メンタライゼーション

メンタライゼーションmentalizationとは

・自己・他者の行為を,心理状態(欲求・感情・信念)に基づいた意味のあるものとして理解すること。
例えば,「彼はどういう気持ちからああいう行動をとったんだろう?」と慮ったり,「どうして私は今彼に対してそんなにイライラしてしまうのだろう?」と自らを省みたりという,誰もが日常的に行っている心の作業のこと。
・メンタライジングは,心の中に「心理状態の表象=心のジオラマ」を持つことで可能になる。
・養育者が心に子どもの心の表象を持ち,「実情に随伴してcontigent(子どもの苦痛の中身の実情に伴っている,即している)」-「マーク付きでmarked(養育者から示された感情は子どもの感情であると示す。遊び心を持って)」-「子の心を省みて消化された情動を」ミラーリングすることで子どもの身体の苦痛が鎮まる。この体験を通して子どもは「行動主体」の感覚を生み出し,養育者がミラーリングして返してくれた自分のジオラマを取り込み,自分の中に「自己の心理状態の表象」を内在化する。
・不快な身体感覚を伴う情動の発生(身体的自己)と自己状態の表象(心理的自己)が子どもの内的世界の中で象徴的につながっていくと,「ジオラマはジオラマであって現実そのものではない」と理解でき,健康なメンタライジングが育つ。

メンタライジング発達段階「心的現実のモード」

・現実と心理が一緒。「心的等価モードpsychic equivalence」
・現実と心理が分離「ごっこモードpretend mode」
・心理は行動と効果だけ「目的論的モードteleological mode」
・発言・行動は背景にある心理の表れと理解できる「メンタライジング・モード」

心的等価モードは乳児〜3歳ごろまで見られ,ごっこモードは2歳ごろから見られるようになる。これらが統合されて,4歳以降に健康なメンタライジング・モードができるようになってくる。目的論モードは健康な発達に不可欠な段階ではなく若干の病理性を含む(例:試し行動)。境界性パーソナリティ障害や外傷的育ちを生きた人を理解する上で重要。

メンタライズ力は状況によって変化する能力であり,ピンチではより原始的なモードに退行する。