索者は、部屋の構造を確認することになる。一階には、玄関ホール、リビング、書斎、ダイニング、キッチン、ゲストルームがある。玄関ホールからダイニング、キッチンまでは仕切りがなく、開放的なつくりとなっている。ゲストルーム、リビング、書斎にはしっかりと装飾されたドアがある。

8-1、玄関ホール

 玄関ホールには完美な装飾が施されており、裕福な家であることを実感するだろう。また、本来であれば、2階へと続く階段がないことにも気付く。ここで探索者には〈目星〉または〈幸運〉を振る。成功すると、2階の手すりからこちらを覗き込む少年のような姿を見かける。声をかけようとかけまいがその後立ち去ってしまう。失敗した場合、足元にある玩具の車や機関車を踏み、1のダメージを受ける。それ以外は怪しいものは出てこない。

8-2、リビングルーム

 リビングルームに足を踏み入れると、豪華なクリスマスツリーに、グランドピアノなどが置いてある。他にも等身大の大人マネキンやぬいぐるみ、玩具が乱雑に配置されている。暖炉もあり、炎が煌めいている様子も確認できる。

 クリスマスツリーの下には、子どもに送るプレゼントが山積みされており、開けられた様子はない。開けるとぬいぐるみの手足の一部が入っている。探索者がぬいぐるみを観察すると、一部の手足が切られていることに気付く。

 グランドピアノには、自動演奏システムという機能が取り付けられており、誰もいなくても演奏が流れる仕組みに気付くだろう。

 そのほか、辺りを調べたところで音楽が切り替わる。探索者は〈幸運〉を振り、1人でも失敗した場合、不気味な音とともに、照明は薄暗く、マネキンは動き出し、ぬいぐるみや玩具もこちらに襲い掛かってくるところで止まる。その理解できない一瞬の恐怖に探索者は成功1/失敗1D3の正気度を失う。この現象は一度のみで何度往復しても起きることはないが、キーパーはそれを探索者に伝える必要はない。

8-3、書斎

 書斎には罠は置かれていない。書斎を調べると、かなりの蔵書が本棚に並んでおり、探すのに時間がかかることだろう。〈図書館〉の技能をハード成功した場合、数分もかからず、とある本棚の棚から1冊の本だけ抜かれていることに気付いてもよい。レギュラー成功は1時間とする。また失敗したとしても、数時間で見つけたことにしてよい。その場合、探索者は何冊か本を調べているうちに紙で指を切ってしまい、1D3のダメージ判定を行ってもらうことにする。致命的失敗の場合、本棚がすべて探索者へと意図的に倒れてしまい、本を探すことが困難になる描写を表現する。

8-4、ダイニング

 ダイニングに訪れると、特に何もない。長いテーブルには、煌びやかな食器類や美しい花などが飾られている。不可解なものといえば、この豪華な装いに対し、テーブルの真ん中に置かれている謎のボタンのみである。

 探索者がボタンを調べた場合、導線が外へと繋がっており、その先には雪だるまであることに気付く。ボタンを押した場合、家が揺らぐほどの爆発音が響く。それと同時に、先ほどまでなかった2階へ続く階段が出現する。

8-5、ゲストルーム

 ゲストルームは薄暗く、照明ではなく、燭台の上の蝋燭のみで部屋を照らしている。中に入ると肌寒さを感じることだろう。さらに、探索者はそれだけの光では、この部屋を調べることはできない。

 壁をさすり、証明である電気をつけた場合、蠢く影が探索者の数だけ姿を現し、探索者に襲い掛かってくる。

蠢く影、耐久値8 攻撃はかぎ爪35%のみ、ダメージ判定は1D3

 倒した場合、ゲストルームから肌寒さは消える。しかし、〈目星〉を行ってもここで得られる情報はない。

8-6、キッチン

 キッチンに近づくにつれ、何かをたたく音が聞こえてくる。〈聞き耳〉等の技能で成功すれば、音以外に血の匂いもすることだろう。また、勝手口から侵入した場合、〈聞き耳〉等の技能関係なく、焦げた臭いと血の匂いが混じった腐臭を嗅いでしまい、成功1/失敗1D4の正気度を失うこととする。

