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人生を変えた舞台


と言われたらいくつか浮かぶのだけど
最初に変えられたなあと認識するのは
田中泯さんのダンスだ。

あれは2004年の夏だったかなと思う
内々の関係者しか集まらないような個人的な料理屋さんで開催された公演
客席は30人ほど靴を脱いで座敷でご飯を食べるお店で
玄関部分は一面ガラス張り。
泯さんは玄関部分を基本のステージとしていた。

それは踊り、と形容するのが正しいのか分からない。
恐ろしくって寒気がした。
全てが死の間際みたいな、肉体のぎりぎりを歩いているような

立ち上がるまでに何分かかったんだろう
だいぶ昔のことなので全貌はもはや分からない
ただ忘れられないいくつかの光景。
はしごがあった。泯さんはそのはしごで首を吊った。
死んでしまうかと思った。
泡を吹きそうなぎりぎりで落ちた。
この世のものとは思えないような動きで外へ飛び出していった。
客は店に取り残されガラス張りのウィンドウでその様をみた。
見知らぬ通行人が明らかにおかしな様子の泯さんに
恐がり、不審がり、凝視し、無視して
出演者になっていた。
泯さんは遠くに消えた。見えなくなった。
いよいよ私たちは店に取り残された。
無音。だれも動かない。
終わったのかと思ったら、今度は上手からガラスに張り付きながらゆっくりと店の中に。

恐かった。
途中から目を伏せた。
目を伏せても強い力が動いていることは分かった。
恐かった。
なんかよく分からなくて、でもすごくて。
終わったあと動けないって経験を初めてした。

これは間違いなく一度きりのものだと思った。
それ故にまたみたいとは思わなかった。
ただずっと残ってる。

#人生を変えた舞台  

のハッシュタグをみて、
そう言えばあれはなんてタイトルの何てダンスだったんだろうと振り返るためにホームページをみてみると
http://www.min-tanaka.com/wp/?p=5838
残ってなかった。
メニューてとこに、こんなに律儀に書き残してあるのに
私が観たやつはなかった。

あれは幻だったのかと疑うほどに
いやでも確かにあった
そして私を強烈に惹きつけ、そして変えた
あの時間は記録されてなかったんだ。

いつかあのようにしたいなどと
自分が思っているとは思わなかったけど
でも今自分がしている47都道府県一人芝居は
内容、というかあり方が恐れ多くも似てると思った。
無意識に追ってしまっているのかもしれない。
自由に、その土地で
記録にも残らないような衝撃的な時間を残したいと
そんな風に。

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