除名コピーライター長谷川哲士の不正の噂

3年前、自殺者を減らすために広告コピーを書いた。

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今年の9月にも書いた。

自殺を減らす言葉を考えるとき、じぶんが死にたくなったときのことを意図的に思い出す。あのとき、どんな言葉を読んだら、まだ死にたくなくなるのかを想像してみる。

そうしていると、とても死にたくなってくるのだが、、、

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そんなタイミングで名指しで悪い噂を流されると、いよいよ死へダイブしたくなる。

「保育園落ちた日本死ね」を生み出した“はてな匿名ダイアリー“が、情報を拡散させていた。

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(↑削除申請はしてないが今は削除されている)

「長谷川死ね」「この世界から除名されればいいのに」そんな心の声が聞こえてくる。ぼくのWikipediaも更新され不正や除名と書かれ、引越先の入居審査する人から電話がかかってきて、どういうことか聞かれ、さらに死にたくなった。
(ぼくが削除されるまえに誰かWikiを削除してくれ)

はじまりのツイート

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「数年前に不正行為によりTCCを除名となったあるコピーライター」とは、ぼくのことだ。今年の2月に同僚のデザイナーにTCC賞というコピーの賞への応募を勧めたら、応募規定違反で応募無効になった。

こういう悪そうなことの告発は、とても拡散される。賞や団体について知らなくても、どういう事実があったのかはわからなくても、「不正」や「失格」や「除名」という言葉の印象が強く残り、悪そうだという雰囲気だけで人は拡散する。SNSの言葉が芸能人を自殺に追い込むニュースを見ながら、自分の指先が誰かをビルから突き落とすことは想像しない。

そして業界で地位のあるコピーライターがツイートすれば、ほかのコピーライターの人たちも安心してつぶやける。

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芸能人などは匿名の人から非難されて苦しむが、ぼくの場合、本名でSNSをやってる人たちや、会って話したことがある人たちからも非難される。これはなかなかつらい。見るたびに心臓がキューっと縮んでゆく。え?あの人がこんなこと言うの?この人もマジか?おれってこんなに嫌われてるのか…おれが死んで喜ぶ人がいるんだな…と実感した。

この人たちの正義も想像できるし、業界の外から見た人がツイートを見て悪く受け取り正義感から拡散するのはしょうがないことだ。もしかしたら、じぶんも似たことをしたことがあるかもしれない。ただ、広告業界の人でさえ、何の事実もわからないまま拡散している人がほとんどだと思った。その人たちに伝えたいわけではないが、この不正応募と見なされた応募についての事実を、ぼくの口から伝えたい。不正だという認識も、悪意もなかった。公開処刑された側のいいわけは、不正の告発ツイートに比べてシェアしてもらえないだろう。それでも、じぶんのことを信じてくれる人たちのためにも、ここに言葉を残しておく。

TCCとは?

まず説明しておくと、TCCとは東京コピーライターズクラブの略だ。1年に1度「TCC賞」という、その年に、世の中に出たCMやポスターなどの広告のキャッチコピーを応募して、選ばれた審査員で審査する賞がある。コピーライターの名刺をもってなくても、コピーを書いていれば、誰でも応募することができる。過去に、デザイナーでコピーを書いて受賞している人もいる。よく一緒に仕事をしている同僚のデザイナーが、この賞に興味を持っていたので、彼が書いたと公表して問題ないと思った広告を、新人賞部門に応募することを勧めたのだ。デザイナーで受賞すれば、コピーライターからデザインの仕事を頼まれる可能性もあるし、受賞していて損はないと思った。

コピーを誰が書いたか決めるのは難しい

「ぼくが書いたコピーをデザイナーが書いたものとして応募した」と思われてるが、コピーを誰が書いたかを決めるのはとても難しい。例として、賞への応募を勧めた広告の制作過程を書いてみる。(商品名、クライアント名はふせる)

