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宝本#0「ゆうちゃんのみきさーしゃ」

わたしの好きな絵本はおおよそ、母の好きな絵本だ。
幼い頃から多くの本を読みきかせてもらっていたのだが、いまでも記憶に残っている絵本は母が好きだと言っていたものが多い。

読みきかせてもらっていた当時、わたしの好きな絵本は「わたしの好きな」絵本だった。当時は、ピンクでキラキラしたものや、うさぎやぞうなどの動物が出てくるもの・魔法の世界に連れて行ってくれるような本が好きだった。(確か、ね)

そして同時に母の好みも感じていて、
絵本を読んでもらいながら「お母さんの好きそうな本だな、主人公が旅にでたり、絵のフンイキがエキゾチックだったりね。」と思っていた。

それがいつの間に、わたしも母の好きな絵本が好きになっていたのか。

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去年の秋、cornecom(ころねこむ)として大学の学園祭で絵本の店を出すことになった。
そこで相方の嶋田と話したのが、「心から誰かに勧められる絵本をピックアップしよう」ということだった。
ちょうど製作していた絵本「旅するピアノ」の印刷が終わったタイミングだったこともあって、わたしたちの好きな絵本が誰かに読んでもらうきっかけになれば、と思ったのだった。(絵本屋コロネについて・旅するピアノについては以下リンクで)

…誰かに届けたい絵本を選ぶ!
絵本が好きなわたしなので、あの本も素敵、この本もいいかな、なんて連日本屋を覗いてはどきどきしていた。

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そんな中で思い出したのが「ゆうちゃんのみきさーしゃ」だった。
思い出した瞬間、頭の中は爽やかなオレンジ色と、森をぬけて走ってゆくみきさーしゃの音、白くて甘いあいすくりーむのイメージでいっぱいになった。
そうだ、この本を読みきかせながら母が、「この、猿がオレンジを集めてきてくれるページが好きなのよ」と言っていたので、わたしもこのページが好きになったのだ。

きっとこうやって、母の好きなシーンを段々と好きになっていったから、母の好きな絵本が好きになっていったのだと思い出す。
なつかしい思いで読んだゆうちゃんの大冒険は、大人のわたしをわくわくさせてくれ、また優しい記憶をひっぱり出してくれたのだった。

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ちなみにこの絵本は絵本屋コロネで売っていたのだが、1日かけても売れず自分で買いとることにした。買いとったあと、かつての宝物が戻ってきたような嬉しい気持ちになったことを覚えている。
今では、開けばいつも優しい思い出で満たしてくれる、わたしにとっての宝物なのである。
「ゆうちゃんのみきさーしゃ」は私にとっての宝本だ。

今吉萌子(もぬ)
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ゆうちゃんのみきさーしゃ

作: 村上 祐子
絵: 片山 健
出版社: 福音館書店
発行日: 1999年04月

(福音館書店の規定に基づいて掲載しています。)


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