当たり前だけど巣の違法撤去は違法だよ
毎年この時期はカラスの相談に追われる日々である。
理由は至って簡単で、日本という国はカラスを保護対象に指定していない上に、「有害鳥獣」というありがたくない指定までされているからである。
怪我などで弱っているカラスを保護して、役所へ連絡をしても門前払いされて、保護したカラスを見ながら、困り果ててネット検索すると当会が出て来る訳である。
多分、多くの人は「こんな団体があるんだ。役所よりはましかもしれない。今は何がなんでも適切なアドバイスを収集したい」と考える事でしょう。
サクラ前線ならぬ、カラスの巣立ち前線があるかのように、4月は南国沖縄や九州の方から相談が始まり、今は地元北海道からの相談が多くなった。
最近事もあろうに私も見ていた、あるブトの巣にが違法撤去された。
数年前に雛の事で相談をくれた方から連絡が来て、落胆と共に理解されない事への歯がゆさが伝わる切実な内容だった。
画像をもらったのだが誰が見ても違法撤去の作業中だった。(その画像は乗割愛)
私は嫌というほどカラスの巣の撤去に立ち会っているので親がどれだけ興奮するのかは熟知している。
特に巣の中に雛がいる場合は見ていて本当に胸が苦しくなる。
番同士で、怒りをどこにぶつけたら良いのか分からないかのように、お互いに蹴りつつき合い、鳴き合いを繰り返す。
抵抗むなしく、片時も離れた事がない雛がいる巣があっさりと取られて土嚢袋のような物に放られる。
雛は別途捨てられるので、生きたまま箱やビニール袋に放られる。
雛はこれから迎える死刑執行を知りはずもなく、無邪気に口を開けておねだりをしている。
この姿が切ないくてかわいそうで、適格な言葉が見当たらない。
巣がなくなっても、親は巣があった場所に何度も止まり探すような行動を取る。
もう耐えられないな。。。。
このブトの巣があった木は「ヨーロッパトウヒ」と言って札幌だとおなじみの針葉樹で大きな松ぼっくりを付け、たくさんの野鳥が採餌・塒・休憩場所として利用される。
特に渡り鳥は山などの樹林帯から、街中を通過する際に点々と植栽されているこれらの木が回廊になっている。
たった1本の木でも重要だということである。
立派だった樹形は見るも悲惨な姿になりトウヒとしての風格さえ奪われた。
巣が高くて届かなかったので、なんと枝ごと切り落としたのである。
通常は高所作業車を使い丁寧に巣を取るのが当たり前である。
そんな札幌も昔は長い棒で巣を壊して卵や雛がいてもお構いなしで撤去していた。
しかし転落死する雛の映像を担当部署へ見せて意見を言い、それからは作業車を使い叩き落すような事は一切していない。
違法撤去された巣には息絶えた雛がいたそうで、相談者が埋葬してくれた。
叩き落された巣はそのまま放置されている。
私が直接警察に通報でも良かったのかもしれないが、今回は担当部署に状況を伝えて、対応をしてくれたのである。
撤去に至った理由はどうでも良くて、きちんと法に則り許可を得て行うのが当たり前である。
しかし、残念なことに「カラスは有害鳥獣なので何をしても良い」というオリジナルの法律が独り歩きしているという、社会情勢が見受けられる。
野生動物が守られる唯一の法律は「鳥獣保護法」であり、もちろんカラスも該当するのである。
このブト君は今再営巣をしようと枝を運んでいる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?