都内の駅に掲出した青森のりんごジュースのポスターで、りんごでウサギをつくるように、新幹線をつくってその写真がドーンとあり、キャッチコピーは、

バレンタインエクスプレスは青森⇒品川 160円

というものだった。これは、デザイナーと外部のパートナーの方と3人で考えてつくった。最初の打ち合わせをしていた時に、誰が言ったかは定かではないが、りんごの新幹線のビジュアル案が出てきた。そのときに、切符代みたいに160円と入ってるというネタも、誰からかはわからないが出た。その後、ぼくがデザイナーに投げたコピー案の中にあった

「青森⇔品川 160円」

これをもとに、矢印「⇔」を、デザイナーと話しあって

青森⇒品川 160円

「⇒」にした。青森からりんごが来るので一方方向の矢印がよいという考えに落ち着いた。

「バレンタインエクスプレス」という言葉は、また別のスタッフが考えた言葉だ。ぼくが考えたほかの案よりもいいと思ったので、そのまま使った。このポスターには、注意書きで、

※バレンタインエクスプレスは実際には走行してませんが、青森の果汁100%りんごジュースは税160円でふたりのお口へ到着します。

こういうコピーも小さく入っている。最初は入っていなかったが、鉄道会社側からポスターを出す上で、注意書きを入れなければならないと指示があり、デザイナーが仮で入れた言葉をもとに話しあって決めた。

このポスターのキャッチコピーは、4人で書いたとも言えると思うが、制作メンバー内で合意がとれていれば、デザイナーが自分のコピーとして応募するのは問題ないと判断した。

仕事で、一言一句最初から最後までじぶんひとりで書いたコピーが世に出ることもあるが、上の例のように一緒に制作しているメンバーだったり、クライアントだったりのアドバイスや案を踏まえて着地することが多い。広告を制作したことのない方には、なかなか理解しづらいとは思う。

共作は応募規定違反?

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事実もわからないのに100%悪と言い切る価値観はこわい。ぼくは「デザイナーが書いている」と公表して問題ないと思ったので応募を勧めたのだが、応募規定には

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新人部門についてはコピーの共作は認められません。

と書かれていた。この「共作」の定義に当てはまり、不正応募になるという見方もあるが、「共作」の定義は書かれていない。

さ、ひっくり返そう。(そごう・西武)

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ことしのTCC新人賞を受賞したこの広告も、「さ、ひっくり返そう。」と「わたしは、私。」は別のコピーライターの方が書いている可能性がある。

「わたしは、私。」は数年前から使われているし、この広告はTCCとは別のコピーのアワードで賞を受賞していて、コピーライターの欄には4名の名前が並んでいる。

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プール冷えてます(としまえん)

デザイナーがコピーを書いたけど、おなじ制作チームのコピーライターの名前で応募して受賞したケースも過去にある。

30年以上前のこのコピーだが、

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コピーライターさんの名前で応募して受賞してるが、そのコピーライターさんのブログには、こう書かれている。

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デザイナーさんが書いたキャッチコピーだったのだ。ただそのコピーでGOサインを出したのはコピーライターの方の判断なので、コピーライターとして応募するのは問題ない、という考えもある。「コピーを選ぶのもコピーライターの仕事」というように言われることもある。なかなか理解しづらいことだとは思う。

ほかにも、

■てにをはや言い回しをコピーライター以外のメンバーが直す

■2人以上の考えたコピーを足してつくる
 たとえば「「あしたのために」と「いまやろう」という別々の案を足して「あしたのために、いまやろう。」にするなど。

■ひとりが書いたコピーをベースに別の人が書き換える
 たとえば「このすばらしき、ろくでもない世界。」と書いたコピーを「このろくでもない、すばらしき世界。」に変えるなど。

■クライアントや第三者が考えた言葉やネットスラングを使う
 日清のCMで使われていた「いいぞ、もっとやれ。」はネット上で誰かが使いはじめた言葉だ。聞いた話だが「結果にコミットする。」は、ライザップの社長さんが「コミット」という言葉を使いたくて生まれたらしい。

