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■■巫蠱髑髏曼荼羅絵草紙

 ヒトの中には「器」があります。人間性――理性、精神、知性、感受性――そういったものを入れるための器です。
 「巫女」を“創る”時は、さまざまな「儀式」によって「人間性」を破壊し、「器」の中に「空き」を作ります。通常は、「人間性」に傷を付けられた場合、悪い要素が入って来てしまいます。様々な悪意や誘惑です。しかし「巫女」を作る時は、そういったものが入り込む余地がないよう、上手に「順番」を考えて、「器」の中身を壊していくのです。
 そうして、十を超えるころには、「巫女」の中にはかなりの程度の「空白」ができあがっています。そうなれば、最後の「儀式」を行う準備が整ったと言えるのです。
 「巫女」を作り上げるのは「巫女」である母親です。母親は娘の物心がつく前から、娘を「巫女」とするための「儀式」を行ってきたわけですが、これが最後の儀式となります。
 その儀式を終えると、元々「巫女」であった母親は生きながらにして完全な廃人となり、その魂は冥闇の王アウザさまのみもとに向かいます。廃人となった母親は時折譫言のようなことを言うことがあり、それはアウザさまのみもとでお聞きした古代の言葉なのだと言われています。
 さて、このようにして出来上がった「巫女」は、「魔」を喰らう力を得ております。「空白」の中に「魔」を喰らい込み、自分の中に閉じ込めてしまうのです。が大きければ大きいほど、「巫女」の力は強いと言われております。

 さて、当代の巫女は歴代でも類を見ぬほど力が強いと聞きます。
 普通ならば先を憂うこともなく、世の安泰を祝ったことでしょう。

 しかし我ら幽人(かくりびと)は今、揺れに揺れているのです。なぜならば、あの恐ろしい“濁世”へ赴いた折、次代の王となるべきアルジュナさまが命を落とされたからです。
 もちろん、殺されても我ら幽人は真に滅びることはございません。しかし、それを機として、我ら幽人は次代の王に誰を戴くべきかで争うようになってしまったのです。アルジュナさまと、その弟君であるヴィジャヤさま、このようなことは伝え聞く限りでも初めてのことです。
 黒い太陽が耀く赫天の下、赤い水の湛えられた、この美しい世界は、一体どうなってしまうのでしょう……。

    ――或る“幽人”の女、語る

世界観

 「歪んだ黒い鏡の後ろの、命なき世」――赤い空に漆黒の太陽が輝き、赤い水が揺蕩う、名もなき「異境」。
 ソード・ワールド2.5の世界であるラクシアとも、そのラクシアでも異質な文明が築かれたサラービア地方とも、全く異なる「理」が統べる世界が舞台です。
 この異境に行く方法は二つ。
 一つは、自分の意思に反して取り込まれるというもの。
 もう一つは、何らかの手段で「探索者(さがしびと)」となり、この異境と自由に行き来するというもの。
 失われた「物語」と「呪詛」が眠るという、死のなきこの異境は、その危険性に反して、少なからぬ人々を引き付けてきました。
 異境への入り口は常に移動し続けており、それは広範囲に広がる「赤き霧」の形で現れます。これに遭遇してしまった者は、運が悪ければ『幽人(かくりびと)』に殺されたり、攫われたり、そうでなくとも、異境の側に取り込まれたりしてしまいます。
 異境においては、真実の「死」は存在しません。たとえ肉体が滅んでも、何度でも蘇ることができます。ただし、この異境を訪れた時から、出るまでの間、ある一定の回数以上「死亡」すると、この異境を出た瞬間にアンデッド化してしまいます。
 異境には『幽人(かくりびと)』なる人々が暮らしています。彼らはラクシアと異境とを自由に行き来することができるとされていますが、彼らについてはほとんどわかっていることがありません。300年ほど前に、サー・レイモンド・ナイトフォールなる人物が記した「闇夜秘史」が最も詳しい『幽人』に関する書籍です。しかし、その内容は偏見と誤解に満ちており、情報こそ多岐にわたるものの、学術的価値には疑問の声が上がっています。