 見渡してもキッチンに人の姿はない。しかし、包丁は宙に浮いており、ドスンドスンと叩いている。さらに近付くと、声が聞こえてくる。『忙しい、忙しい、手が足りない、手が足りない』とボヤく声が聞こえる。声の主は手を欲しがっている。〈目星〉等の技能に成功すると包丁を叩いているところにカギの一部のようなものが光り輝いていることがわかる。

 探索者は何かしらの行動を取らない限り、カギのようなものは取れないことには気付くだろう。行動自体は自由とする。キーパーは可能だと思えば、だいたいことに許可しても問題ないとする。探索者が〈アイデア〉で成功した場合、ぬいぐるみでもいいのではないかと思いつく。しかし、探索者が”手を伸ばす”または”手を貸しましょうか”と手に関する話題を話した場合、包丁しか見えない何かが探索者の手をつかみ、一言つぶやく。

『あ~ありがとう、ちょうど手が欲しかったんだよ……』

 つかまれた探索者は包丁が振り下ろされる瞬間、1回だけ行動を取ることができる。何かしらの技能でハードまたはSTRロールをハード成功すれば、助かるかもしれない。プッシュや幸運の消費も問題ないが併用はできないとする。失敗し、他の探索者の助けも無い場合、片腕を失うことになるだろう。1D8のダメージ判定、その後止血等の行動を行わない場合、行動するたびに1D2のダメージが追加されていく。

 声に対して、行動を起こした後は、キッチンは静まりかえり、探索者はカギのようなものを手に入れることができるだろう。そして、ゆっくりとキッチンを調べることも可能になる。

 キッチン自体は匂いを除けば、怪しいものは包丁の音で聞こえなかったのかグツグツと煮込む音が響く鍋だけである。それ以外のキッチン用品は常備されており、持ち出すことも可能である。残りは冷蔵庫やオーブンのみ調べることが可能である。

 探索者が鍋を調べる場合、臭いの原因はこれであることに気付くだろう。鍋の蓋を開けて観察すると、グツグツとした赤黒いスープがある。スプーンなどで底にあるものを調べると骨のようなものが出てくる。この気味が悪いスープを調べた探索者は成功0/失敗1D3の正気度を失う。さらに、これを別の探索者に食べさせることも可能であるが、その場合、食べた本人は血と肉が混ざり合った汚物の味に成功1/失敗1D4の正気度を失う。ついでに友好度も下がることだろう。

 探索者が冷蔵庫を調べた場合、張り紙があることに気付く。

 「この冷蔵庫を開けるのは1人3回まで、それ以上は開けてはいけません」

 探索者が冷蔵庫を開ける場合、1D3のダイスを振る。

1、飲みかけのコーラが1缶入っている

2、鎮痛剤や包帯などの回復道具が入っている

3、探索者を凝視する生魚がこちらを見つめてくる、正気度1消失

 そして、3回以上開けようとする場合、くちゃくちゃと音が聞こえるようになる。それでも開けた場合、生魚を食い散らかすネズミが飛び出て探索者に襲い掛かるだろう。何かしらの技能で対抗すればネズミに噛まれることない。しかし、失敗した場合、足に噛みつき、1D3のダメージを負うことになる。

 探索者がオーブンを調べた場合、オーブンを開けると、焼け焦げてしまったスポンジケーキが見える。ここで〈目星〉に成功した場合、その焼き焦げてしまったスポンジケーキはカサカサと音をたてて、分裂することだろう。そして、探索者の顔へと翅を伸ばし、一斉に襲い掛かってくることだろう。その光景を見た探索者は成功1/失敗1D6の正気度を失う。

 キッチンの情報は以上のみである。

9、子ども部屋の脅威

 2階へ移動すると、子ども部屋が3つ、サニタリーが2つ、屋根裏部屋へ続く部屋、開放的なベッドルームがある。階段を登りきると紙が置いてあることに気付く。その紙には「カギは4つある」とのみ記されている。さらに、探索者が考え込んで足を止めたり、静かにしていると時折チクタクとdこかから音が響いていることに気付くだろう。

