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劇チョコ祭り!

今月は劇団チョコレートケーキの作品をたくさん配信で視たのでその記録を。

劇チョコさん、実はまだ劇場で観たことはありません。
一昨年だったかな?テレビで深夜に視てしまった『あの記憶の記録』『熱狂』のコンボで「うわ!えっぐいな!」と衝撃を受けて以来、その可愛らしい劇団名とのギャップもあってやたら印象に残ってはいたものの、まだお会いできてなくて。
過去作品を期間限定配信してくださったこの機会に次々と視ました。いやハマったわ。

以下、日記です。

🍫🍫🍫

5/6『治天ノ君』視聴。
昨年何かと重なって観れなかったやつ!配信マジありがたい。

大正天皇の人となり。西欧(英国)風に国民に開かれ親しみを持たれる天皇。優れていないかもしれないが努力をやめなかった、天皇であることを決して投げ出さなかった。
明治大帝の威厳、畏怖される天皇、現人神。
日本は明治の45年間走り続けて疲れてしまったから、大正の世に必要なのは軽やかにすることだった。
大隈の「天皇は神棚」という言葉。
大隈、原、牧野…それぞれの思い。
第1次大戦後の世相から、昭和は明治の再来であらんとした。
そうか、明治60年か…
明治節と天長節は祝日として制定するのに、平日となった8/31。
まるで抹殺。
公式記録により、大正天皇は脳の病気だったという記憶だけが人々に残る。若き日に国民に見せた顔は忘れ去られる。
親と違う道であれ、子が自分で道を歩んで行こうとすることを嬉しく思わぬ親はない、と言った皇后。あなたは私たちの子です、と。
昭和天皇が明治大帝の孫だというだけでなく確かに大正天皇の子であった、そしてその要素は現上皇さまにも受け継がれているということを、私たちは何となく思い当たる…と言うか、そう思いたいのかな。
ラストに大音量で鳴り渡る君が代はものすごく胸に響く。

いやぁ…視点、だよね。
歴史を見る視点。大正天皇をこんなふうに見て、明治〜大正〜昭和という時代をこのように見る視点。この見方が新しいのかどうか私には分からないけど、そんくらい歴史を知らないということでもあり、いかんなぁと思う。

昨今の騒動の中、今まさに分岐点にあるぞ、歴史ってボンヤリしてると知らぬ間に作られていっちゃうぞって感じてて。
歴史をちゃんと見ること・それを多角的に考えることって大切だよなとめっちゃ思ってる今だから、沁みる。


5/8『追憶のアリラン』視た。
まさに "ことぜん" だなー。
今の私たちに直結している実感の持てる現代史だし、韓国併合とかシベリア抑留とか朝鮮動乱とか、いやぁよく知らなくてホントお恥ずかしい勉強します、という気になる。
しかし劇チョコと言うか古川さんの本は凄いなぁ。すごく上質な歴史物語だと思う。
切り取り方・視点が本当に面白くて、そして語り口もなんか好みに合ってるのかな。
登場人物たちを目の前に居る生身の人として感じ、2〜3時間一緒に過ごして、まるで近しい人になっちゃったような感覚になれるのが演劇の強み。
これはものすごく分かりやすく社会のためになる演劇だと言えるんじゃないかな。歴史を考える入口として最適だもの。


5/9『起て、飢えたる者よ』視聴。
これまたキッツイ。総括…自己批判…敗北主義…敗北死…
あさま山荘事件のこと、これまたぼんやりとしか知らない史実。
人質女性を登場人物としてああいうふうに絡ませたのは独特な視点だよね。でも当時この女性と犯人との間に交流があったみたいな報道もされてたんだな。なんでこの人が謝らないといけないんだ?って思ったけど。
まぁ時代が近いだけに、劇全体この描き方もなかなか勇気いるよなー。

いやぁ…私にとってはやっぱりストーリーへのワクワクがいちばんのご馳走なんだなって思うわね。
"素晴らしい演技" とかを見て充足感とか幸福感とか得られないんだよなぁ。
わーそれからどうなるのー?わーマジかー!とか物語自体を面白いなーと思ってる時って、もうそこに居るのは登場人物その人だから、いい芝居だなーとかは思わないもの。
ミュの場合、歌ウマだなーと感じる幸福感はあるけどね。


