シャープらしくない求人広告をつくるところだった。
現在、八王子駅の改札を出たところに、シャープの求人広告が出ています。
このキャッチコピーはぼくが書きました。シャープさんとの仕事は、エモパーからはじまり、もう５年のつきあいになりますが、この広告を出す経緯をかんたんに述べておきます。
シャープの「AQUOS」は液晶テレビのイメージのある方が多いかもしれませんが、スマホも出していて、数年前からAndroidスマホの中では売上１位になることも珍しくありません。（そのAQUOSの中に入ってるのがエモパーです）
（2020/11/22〜2020/11/28 価格.comより）
ただ、もともとカメラメーカーではないシャープが、スマホのカメラの画質などで市場を戦っていくのはかなりハードルが高いようです。だからこそ、カメラの質を良くするエンジニアを必要としていました。
一方、世の中的には、カメラの縮小や撤退という悲しいニュースが出ています。八王子に拠点の多いオリンパスさんでも、撤退のニュースが出ました。社内には、これからもカメラの追求を仕事にしたいという方がいるでしょうし、カメラ事業を撤退して申し訳ないと思ってる方もいるでしょう。そこで、八王子駅に求人広告を出すことになったらしいです。
ちなみに、他社のエンジニアを採用しようという狙いで、オフィス近くの駅に求人広告を出すやり方自体は、わりとあります。
https://www.sankeibiz.jp/business/news/170808/bsa1708080500001-n1.htm
コピーの提案の段階では、ビミョーな案でもクライアントや代理店、媒体側の温度感を確かめるために共有することがあります。提案の中には、オリンパスさんをもろに意識した案もありました。
ここからが反省ポイントなのですが、やりとりする中で書いたコピーの中に、
オリから出て、
シャープに働こう。
という言葉がありました。
なかなかうまいこと言えたなと思って眠りについたのですが、翌朝、これは世に出したらダメなコピーだと思い直し、担当の方にメールしました。
このコピー、自分的にオリンパスネタで、
シャープも合わせたうえで短く
うまく言えたと思ったのですが、
さっき起きたときに冷静に考えると、、、
オリンパスのことを「檻(オリ)」と表現するのは、
やさしくないな、と思い、やめるべきだなと思いました。
マスコミをマスゴミ
ジャスラックをカスラック
と呼ぶ、悪口に近い手法で、
問題提起やジャーナリズムが入るときに、
広告であえてそう伝えることは、アリだと思うのですが、
今回の求人広告で、それをするのはナシかなと思いました。
オリンパス事件というのもありましたが、
カメラ事業部で働く人たちは悪いことをしたわけではありませんし。
シャープで働く人たちは、
弱い立場に追い込まれて働くことを知ってる人たちなので、
経営的にきびしい企業で働く人のきもちを
想像できる言葉を心がけるべきだなと思います。
シャープJPの中の、山本さんが
「立場の弱い人たちを意識してツイートしてる」と言ってたのもふと思いだしました。
そしてこのコピーはボツになり、こうなりました。
（上から目線ですみません…）がわりと好きなのですが、Twitterでもシャープっぽいと言ってくれる方もいました。物理的に「上から目線」でしゃべるという目のつけどころです。
「なにを書くかよりも、なにを書かないかが大事」だと、あらためて感じています。立場の弱い人たちのきもちを想像し、言ってはいけないことに気づくことがコピーライターの職能だと思います。
言葉をあつかう仕事をしている人は、人にダメージをあたえることを容易にできてしまいます。たとえば、学校や会社でいじめをするときに「あだ名をつける方法」がありますが、あれはとても有効的です。タイムラインでも、個人や団体にあだ名をつけて、攻撃が向くようにしたり、不利にしたりしてる光景を見ます。
それと同じ行為をしてしまうところでした。ぼくが仕事を一緒にしてきたシャープの人たちの顔が浮かんできて、申し訳なく、情けなくなりながら、上のメールを送っていました。
言葉をあつかう人は、言葉に臆病でなければならない。今回の仕事で、人を傷つけるためではなく、人を救うために言葉を書いていこうとあらためて思いました。
（「救う」って上から目線なのですが…）
サークルでは、こんなコピーを書く過程の背景や悩みを話しています。
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