9-1、子ども部屋1

 子ども部屋1には、可愛らしい女の子がいそうなピンクや白を中心とした部屋でベッドが2つ置いてある。ベッドの下を覗き込むと、使いまわされたであろう注射器の残骸を見つける。それ以外は温かい暖炉を除けば特にない。

9-2、子ども部屋2

 子ども部屋2は、まるで少年と青年と間くらいの少年が生活してそうな空間である。〈跳躍〉で窓から忍び込んだ場合、そこに散乱していたクリスマスの飾りを踏み、1D3のダメージを受ける。部屋を見回すと空の水槽が複数デスクの上に置いてあることに気付く。さらにそこには乾燥したコオロギなどがばら撒かれていた。他にはベッドと食いかけのピザやポップコーンが散乱していた。

 探索者がベッドの中や下を覗き込んだ場合、複数のタランチュラが辺りを自由に動き回っている姿を確認する。成功0/失敗1D3の正気度を失う。

 タランチュラが探索者に気付くと、一斉に探索者の体にまとわりつき、離れようとしないだろう。衣服を脱いで燃やすか、または何かしらの技能で取り除かない場合、くっついたままである。

9-3、子ども部屋3

 子ども部屋3は、ベッドやデスクといった中の構造は子ども部屋2と同じ造りであるが少しだけ広い。しかし、その広さを無駄にするような木でできた大きなトナカイの玩具が独りでに揺れながら動いている。さらに部屋に入って調べようとした時、〈聞き耳〉に成功すると油のような匂いが鼻に不快感を与えてくる。それでも探索者がデスクやベッドを調べた場合、デスクに置いてある目覚まし時計が『侵入者発見、侵入者発見』と鳴り響き、それを合図に火のついたマッチが木でできたトナカイに引火する。辺りは火の海に包まれ、探索者は1D6のダメージを受けることになる。部屋を消化しない限り、調査することは不可能な状況になる。しかし、その部屋以外に火が広がる様子はない。

 消火器や水などを用いて消火活動を行うとトナカイが配置されていた場所にカギのようなものが焦げながらも鈍い輝きを放っている。

9-4、サニタリー1

 サニタリー1は、洗面所やトイレのみである。なぜか放置された消火器が無造作に置かれている以外が特に何もないが、洗面所の鏡が割られてたり、1階のような豪華さや美しさは感じることはできないだろう。

9-5、サニタリー2

 サニタリー2は、1より広く、バスタブが設置されている。バスタブには黒い水がいっぱいになっている。探索者はバスタブにある栓を抜いたとしても、詰まっているのか黒い水が流れない。

 探索者が手を突っ込んだ場合、何かに引っ張られるように黒い水の中に引きずり込まれる。黒い水の中はバスタブの深さを超えており、闇の中であることに気付く。探索者の足元には無数の手が伸びており、さらに引きずりこもうとしていることが確認できる。その光景に探索者は成功1/失敗1D4の正気度を失う。

 この場合、探索者には3ラウンドの猶予が与えられ、〈水泳〉、〈サバイバル〉、〈跳躍〉などの技能で成功すれば助かる。すべて失敗した場合、闇の中で四肢の一部と引き換えに出してもよいと声をかけてくる。その時、探索者をつかんでいた手が一瞬怯むことだろう。その時〈幸運〉が成功すれば、無事生還となる。生還すると探索者の手には、カギのようなものを手に入れることができる。仮に交渉に応じた場合でも助かる。しかし、身体的に不利になることは否めない。

9-6、開放的なベッドルーム

 ベッドルームを観察すると、切り裂かれた枕やボロボロなシーツなどが無造作に転がっている。ベッドの周りには、割れた注射器に粉のようなものが散乱しており、敷かれているラグマットには血がこびりついていた。

