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経営と言葉

※このnoteは武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダシップコースの「クリエイティブリーダシップ特論」という、クリエイティブの力をビジネス・社会に活用しているゲスト講師の方々による講義のレポートです。


10/4の講義では、株式会社博報堂 ミライの事業室室長の吉澤到さんのお話を伺いました。

Profile
吉澤到
博報堂 ミライの事業室 室長
東京大学文学部社会学専修課程卒業。ロンドン・ビジネス・スクール修士(MSc)。1996年博報堂入社。コピーライター、クリエイティブディレクターとして20年以上に渡り国内外の大手企業のマーケティング戦略、ブランディング、ビジョン策定などに従事。その後海外留学、ブランド・イノベーションデザイン局 局長代理を経て、2019年4月、博報堂初の新規事業開発組織「ミライの事業室」室長に就任。クリエイティブグローススタジオ「TEKO」メンバー。著書に「イノベーションデザイン~博報堂流、未来の事業のつくり方」(日経BP社)他
(引用:https://mirai-biz.jp/member/itaru-yoshizawa/より)


このnoteでは吉澤さんのお話の中から印象的だったことについて書いていきます。



コピーライターからスタートしたキャリア

新規事業開発のお仕事をされている吉澤さんが、「コピーライター」というクリエイティブど真ん中のお仕事をされていたということが驚きでした。ビジネスデザイン領域でお仕事をされている方は、ビジネス出身という印象が強かったからです。

吉澤さんはコピーライターの仕事を「経営そのものである」とおっしゃっていました。コピーには経営者の思いを伝え、進むべき方向を示し、人を動かす大きな力があると言います。

また、組織のパーパスを言語化する意味についても言及されていました。「言葉」に「曖昧さ」があるからこそ、パーパスの意味を社員みんなで考えることができる、そして各々が解釈したパーパスやビジョンを、自分の活動に”翻訳”するということが起こる、そんなことをおっしゃっていました。

この”翻訳”が面白いなと思いました。
同じ「お客様第一」のようなスローガンも、営業やバックオフィスなどの立場の違いや、その人の考える「お客様が喜ぶこと」の違いなどから色々な翻訳が生まれるのかなと。

吉澤さんは、いろんな解釈ができる言葉の方が創意工夫を引き出しやすいともおっしゃっていて、みんなが共感できるかつ、方向性が見えるような「言葉」を企業として持つことの大切さをなんとなく感じることができました。


LBSへの留学

そんなコピーライターとしてのキャリアを積まれた吉澤さんは、経営者の頭の中が知りたくなり、ロンドンビジネススクール(LBS)に留学されました。

LBSの最初の授業では、本田に関する2つのケーススタディが取り上げられたそうです。ケーススタディAでは、本田成功は優れた戦略によるものだと評価したもので、ケーススタディBは組織の実態についてマイナスな面を指摘し、本田の成功は運であると結論付けています。

授業では同じ事象を扱ったケースにも関わらず、分析の視点で結論が分かれてしまうことについて言及され、「あなたたちはビジネススクールにきたけれども、ケーススタディに騙されてはいけない」というメッセージから留学生活がスタートしたそうです。


このように経営にはケーススタディのように正解となる道筋があるわけではなく、暗闇の中を進むようなもので、そこでは計数管理だけでなく、ソフトスキルが重要になってくると学んだそうです。

吉澤さんは経営に必要な力について以下の3つを挙げていました。

・哲学(どう生きるか,価値観,倫理観,真・善・美)
・算数(マクロ経済,ファイナンス,アカウンティング,計数管理,ROI, KPI
・心理学(組織行動論,モチベーション,意思決定バイアス,組織文化,ナッジ)

前提を疑い、答えのない中どうあるべきかを模索していくデザインのやり方は、経営にとってもとても大切な向き合い方なのだなとお話を聞いていて感じました。

私にとって「経営」はまだまだ肌感無くイメージがつきづらいものですが、LBSで同級生は社長や経営陣などビジネス畑出身の人ばかりに囲まれた中、吉澤さんはクリエイティブの強みを実感したとおっしゃっていたので、いつか自分の中でも繋がると良いな〜なんて思いました。


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