闇夜秘史

 高貴なる読者の諸公におかれましては、私の手により現地を訪れ、目撃し、伝え聞かれた逸話を謹んでお伝え申し上げます。
 本書において描かれるのは、ある種の忌まわしき存在である幽人(かくりびと)たちの世界でございます。彼らはこのラクシアにおいて、不可触民、賤民として冷遇され、社会的な差別に晒されております。
 彼らは自らを「幽人」と名乗りますが、他部族からは蔑称である「ニルラッジャ」と呼ばれております。「恥知らず」を意味するこの称号は彼らの尊厳を傷つけるものであり、彼らの苦境を如実に示すものでございます。
 彼らは呪詛、祟りの引受、廃祀などといった禍々しい業務に携わり、「ケガレ」なる、忌むべきものを引き受けることを伝統的な生業としております。彼らは他者の憎悪や穢れを背負い、このラクシアにおいては苦悩の道を歩まねばなりません。
 幽人たちは定住せず、肉を生食し、邪術を巧みに操り、しばしば家畜や作物を盗み出すという、我々の常識を逸脱した振る舞いを見せます。彼らは騎乗せず、自ら家畜や騎獣を飼うこともありません。彼らの生活様式はまさに異常の極みと言えましょう。
 幽人たちは深く冥闇の王であるアウザを崇拝しております。彼らの信仰は闇の領域への逸脱的な繋がりを示唆します。
 幽人たちは家財を持たず、樹上に身を寝かせ、男女の別を隔てず、明確な婚姻の制度を持たない生活を営んでおります。彼らは一夫多妻の形式に近いものの、父系や母系ごとに特異な決まりがあり、一定しないことが特徴でございます。
 幽人たちの中には王と呼ばれる世襲制の存在がおり、彼らは人狩りの実施や生業の価格交渉に携わります。しかし、彼らはあくまで一部族の指導者であり、身分の格差はあくまで一時的なものであることに留意せねばなりません。
 幽人たちはサラービア地方語に加え、鳥獣の鳴き声に似た声でのコミュニケーションが可能とされております。彼らのコミュニケーション方法は私たちには理解し難く、まさに神秘の世界への入口であると言えましょう。
 彼らは攫ってきたラクシアびとの良民の女性に子を一度のみ産ませ、その後、彼女を残忍にも彼らの手によって殺してしまうという習俗が存在します。また、彼らはラクシアびとの乳幼児を攫い、我が子とすることが多いようです。どうやら彼らはいずれも、自身の子を得ることが困難なようであります。そのため、彼らの血統的な背景は曖昧なままとなっております。
 幽人たちにとって、最上の食べ物は人肉であり、生きたまま食い殺すことこそが至高とされます。彼らの異常な食事習慣は、人族の道徳とは相容れないものであり、私たちにとっては理解しがたい領域でございます。
 このように、本書は幽人たちの異様な生活様式や禁忌に満ちた文化を鮮やかに描き出すものであります。多くの逸話が盛り込まれ、その情熱的かつセンセーショナルな物語は、読者の皆様に衝撃を与えることでしょう!

「闇夜秘史」 サー・レイモンド・ナイトフォール

あらすじ

 キャンペーン開始の八年前、突如「赤き霧」がヒメカ=アキツシアの係争地「シャンロン島」に出現します。
 「赤き霧」の中より現れた幽人(かくりびと)たちにより、負傷者、死亡者、行方不明者は計八百人以上に上りました。
 勿論、シャンロン島の住民たちは、報復のため、そして攫われた女性たちや子どもたちを取り戻そうとします。しかし、報復と奪還を目的として旅立った者たちはいずれも何一つ成果を挙げられず、音信を絶った者さえいました。
 そして、舞台はサラービア地方中部、神聖大イスカイア帝国の流刑地、コンガウに移ります――……

幽人(かくりびと)

 幽人の起源はいつ、どこにあるものともしれません。
 彼らについて確実に分かっていることは三つしかありません。
 一つ、彼らが異境において一切の悪影響を得ることなく生き延びられる存在であること。
 一つ、彼らはサラービアの民にとって欠かせない役割を担っていること。
 一つ、彼らに攫われた子どもは幽人となり、彼らと精神性と一にする存在となり、ラクシアびとに戻す方法はないこと。
 彼らはサラービアの民にとって恐ろしく、穢らわしく、悍ましい存在です。しかし同時に、サラービアの民が対処不能な「呪詛」や「祟り」を代わりに引き受けてくれる人々でもあるのです。特に彼らが得意とするのは、「廃祀」と言われる役割です。それまで神として祀られることで抑えられていた存在への信仰を廃する時、その存在を引き受け、自分たちをその祟りの対象とするのです。
 幽人はラクシアびとの基準では「異常」としか言えない存在ですが、その姿は意外にも美しいものだと言われています。また、体格も非常に大きく、男性の平均身長が210cm、女性の平均身長が190cmほどとなっています。夏も冬も薄物の巻き衣しか纏わず、その上から豪奢な宝飾品を数えきれないほど身に付けます。その姿は実に優美なものですが、どれほど彼らが無害に見えても、用がないのであれば、そして彼らと交渉する術と対価を持っていないのであれば、決して近づいてはなりません。


注意事項

【※猟奇/嗜虐/オカルト/最初から最後まで救いのないキャンペーンです。】
【※このキャンペーンの全シナリオにおいて、本来の意味での『死』は『対象の穢れ点+シナリオ内での死亡回数=5』まで発生しません。ただし、この意味での『死』が発生した場合、対象は穢れ点が『5』となって魂はアウザの許へ向かい、肉体はアンデッド化するのでご注意下さい。また、しばしば戦闘以外での死亡が発生します。というより戦闘は死ぬような難易度ではありません。】
【※いかなる場合も補填処理をせず、拾得物は買取不可、全PC『1部位限定&召喚使役不可』となります。妖精、魔神、騎獣、ペット、ゴーレム、ファミリアなどすべての使役、利用ができません。連れてくること自体はできます(RP)が、全く言うことを聞かなくなります。元々3部位以上あるPCに関しては、コア部位のみが存在するものとします(その他部位はダメージを受けない代わり、常時型の特殊能力も使用できません)。その上で戦闘バランスを設定します。】
【※戦闘での勝利がシナリオの良いエンディングに繋がるとは限りません。どんなに頑張っても報われない場合があります。】
【※特に事前注意なくあらゆる嫌な物事が起こり得ます。あなたの見えざる地雷を発掘する可能性があります。精神面で不安定な方は摂取をご遠慮下さい。】

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