……などなど、「誰が書いたか」を決めるのが難しいケースは多々ある。まぁ大前提として、広告を見る人にとってはコピーを誰が書いたかなんてどうでもいい話。実績紹介や賞のスタッフクレジットなども、制作メンバー内で同意がとれていれば問題ないくらいの認識だった。余談だが「本当は下請けの制作会社の人がつくった広告なのに、代理店の人が自分がやった仕事にする」というような問題もある。業界の人はそっちをもっと問題提起してほしい。

本当にごめんなさい。

ちなみに、ぼくはアワードの事務局や審査員とは何のやりとりもしていない。応募無効の話をデザイナーから聞いたときに、一緒に説明をする道もあったと思うが、記録が残ってなく記憶に頼る部分も多々あるのと、デザイナーが早く謝って終わらせたいように見えたので、きっかけをつくったことについて謝り、対応は委ねて、何も言わないことにした。デザイナーはコピーの賞に応募した経験がなく、応募ルールもちゃんと理解してなかったので、応募前にもうちょっとていねいに説明すべきだったし、強引に勧めた一面もある。本当に申し訳ないことをした。20回以上謝って10回くらい焼き肉などをおごった。応募作をどういうプロセスでつくったかは、事務局側に説明したそうだ。賞を運営される方や受賞者にも申し訳なかった。

応募者の個人情報をもらすのは正当行為なのか?

ところで、賞の応募規定には、こんなことが書かれている。

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ぼくは応募者ではないのでいいのかもしれないが、デザイナーの名前はもろに出ていた。名前を出してなくても誰かが特定することはわかっていただろう。活動のために必要だったのか?

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ぼくの名前をおもいっきり言ってる審査員の方もいた。今は投稿削除されていたが、Twilogというツイートを自動で保存するサイトに残っていた。ここの部分の応募規定や常識について誰もふれないのは、けっきょくぼくが嫌われてるということが大きいように思える。

最もつらかったツイート

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騒動の中で、こういうツイートがあった。ただ、ぼくはこんなツイートを投下していない。Twilogでも調べたがなかった。でも、コピーを引用したコラムを書いたのは事実だ。

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このコラムは今は削除されているが、これを読んでツイートと勘違いしたのかもしれない。

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コラムを書いたのは2015年の11月13日で、岩崎さんが亡くなられたのは2014年12月20日だ。不快にしてしまったのは事実だし、こういう表現は使うべきでなかったし申し訳ないと思う。だけど、上のツイートは事実と異なる。「人生は冬ではなく春で終わりたいと書いた岩崎氏が冬に亡くなった」とは言ってない。このツイートを見た人たちは、ぼくが本当に言ったかどうかなんて確かめず、人の心がないヤツ、死んでもいいヤツだと思っただろう。これはとくにつらかった。

ちなみに「コピーを千切ってくっつけて再生成するジェネレーター」とは、2016年1月28日に公開したコピースロットのことだ。このサイトは法務確認をとり問題ないと言われた。唯一入る企業名のシャープも、シャープの方に一報したあと公開している。こういう活動が嫌われる原因なのだろうが、ぼくはコピーライターなんて単語知らない人にも、キャッチコピーをつくる楽しみを味わってもらいたかっただけだ。

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翌日にこんなツイートをするほど憎まれている。でもそれはじぶんの言葉が招いたことだからしょうがない。ただ、ほかの人よりうまく泳げないから嫌われている。SNS上のぼくしか知らないからこういうことを言うのだろう。ぼくは何回もおぼれて死にそうになってる。

