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のんびり気軽に学べる良書。「ホロリスニング」レビュー

ホロリスニング発売からしばらく経ちましたが、皆さん買いましたか?買おうか迷ってる人、特にふだんあまりENの配信は見ないけど買おうかなーどうしようかなーと思ってる人の参考になればと思ってレビューを書いてみました。
※本文は自ブログからの転載です


【自己紹介】いちホロライブファン。箱推しの木っ端絵描き。日本語教師資格持ち。英語はまだまだ勉強中。



ざっくりとした感想

アートワーク:最高 これは言うまでもないですね
デザイン:カワイイ 構成もレイアウトもしっかりしててカラフルで見やすい
内容:使える    かなり実践的な内容になっているがレベルはやや高め

内容としては、日英のスクリプトと簡単な解説やtipsのついた豪華なオーディオドラマ本という印象。よくできた公式ファンブックという感じですね。ホロライブMythのファンアイテムとしては申し分ないと思います。ネイティブスピーカーではないので英語の演技に関してどうこう言うことはできませんが、日本人の感覚としては十分に臨場感があり、英会話の教本という要素を抜きにしても素直に楽しめました。これだけで十分買い。

すでにレビューがいくつかあり、著者の塗田一帆(ぬるたいっぽ)さんによって紹介されています。こちらもぜひ。

とても参考になる爆速レビュー

本当に使える教材なのか?

さて、一方であまりホロライブEnglishのメンバーになじみがないJPニキにとっては「この本を買えば英語ができるようになるのか?」という関心があるのではないでしょうか。

そこで、「*第二言語習得論」の観点から見ていきたいと思います。といっても難しい話はしません。超ざっくりでありますが、初学者向けかどうか?という点について、3つの要素をピックアップして検討してみました。
*母語ではなく外国語として言語を学ぶことについての研究や理論

言うまでもなく、なにかを極めるのは大変です。でも日常会話レベルの英語であれば一定の期間、適切なインプットを得ればさほど難しくはない...と個人的な体感として感じています。

では、なぜうまくいかないのか。モチベーションが続かない、教科書や教材の英語が面白くない、英語に触れることを習慣にできない、といったあたりがまず第一の壁として大きいでしょう。これらの要素について見ていきます。


モチベーションが続くか

中学高校の授業はともかく、自発的に英語を習得しようという場合はなんらかの動機があるはずです。最初から強い動機をもっている人はいいですが、「英語できるようになりたいなあ」ぐらいのモチベーションで臨んだ場合、短期間で成果が出ないと最初の動機も見失いがちですよね。

たとえばゲームなら「興味を持つ ⇒ やってみる ⇒ ハマる ⇒ やり込む ⇒ なんらかのゴールを達成する(ゲームクリアとかマイクラの建築物とかトロコンとかマスターチャレンジとか)」というのが自然な流れですが、「少し触ってみて面白いからハマる、そしてやり込む」という段階をすっ飛ばしていきなり大量の練習を要求されると苦行になりがちです。格闘ゲームなどの競技性が強いジャンルはこの構造が顕著に表れます。(経験談)

たとえばゲーム本編を遊ばずにいきなりwikiだけ渡されて勉強しろって言われてもムリですよね。受験や論文のための学校教育と同じやり方を大人になってからやっても強制力がないので続かないですよね。

ホロリスニングは、この「興味を持つ ⇒ やってみる ⇒ ハマる」という導線として機能する…かもしれません。結局のところMythの5人が繰り広げるお話に興味を持てるかどうかなので、そこを保証するのは難しいです。まあ5人それぞれ個性的で面白いので、誰ひとり興味を持てない、カスリもしないというのはちょっと考えづらいかなと個人的には思います。ファンの贔屓目かな?


読者の興味を引く内容かどうか

モチベーションの話と繋がりますが、読者の興味がある分野に近い内容の教材は効果が高いと言えます。ホロライブの翻訳切り抜きでもEN・IDメンバーが日本のことを話しているコンテンツは人気がありますよね。日本の食べ物やオタク文化についてのトピックは我々にとっても関心の高い分野なので、興味を持って聞く事ができます。

その点、この本のシナリオ冒頭は楽屋トークから始まりますし、食べ物に関する話題もあり、さらにホロぐらと普段の配信(例えばマイクラコラボとか)の中間ぐらいのリアリティラインでお話が進むため、視聴者にもなじみのあるノリと言えます。ストーリーにも力が入っていて、また細かいシチュエーションにも捻りがあって面白いです。

正直に白状すると、購入前はこういった読者の興味を引くポイントに関しては期待していませんでした。というかナメてました。まあよくある英語教材みたいな一般的な内容になるんじゃないのー?と思っていたんですが、いい意味で裏切られましたね。CouncilとAdventとIDとTenpusとあとHOLOTORIバージョンもお願いします。

シナリオとして成立させるために多少セリフ然としてはいるし、発音も普段の配信よりは明瞭にと意識して収録しているようですが、かなり「いつもの会話」に近づけるべく工夫されてると感じました。この本から入った人も違和感なく普段の配信を見られると思います。