 窓際のみ綺麗な観葉植物や装飾が施されており、外からはこの惨状が見えないようにレイアウトされていることに気付く。周りだけを取り繕い、真実を隠している部屋の光景に成功0/失敗1の正気度を失う。

 そのほか、ベッドの横にあるサイドテーブルには、この部屋の印象とは合わない綺麗な革製の手帳が置かれている。手帳をめくると、小さな子どもの拙い字でいろいろなことが書かれていたが乱雑で読めない。しかし、一つだけハッキリと読めた文章が『サンタさんに一度でもいいから会ってみたい』であった。

9-7、屋根裏部屋へ続く部屋

 屋根裏部屋へ続く部屋の扉にはドアノブがなく、代わりに何かを埋める穴を4つ確認することができる。カギのようなものを一つ一つ埋めていくと光り輝き、すべてを埋めるとガチャリと音が鳴り、扉が勝手に開いていく。

 中は階段が続いており、その先は真っ暗で確認することはできない。探索者が意を決して進んだ場合、扉は固く閉ざされ、中から再び開けることが困難になる。

10、屋根裏部屋の真実

 階段を上がり終えると、そこは屋根裏部屋である。あまり広くはない部屋で、道具類、鉛管、木材、釘、ネジなどが散らばっている。目の前には照明器具もないのに、小さなスポットライトが一点を照らしている。

 そこには、1人の少年が立っていた。少年はこちらに気付き、微笑みながら待ち構えていた。少年の手には書斎から持ち出されたであろう本を抱えていた。その本のタイトルは『初版グリム童話集』である。

 少年は、『ここまで来てくれてのはあなた方が初めてです。しかし、遅かったですね』と淡々と述べて目線を横にする。少年の目線を追うとガラクタで作り上げたであろう小さなクリスマスツリーと、白骨化している遺体がベッドに横たわっていた。

 少年は語る。クリスマスというものを体験してみようと、この家を選んだこと、一番豪華な家を選んだつもりが、一番悲惨であったそうだ。そこで家族を狂気に陥り、遊び殺したそうだ。

 しかし、1人だけ狂気に堕ちることなく、微笑みかけてきた少年がおり、この異空間で共に爆弾を作ったり、黒い水を生み出して仲良くしていたが、人間というものはこの悠久の時に耐えられる身体ではなかった。少年は最期に『一度でいいから、サンタさんに会いたい』と言った。

 そこで目の前にいる少年の姿を借りた何かが答えた。

『サンタさんはやって来るものではなく、喚ぶものさ』

 この異空間に多くの人を呼び、私たちが作成した遊びを体験してほしかった。少年の姿をした何かは十分に満足した笑顔で探索者に話しかける。

『あなた方の欲しいものは後日送りましょう、この世界からも帰しましょう。もし、失った四肢がありましたら、ついでにお戻しします。』

 そして、最後に少年は私の正体を知りたいですかと問いかける。探索者がいいえと答えた場合、ここで結末を迎える。

 もし、はいと答えた場合、触腕、鉤爪、手が自在に伸縮する無定形の肉の塊と咆哮する顔のない円錐形の頭部が現れる。これを見てしまった探索者は成功1D20/失敗1D100の正気度を失う。その光景を見た直後に気絶するだろう。以上でシナリオは終了とする。

11、結末

以下にエンディングの分岐と描写の結末を記す。

クリスマスカードの破棄または1回の調査で侵入を試みなかった場合

 探索者はいつも通りの日常を送ることだろう。あのクリスマスカード以来、おかしな手紙や配達物が届くことはなかった。アジトに置いてあるラジオのスイッチを気まぐれに入れると、ニュースが流れていた。昨日、クリスマスシーズンを狙った2人組の強盗犯の死体が見つかったらしい。1人は爆発で四肢が吹き飛んでおり、もう一人は焼死体として何もない空き地に転がっていたことが女性アナウンサーが口から淡々と語られる。探索者はゴミ箱に放棄したクリスマスカードに目を向けると捨てたはずのカードは消えていることが分かる。探索者は背筋が身震いしかけたが、もう関係のないことだと装い、平和に暮らしていくだろう。

エンディング1
触らぬ神に祟りなし
Don't ask for trouble.