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「ソース(情報源)を確かめない人」と「自分の言葉が、人を死に追いやる可能性を想像しない人」には、コピーライターを名乗ってほしくない。心が泣きそうになったことがないから「心がない」なんて人に言えるのでは?ぼくは特定の誰かを言葉で傷つけようとしたことはない。じぶんが言葉で人を救おうとしているときに、じぶんを言葉で殺そうとする人がいるのはつらかった。人を追い込むために言葉の技術を磨いたのか?それに、たとえぼくが完全な不正行為をしたとしても、こういうツイートは、団体にとっても業界にとっても、プラスにならない。これを見て、コピーライターになりたいと思うだろうか?賞をとりたいと思うだろうか?それをわかりながら、それでもぼく個人を攻撃したくてツイートしてるように思える。自分の不満をぶちまけるためにツイートしてるコピーライターに、仕事を頼みたいと思うだろうか?

数年前の不正行為

発端となったツイートに書かれていた「数年前の不正行為」についても書いておく。下のような例で、過去に何度かじぶんでつくった団体でポスターなどをつくって世に出したものを賞に応募していたのだが、これが「実在しないクライアントを捏造し、架空の広告を自主制作した不正行為」に当たり除名処分になった。

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https://toilet-japan.jimdofree.com/

じぶんでつくってはいるが、実在するクライアントで、近所の図書館のトイレに許可をもらってポスターを貼ったので、架空の広告ではない認識だった。このポスターはこんなブログこんなブログを見るとわかるように、日本中のあちこちに貼られている。ただ、賞を目的にして広告をつくる行為は、いい仕事にめぐまれず賞に出す広告がなくて悩んでいる制作者のきもちを踏みにじる行為だったと反省したし、謝罪もさせていただいた。50人くらい集まったTCC会員のコピーライターの方たちの前で頭を下げた。とらやの羊羹を買い、生まれてはじめてスーツを買い、ネクタイを締めた。死にたくなった。

そのとき以来、TCCという文字をツイートしたことはない。ただ今回、応募を勧めたのは安直だった。じぶんがつくった広告で炎上したことはないが、広告をつくるのと同じくらい、賞への応募を勧めるときにも慎重になるべきだった。もう二度と、広告賞に応募を勧めたり、応募作に関わることをやめる。

数年前の除名騒動以来、とくにコピーライターの人と名刺交換するのが恐くなった。
「(この人は事件のこと知っているのかな?)」
「(この人はおれのこと問題児だと思ってるのかな?」
代理店の方から「長谷川さんに頼みたいけど制作サイドで拒む人がいる」と言われたこともある。今回の騒動で、より頭がおかしい人だという噂が広がっただろう。騒動の最中に進んでいた仕事で、はてな匿名ダイアリーのリンクを貼って「これが事実であればこんな人とは仕事したくありません」というメールをもらった。運営しているコピーライターのサークルのメンバーも一気に減った。高校の同級生や尊敬している仲間たちと一緒に上場までした会社も、やめることになってしまった。SNSをうまく使って仕事を増やしてきた人間が、SNSで殺されてゆく。

なんでぼくはこんなに嫌われるのだろう?代理店出身でもなく環境にめぐまれてないのに、うまくやってるように見えて嫉妬されるからだろうか?ヘラヘラしているからか?だから反省していないように見えるのか?いや、顔は笑っていても、心が泣いている人もいる。子供じゃなけりゃ誰でも二つ以上の顔を持ってる。でも、全部じぶんが巻いたタネなので仕方ない。ぼくと仕事したことある人は、だいたいぼくのことを信じてくれて、何度も仕事を託してくれる。SNSで何か書かれても気にする必要はない。頼んでくれる人がいるかぎり、ぼくは広告をつくりつづける。

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ぼくが誰かを救おうとしたコピーは、ぼくを殺そうとしたどのツイートよりも広がっている。狭い業界の中で生きるんじゃなくて、広い世界で生きよう。コピー書くのを、広告つくるのを、ただがんばればいい。また0からがんばるぞ。

サークルのメンバーが支えてくれているから、今も生きていくことができています。本当にいつもありがとうございます。入ってよかったと思えるサークルにしていきます。


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