ジャーナリズムにとってマスク氏の買収の影響は?


イーロン・マスクがTwitterを買収したわけだが、Twitterがジャーナリズムに果たす役割が極めて大きいため、報道関係者は極めて微妙な立場に追いやられている。中でも注目のまとは、認証マークの有料化だ。認証マークが有料化された後世界のメディアがそれにたいしてどう対応するかが一つの焦点となっている。

また、倫理的な問題もある。自由な報道のあり方を公然と敵視するオーナーのプラットフォームを、ジャーナリストは今後も使い続けるべきなのだろうかという問いだ。

メディアが誰によって所有されるかは常に微妙な問題を孕んでいる。米国では、報道機関の一部が、反民主的な億万長者によって所有されていたり、ハゲタカ資本家やヘッジファンドによって支配されていたりするため、Twitterもそれの一例にすぎないとうこともできる。たとえばイーロン・マスクが所有する主要なソーシャルプラットフォームは、ルパート・マードックがイギリスやアメリカのニュースメディアの大部分を支配しているのと実質的に何が違うのかを考えてみるのは面白い思考実験となるだろう。またソーシャルメディアに関しては、世界で最も急成長しているプラットフォームTiktokが中国企業によって所有されており、それに比べればはるかにましかもしれない。

Twitterが私企業となり、Trust and Safety Teamが廃止されつつある現在、ジャーナリストが取材相手との会話でDMを使うのだけは避けた方が良いだろう。いかなるメッセージも匿名性や安全性が保証されることはないと思って行動すべきだ。さらに、この新しい経営者は、ジャーナリスト個人を標的にすることも辞さないことも覚えておいた方がいい。気に入らない記事には説明を加え、システムへの特権的アクセスを使って報道機関の批判に使う可能性だってあるだろう。 

心配しすぎとおもうかもしれない。しかしイーロン・マスク氏には「前科」がある。2013年、ニューヨークタイムズのジャーナリスト、ジョン・M・ブローダーはテスラモデルSに試乗したときのことだ。デラウェア州ニューアークとコネチカット州ニューヘブン間をテスラで走行し、ブローダー氏はこのEVでバッテリーや充電に問題があったこと報道した。マスク氏は、その記事にたいしてテスラがこのドライブから収集したデータを使って猛烈に反論したのだ。マスク氏のこのBroder氏のレビューに対する反論はのちに誇張された、ほとんど虚偽の主張であることが判明した

こうした略歴を見ても同氏はジャーナリストに対する異常な反発心がわかるだろう。


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