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獣のリスト

第一の獣 進化

顕現未観測

第二の獣 無窮

 ヒトとは願いと祈りを抱く者。
 獣とは願いと祈りなくその業によってのみ『生くる』者。

 この獣は【進化】の業を担う獣と共に誕生した

 愛することを欲し
 愛されることを求め
 その身は激しい飢渇に燃えながら
 美しさも愛も何一つ理解しない

 たとえ己の内に愛があろうと
 この獣の瞳にそれは映らない
 たとえどれほど愛されようと
 この獣は全て拒絶するだろう

 世界は残酷で美しい。
 だがこの獣はその美しさが見えない。
 求められれば手を差し伸べ
 幾らでも我が身を灼くだろう。
 その魂を無限に燃やし続けてでも。

 だがそれでも尚も獣はこの世全てを醜いと呪うのだ。 
 そうして再び、この世界を祝うように手を差し伸べるのだ。

 この業により、ここにその獣の本質は確定した。
 願いと祈りを捧げるはまやかしの姿、その本性は底無しの絶望にして、無窮の獣である。

第三の獣 楽園

 ヒトとは願いと祈りを抱く者。
 獣とは願いと祈りなくその業によってのみ『生くる』者。

 この獣は生への否定と楽園の喪失と共に誕生した

 愛することを欲し、歓びと幸いとを与えんと欲し、
 己の内に燃える虚ろを満たさんとする。
 しかし己に向けられる愛を決して理解せず、
 その器には歓びも幸いも注がれない。

 誰も己の意志ではこの世に生まれて来られない。
 故にこの世界に愛すべきものを、生まれて来た罪を償うため探すのだろう。
 自傷する愛、永劫の片恋、己の幸いを他の救済の上に成り立たせる不具のアイデンティティ。
 故にこの茨の園に花は咲かず、実も結ばない。

 世界は残酷で美しい。
 だがこの獣はその美しさが見えない。
 求められずと手を差し伸べ
 幾らでも我が身を灼くだろう。
 その魂を無限に燃やし続けてでも。

 だがそれでも尚も獣はこの世全てを美しいと祝うのだ。 
 そうして再び、この世界を呪うように愛おしむのだ。

 この業により、ここにその獣の本質は確定した。
 救済を謳い幸福を祈るは偽りの姿、その本性は反転せる無尽の絶望、失われた楽園の獣である。

第四の獣 可能性

顕現未観測

第五の獣 無明

 ヒトとは願いと祈りを抱く者。
 獣とは願いと祈りなくその業によってのみ『生くる』者。

 この獣は人々の祈りと英雄への期待と共に誕生した。

 愛することを真似、慈しむことを模し、
 終わりなき空虚を嘆きと祝福で満たす。
 されど自らの欲望さえ受け容れられぬ毀れた杯、
 そこにきっと真実、生命など在りはしなかった。

 誰もが誰かに与えられた意味を生きているのだろう。
 この獣の生も死も予定調和の内にあった。
 なればこそ怒りも哀しみも反逆もその獣のモノにはあらず、
 如何な救いも生み出されることはなかった。

 世界は残酷で美しい。
 だがこの獣はその美しさが見えない。
 求められるが儘貪られ
 幾らでも我が身を灼くだろう。
 その魂を無限に燃やし続けてでも。

 だがそれでも尚も獣はこの世全てを無意味と謳うのだ。 
 そうして再び、この世界を愛でるように呪うのだ。

 この業により、ここにその獣の本質は確定した。
 万物を愛し慈しむは虚飾の姿、その本性は無限の憎悪と諦観、無明の獣である。

第六の獣 信仰

顕現観測済 討伐不能


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