1D3の正気度回復のみとする。

探索のみで依頼を放棄または、身の危険を感じて逃走した場合

 探索者は、あの豪邸での出来事が脳裏から離れることは決してないだろう。そして、後悔する。自分たちはこれから似たような体験が続くだろうと、未知という恐怖が身体を縛り上げている中でも、今日も明日も生きていかなければならない。しかし、探索者は気付いている。静寂に包まれると、身体から音が響くこと……

 探索者に安寧をもたらすことは今後あるのだろうか、一度深淵に足を入れた者は沈むしかないのだから……

エンディング2
傷口に塩
Rub salt into the wound.

1D6の正気度回復と1D6の幸運の回復、+4%のクトゥルフ神話技能を得る。

後遺症として、いつ爆発するかわからない爆弾を体内に組み込まれることを後々知る

あらゆるギミックを攻略し、傷を負いながらも屋根裏部屋まで辿り着けた場合

 探索者は、あの不思議な現象について理解は追いつかないことだろう。気が付くと、アジトの部屋で眠っていた。起き上がって周囲を見渡すと、綺麗にラッピングされたプレゼントの箱を見つける。

 さらに、その箱の上には小さなクリスマスカードが添えてあることに気付く。カードにはまるで小さな子どもが書いたような拙い文章で“あそんでくれてありがとう、プレゼントあげます!”とだけ記されていた。

 プレゼントの箱を開けると探索者が望んでいたものの他に小さな機械が入っていた。それはピコン、ピコンと定期的な音を発している。機械に関する技能で成功すると、発信機のようなものであると判断できる。

 拍子抜けする探索者の前にサイレンのような音が近付いていくことがわかるだろう。危機的な状況下であることに気付くと、部屋全体に聞こえる音量で“僕のプレゼント、気に入ってくれたかな?ハハハハハ!!”と不気味な笑い声が響くのであった。

エンディング3
一寸の光陰軽んずべからず
If you lose your time you cannot get money.
実質、トゥルーエンド

2D10の正気度回復と1D10の幸運の回復を行う。+4%のクトゥルフ神話技能を得る。

12、あとがき

 このような企画に参加するギリギリになってしまう自分が憎いと思いながら楽しく書かせていただきました。Home Aloneは、金曜ロードショーで初めて視聴した思い出があります。改めて見直すと、結構惨い罠が多く、クトゥルフ神話TRPGにある即死系トラップを彷彿とさせました。他にも魔〇の家などのフリーゲーム、ル〇ージマンション、バイ〇ハザードなどなど……

 今までプレイしてきたゲームの屋敷や邸宅のメリット、それは仕掛ける側の罠を回避する方法が限定される点がいい。逆に言えば、それ以上の発想が生まれにくい点もあるのだが、私は頭が固い人間でもあるので柔軟な発想ができる人が羨ましい。

 Home Aloneに出てくる子どもは発想がユニークである。殺されるかもしれない状況をコメディに表現できる作品はそうそうないだろう。私が知らないだけなのかもしれない。クトゥルフ神話TRPGにおいては、この発想や舞台設定等は本当に合うかもしれません。他の人も読んでみたいです。

 さらに、私はクトゥルフ神話TRPGにおいて、ニャルラトホテプは好きです。彼の出てくる作品を多くプレイしてきたわけではありませんが、彼は無邪気な子どものように設定がコロコロ変わる。設定が便利すぎるため却って作家からは使いづらいとも話を聞くが、もはやクトゥルフよりも有名なアイドル的存在だと思います。

 この作品に出てくる彼も何がしたいかはわからない。気まぐれだから、この一言で片づけるのもどうかと思うが、理解できない存在だから仕方ないと割り切ってほしい。トラやクマにとっては甘噛み程度のものでも、ヒトにとっては致命傷であるように目線の違いで変わると考えています。

 私もTRPGの経験値が足りないので、もっと勉強しないといけません。これからも楽しんでいこうと思います。

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