ただ、本の最初に簡単な文法の確認はありますが、中学で英語の授業をサボってた人にはややハードな内容かもしれません。そういう人は純粋にファンブックとして楽しむのも一つの手です。楽しくないと続かないですからね。


習慣にできるか

個人的な感想としては、この本を使った学習は非常に効果的だと思います。ただ、日常会話が可能になるぐらいの英語を習得するにはそれなりの期間が必要です。なので、勉強するぞ!と意気込むよりも、「ホロMythのメンバーをもっとよく知ろう」ぐらいの姿勢で楽しめるのもいいところだと思います。

英語学習に限らず、よくある物事の失敗パターンは「気合を入れて始める ⇒ 地味な作業が面白くないのでモチベ―ションが続かない ⇒ なかなか成果が出ない ⇒ 続けるのがつらくなる ⇒ 無力感でモチベが下がる ⇒ 以下ループ ⇒ 自然消滅」みたいな感じでしょうか。絵でも格闘ゲームでもFPSでもなんでもいいですが、似たような経験をしたことがある人は多いと思います。

ならば逆をやったらどうか。つまり、成果に対して過度に大きな期待を持たず、のんびりゆっくり気軽に楽しむつもりでやるということです。これは普通の英語教材ではまあ厳しいかもしれませんが、ホロリスニングは前述のとおりよくできた内容なので、この本に限っては可能なのではないかなと思います。

仮に1日1チャプターやっても半月かかります。そのまま普段の配信を見る方向にシフトできるとなお理想的です。あとはいくらか惰性でも毎日英語に触れる生活を続けていれば半年~1年後には驚くほど上達するはず。youtubeのホーム画面に海外ホロメンバーのチャンネルが常に表示されるようになったら勝ったも同然です。


まとめ

・ハマるきっかけになるかも?
・ちょっと難しいけど楽しめる内容
・気負わず気軽に始められるのがgood

間違いなく使える教材だと思います。ただし(文章量的に仕方ないところですが)解説の内容にムラがあるので、わからないところは適宜調べるくらいの手間は覚悟した方がいいでしょう。この一冊をマスターすれば普段の配信をより楽しく見られるのは間違いないです。


オススメの使い方(英語ビギナー向け)

(日本語の文章を見てしまうとそれだけで分かった気になってしまうので、リスニングの練習を意識するなら最初は本文を読まずにCDを聴くといいです)(登場人物紹介はもちろん見てOK)
(CDの入っている袋は透明なテープでスリット部分を封印しているだけです。あせって本から外そうとして破かないよう注意)

本文の日本語は見ずにchapter1を聴く(先に全部通して聴いてもOK)

  • どれだけ聴き取れたか確認しながらvocaburary、key topicとgrammar pointをチェック

  • chapterのタイトルと単語や文法を踏まえてもう一度聴く(だいたい何の話をしてるのかがわかればOK)

  • シナリオを見ながらもう一度聴く

  • 日本語訳をしっかり読んで内容を把握、自分の理解とのズレを意識してチェックする

中学の文法が怪しいけど頑張りたいという人は冒頭の文法解説と合わせて、最低でも can(could) will(would) shall(would) あたりの助動詞と、 get have take make あたりの動詞の使い方を覚えるといくらかラクになるかもしれません。

繰り返しますが、できれば翻訳切り抜きだけではなく本配信(またはアーカイブ)を見る習慣をつけるとさらに効果的です。

とにかく日本人は「国内にいる限り日本語以外を使う必要がない」こと、さらにホロライブに限っても「日本語のできる海外メンバーがコラボで活躍する」「翻訳切り抜きが大量にある」ので日本語の補助を外した英語だけのインプットが非常に少ない状態です。

留学や出張で英語しかない環境に身を置くよりもはるかにイージーで気楽にやれますし、特に失うものもないのでやるだけお得ですよ。

と、ほぼベタ褒めのまま終わろうかと思いましたが、オススメできない要素がひとつ。電子版に音声がついてこない。つまりCD再生機器がないと詰む。


三度見ぐらいした

ということで、オーディオドラマとして購入を検討している人は物理単行本を買いましょう。...そんなオチある?


オマケ

冒頭ですこしだけ触れた第二言語習得論についてですが、「外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か」( 白井恭弘著)という本が読みやすくてオススメです。なぜ日本人は英語が苦手なのか?効果的な外国語学習法とは?などについて科学的な観点から解説されています。こちらの改定前の版(前作)にあたる「外国語学習に成功する人,しない人-第二言語習得論への招待」も kindle unlimited にあります。だいたいの内容は変わらないので、unlimited会員の人にはこちらもオススメです。

私はHolo Language Exchange という discord サーバーで活動しています。
海外ニキと日本語で話すイベントなども定期的に行っているので、英語で話すのはまだ難しいけど日本語なら…という方はよかったら覗いてみてください。


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