花占い
わたしのなかで「花占い」と名付けているひそかな習慣がある。
ジゼルというバレエの名場面には、主人公の女の子が好きな人を思い浮かべながら「スキ、キライ、スキ、・・・」と、花びらを一枚ずつ摘み取る花占いがあるが、それではない。
お花屋さんに行って、その日の気分で好きなお花を選ぶというシーンが、わたしにとっては「花占い」なのだ。
お花を選ぼうと思うと、色・形・香り・花びらの大きさ・雰囲気・花の名前、といったいろんな要素を含めて、その時の気分にあったお花を選ぶ。
花瓶が小さめなので、ちょこんと飾る。
たとえ一輪だって、部屋に生命のエネルギーを宿らせてくれるような気がする。
立派な花束も美しいけれど、一輪でも生のお花を日々飾ることにもささやかなゆとりを感じられるもの。
お花を買うようになってわかったことは、その日の気分はもちろんのこと、体調の変化でも、そばに置いておきたいお花が変わってくるということ。
しなやかで、凛とした、白百合。香りも強く広がる。
ピンク色のローズは、私の一番好きなお花のひとつ。でも、時にはオレンジ色の子を持って帰りたくもなる。
カラフルで長持ちしやすいカーネーション。
春らしい爽やかなチューリップ。
花束では脇役的な存在の白くて小さいカスミソウだって、繊細さを感じさせてくれる。
アロマオイルも、その時々で香りの好みが変わるのと似ている。
疲れているときやストレスがかかるときはローズ系など華やかなものがほしくなるし
キリッと気持ちを引き締めたいときはシトラス系だし
レメディー的な香りがほしいときはラベンダーを選ぶ。
いつもつける香りはフランキンセンスで、直感で気に入ったのだけど、呼吸が深まるという効果があると知って、ヨガとのつながりを感じた瞬間だった。
アロマオイルは香りだけだけれど、生の花は、視覚的にも質感を触っても楽しむことができる。なにより、生きているエネルギーだ。
ずいぶんと前のある日、近所のお花屋さんに行ったときのこと。
お花をたまに買いに行くようになり始めた頃だった。
商店街の中にある個人商店の花屋で、その日は母くらいの世代の女性が店番をされていた。
「わぁ、嬉しいねえ、若い女性がこうしてお花を買いに来てくれるなんて」と、迎え入れてくれた。
「部屋に飾るんですけど、花瓶が小さいから、ちょこっと差したくて・・・」と私が言うと、これは長持ちするよ、とか、これは香りが立つね、とか見せてくれて、三四輪くらいしか買わないけれど大丈夫かな?と思った不安は、すぐに消えていった。
お花屋さんのおばさんは、選んだ花をまとめながらこう言った。
「私は家に花が欠かせないのよ、職業柄かしらねぇ。
ちょっと気持ちに元気がないときは、やさしい花を飾ったりしてね。
白とグリーンでまとめると、やさしいし爽やかかしらね」
ああ、すごくわかる。と心からうなづいた。
その日は、華やいだピンクにしたけれど、お花に元気をもらいたいときはそれもいいなぁと思った。
そして、カンタンな茶色の紙で包んでくれた。お花を誰からプレゼントしてもらうと、綺麗なラッピングに入っているのが当たり前で、私も誰かに贈るならそうする。
でも、この「カンタンな紙」というのが、お花が日常に近くなった気がして、これもまたいいなぁと思えた。
そのことがあってから、お花が身近になり、花占いが楽しくなっていった。
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