5/10 『遺産』視聴。
これもまた食い入るように視てしまった。
731部隊。
最先端の施設で研究に邁進できる、研究者としての充実感、喜び…人間の業…
でも彼らは決してマッドサイエンティストとかではなかった。普通の人たちだったのに…
身体の中を見れば人種なんて関係ない。高等な民族なんて無い…そういう知見だって持っていた人たちだったのに…
医療の進歩は全人類の希望…確かに、そうだよ。今特に思うでしょ。
731部隊の研究者たちは誰もそのことで罰せられてない。大学や医療系企業(ミドリ十字とかね)で職を得ている。
日本の医学界は彼らのリードによって発展したのかもしれない。(そう言えばアリランの憲兵が政治家になったのにもゾッとした)
石井四郎も戦犯として裁かれなかった。実験資料をアメリカが欲しがったから。
731部隊での実験で得られたデータは、医療発展に寄与する「遺産」となったのか。
いや、近年になってここで行われたことを白日の元に曝す証言や書類が出てきて、私たちと同じ人間があれを普通にあるいは嬉々としてやっていた、果たして私だって…ということも突きつけられて、それこそを「遺産」としなければならない、と思うけど…

いやはや、劇チョコ連続視聴はかなり精神的にタフよね💦
こういうこと全然知らずにのうのうと生きてました恥ずかしいですゴメンナサイ💦っていう気持ちにもなるからさぁ。
それにしても物語がどれも本当に面白くて、やっぱ「事実は小説よりも奇なり」なのかなぁとも思っちゃうね。


『60'sエレジー』で締めた。
わ…まさかラストで泣かされるとは!
高度成長期…時代の変化…つまり、生活様式の変化、人の考え方や振舞い方の変化…
蚊帳…なんてねぇ…今この客席で誰も持ってる人いないよねぇ…って、観てる私たちは神の目線で見通せちゃう。でも、それでも、
ここで選択すべき道は?…わからない。
義理とか人情とかに縛られながら生きるの嫌いだから、こういう時代が良かったなんて私は全然思わないけど、なのに、みんなが家族のように集って修三の大学合格を喜んでいる回想のラストシーンで泣けてしまった。
修三はなぜ、社長夫婦が宇都宮へ行く時に「親に捨てられた」と思ってしまったのか。進歩的なようでいて、彼もまたどうしようもなく "古い" 価値観から抜け出せない人だったよね。結局あの町工場跡に建ったアパートに戻ってきて、立ち退きを目前にしてそこで命を断ったのだ。「私は独りです」って思い込んだままで。
東京オリンピックに絡めて2017年にこれを題材にした古川さん劇チョコさんのセンス。
今また「東京オリンピック」が思いも寄らなかった事態となり、社会は変革を余儀なくされ、この先どうなっていくのか未知な状態になっている。神の目線では見れない。私たちはこの時代の真っ只中にいて、"今まで通り" がたぶん通用しなくなるこれからを生きてゆかねばならない。
さぁどのように考える?
どのように行動する?
あ、修三が学生運動に身を投じてて、それを岡田さん演じるツトムが批判してたり「あさま山荘」という台詞が出てきたりしてヒャッてなったりした。

いやはや、視たおしたな。
大正デモクラシーとか731部隊とかあさま山荘事件とか、いろいろと参考文献を漁ってみたいような気もしてる。
劇チョコ次回公演は絶対観に行きます!!


追加!5/20 『〇六〇〇猶二人生存ス』視聴。
人間魚雷廻天の話…40分の短い作品ながらとんでもなく濃ゆい。
もう…恐ろしくて、苦しくて、悲しくて、酷く刺さる。
「空気の犠牲者」「自分も空気の一部だったのだ」と悔やむ整備兵の慟哭。
艇内では "空気" が薄れていく中だからね…
このワードの何とも強烈な使い方。
惨めに死にゆく2人にとって "誇り" は救いだったに違いないが、結果これは恨むべきものとなった。
もう、本当に怖い。
なるほど…これは2014年TABACCHIプロデュース40Minutesフェスにおいて、3団体が「サムライ」という共通テーマで上演したうちの一つなんだって。


更に追加!5/27 『サラエヴォの黒い手』視聴。
『エリザベート』から直接繋がってると言えるような話で、そういう意味でもこれは視て良かった。
既に "劇チョコルーティン" と言ってもよい、作品視聴からの史実・周辺情報調べ…という作業も楽しいな。
サラエボ事件後フランツ・ヨーゼフがセルビアへの宣戦布告にサインした場所はバートイシュルだったんだ…とか、暗殺された皇嗣フランツ・フェルディナントと妻ゾフィの身分違いに関する話とか、もちろん抑圧された青年たちが "暗殺者" となった事実(そう言えば皇嗣を歓迎する民衆を見て青年たちが一瞬たじろぐ姿は印象的だった)からも…何かにつけてエリザが頭を過る。
繋がってる。
今度エリザを観た時にはきっとこっちのことを思い出すだろうな。
出演者の皆さんが相当苦労されたらしい登場人物名、ホント覚えられないけど観てる分にはノープロブレム(物語にはちゃんと入って行ける)だから、劇にしてくれてありがとうございますという気持ちです。


劇チョコさん、早く劇場で会える日が来ますように!!

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