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カラスを保護する勇気と葛藤

毎日色々なカラスの相談を受けるのが日常になる6月。
6月と言えば札幌は心地よい初夏で、何もせずにボーっと公園のベンチに座るのも悪くないそんな天候でもある。
しかし私の6月は一年で一番忙しく気が抜けないのである。

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カラスの雛がどうやって巣立つかを詳細に知って人って意外と少ないと思う。
テレビで見る鳥の巣立ちは、巣穴などから一気に飛び立ち親の所へ行くというのが多いだろう。
しかしカラスの巣立ちは決してそんなに格好の良いものではなく、巣のある枝からチョコチョコと移動してはまた巣に戻り、そしてまた移動。。。。とこれの繰り返しである。
移動しつつ距離を伸ばし、羽ばたいて胸の筋肉を発達させていく訳である。

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札幌は人口だけは多い大都市に分類されていて、何故か緑も多いとされているが、この緑ってのは縁石にある植え込みなども含まれていて、自然な緑とは程遠い。
しかも、公園や街路樹の枝は地面から約2mくらいは切り落とす決まりになっている。
この2mが巣立ち直後のカラスの雛の運命を左右するって考えた事があるだろうか?

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カラスの巣立ち雛は飛べない訳ではないが、また力がなくて平行には飛べても、飛び上がる事が困難である。
つまり、枝伝いに移動していて上手く枝に止まれずに地面に下りてしまう事もしばしば起こるのである。
雛は当然の事ながら飛び上がろうと必死になるのだが、2mの高さには到底届きはしない。
飛び上がれなくても、適度に下枝があれば枝伝いに樹上へ移動ができるがそれは不可能である。
結局は地面を歩く羽目になる。。。。
すると親が一気にヒートアップしてしまいガード体勢になり、周辺にいる動く物全てを追い払おうと低空飛行をして蹴りを入れる。

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そうなると人々は「カラスが人を襲っていて通行できない・怪我人もいる」と警察や役所に通報するのである。
通報を受けて、役所は委託業者へ連絡をして、雛は捕獲されて山や河川敷へ捨てられて、他の野生動物の餌になる。
餌にならなくても餓死するのが関の山である。
この行政による捨て雛は「カラス捕獲処理業務」とかいう名称である。
私は業務でも構わないが処理って、生き物扱いされていないのがけしからんのである。
もう少し違う表現はできないのかな?

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そうは言っても、全ての雛が捨て雛になる訳ではない。
都会という環境は便利ではあるが、車が通らない場所はほぼない。
巣立ちしたばかりの雛は、まだ車や人が怖い存在だという認識は全くない。
車道に出て車が来ても避けることさえ出来ずにひかれてしまう。
親が目の前で黒い塊の如く動かなくなった自分の雛に向かって、給餌の時のようにささやきながら、嘴で優しくつついている姿を見ると心が痛む。
数秒前まで生きていて車が通り過ぎたら死んでいるのだから、人間でも頭の整理ができないだろう。

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飛び上がれないのなら捕まえて樹上に止めれば問題解決する事も多い。
しかしカラスの雛をあっさりと捕まえられる人はまずいないだろう。。。
当然親には猛攻撃される訳だが、私は一切気にせずに親に雛を見せながら上場へ戻す。
この行為について「保護に該当するので行政としてはできない」と言うが環境省に問い合わせたら「枝にいた鳥が下りてしまい上がれずにいて戻した場合は保護ではなく、いわゆる現状復帰に該当するでしょう」という見解だった。
そもそもカラスは保護対象の鳥ではない訳で、樹上に戻しても保護には該当しないという事だろう。

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カラスを保護するに至る経緯は様々であるが、多くの人が「野鳥なんだし動物園や役所が保護してくれる」と思い保護する。
そしていざ電話をすると門前払いをされて途方に暮れるだろう。
ネット検索で当会が出てきて相談が来るという流れだろう。
保護すべきか悩んでいる人も多い。
しかし選択肢は2つしかない。
:保護して放鳥可能であれば時期が来たら放鳥・無理なら終生保護
:雛の場合は、親がいて面倒を見ているのなら、その雛が助からない状態であっても最後まで愛情を注いでもらいその命を全うしてもらう
どっちを選んでも間違いではないだろう。

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カラスに関わらず野鳥を保護するという事は相当な責任が生じて、丸投げ精神は受け入れられない。
丸投げする人の多くは「今すぐ捨てて来いと家族に言われて今日中に何とかして欲しい」というパターンである。
NPO法人札幌カラス研究会は無料引き取りセンターではないのだが、断ると逆切れしてくる人も少なくない。
ただ私は保護した事で自身を責めたり、後悔したりはして欲しくないのである。



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