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ブルオレ 戯曲通読

[written on Apr. 3]

🍊戯曲読んでみた。
🍊タイトルから思うこと。
🍊「言葉」について。「境界」について。

『BLUE/ORANGE』戯曲(英語原文)ひととおり読んでみたけど、これはなかなか手強い。そりゃそうだよね…2時間50分喋りっぱなしのガッツリ会話劇だもの。どうやら端折ってる箇所はほとんどなさそうだ。

観劇後、そう言えば不思議だなーと思ってたんだけど、いわゆる"翻訳劇"っていう感覚があまり残っていない。日本語の台詞とか3人の話し方とかがすごく自然って言うか「いかにも」って感じがしなかったからかな。
アフリカ系とか白人の階級とか勿論そこに根差す色々は戯曲のエッセンスとしてあるはずなんだけど、たぶんこの座組みではそこをあまり説明し過ぎず、日本の観客がナマに実感し易い要素の方を強めに取り出して表現してるのではないだろうか。「上司と部下」「医師と患者」などは、身の回りにある人間関係、「身に覚えのある感覚」として受け取ることができる。

戯曲を読んだり深入りしてくると、人種や階級のこととか居住地域のこととか目に付くから段々と気になってくる。

あと、オレンジ🍊にももっと注目したくなるし、タイトルの"BLUE/ORANGE" にも。

La terre est bleue comme une orange
Jamais une erreur les mots ne mentent pas
大地(劇中では "世界") は青い  オレンジのように
言葉は一度だって誤ったことはない

ポール・エリュアールの詩の一節。
ネットとか見てて"blue orange"という語句や概念は結構広く認識されてるみたいだなぁって思って調べたら、やはりこのフレーズはとても有名らしい。フランスでは知識層なら誰もが知ってるレベルのものなのかも。
だからこそタンタンのコミックにも出てくるんだろう。

『BLUE/ORANGE』と聞いて…って言うか字面で見て「ブルーとオレンジの対比」のイメージで捉えてたなぁ。補色だし。
でも "/ " は並列・互換可能みたいな意味の記号か。

「青いオレンジ」は、日本語に引っ張られて無意識に熟れてない果実を想像しちゃってたけど、そうではなく(グリーンじゃないもんね)青カビが生えたイメージの方か。
ミカンで考えたらオレンジ色はgoodでブルーはbad、でも地球がブルーなのは美しいイメージじゃん、とか?
逆に地球がブルーで美しいなんて喜んでるけど青カビのイメージと重ねることもできちゃうのでは?とか?
…ほらほら、もうグルグル考えたいことがどんどん出てくるのよ!

あと、ブルースが "精神分裂病"というワードについて、言葉つまり名付け方によって事象の意味・捉え方に影響が出てしまうことに言及してたの、印象的だった。
言葉によって事象を切り取り定義してしまうこと。
前後の文脈を捉えず単に「◯◯と言った」ということがとんでもない曲解を招き得るとか、意図的に(悪意を以って)発言を切り取って伝えることだって可能だということを私たちは知っているし、思えばこの物語は全編 "誤った言葉" "不適切な発言" を巡って展開している。それがパワーバランス逆転の引き金となったりもしているよね。
でも「言葉は一度だって誤ったことはない」もゾッとする真実だと思う。その言葉を発する人/受け取る人それぞれの真実を映しているという意味で。
各人の言葉は、各人にとっての真実。

境界性人格障害…
「境界」という言葉・概念。
blueとorangeの境界。
世の中ありとあらゆるものの間の境界。
その曖昧さ。不確かさ。
でも厳然たるものであり…
人は如何にそれに執着しているか。無意識のうちに境界を設定しているか。

また次回の観劇で3人の会話をじっくり聴いて、戯曲を読みながら日本語台詞がもっと思い浮かぶようにしたい。その上で原作戯曲を深く読み込んでいきたい。
3人の言葉を聴いて、お互いの言葉に対する反応の表情や動作を注意深く見て、それぞれの考え・気持ち・関心事が変化する、お互いの人間関係・パワーバランスが変化する、その「境界」を見極めてみたいな。
ブルースは、最初はクリスに対して幼児を扱うように接してた。
ブルースもロバートも、なぜ患者のクリスに自分の心情を吐露するような行動をとったの?
ブルースとロバートの微妙な関係性…ブルースが切れるキッカケは何だった?そしてまたラストの逆転への境目は?一発逆転の材料があった?どこかから布石が敷いてあった?
そんなことを見つけたい。

あと、3人の立ち位置や動き。
みんな結構ダイナミックに移動しながら喋るし、劇場中(ロビーまで!)を使って、章平さんピョンピョン動いたり成河さんも千葉さんもどこまでが演出で何がハプニングなのか判別不能なくらいに体張ったり小道具ぶちまけたり、観客の目に楽しい要素なんだけど…
実は各シーンでの3人の位置関係・高低差が何気にパワーバランスを視覚的に表してると感想ツイート上げてる方を見掛けて、そんなん言われたら確かめたくなるじゃんね!

成河さんが開幕前に「わかりやすい話だから、予備知識とか要らないし、身構えずに観に来て!」って言ってくれてすごく良かったと思う。最初気楽に笑いながら観てたからこそ、だんだん「あれ?」ってなってきた不穏さとか、引き摺り回されて放り投げられた衝撃が強かったんだろうし。
2回目からはどうしたって色々見つけたくて一生懸命見ちゃうもんね😅

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