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『Thrill me』 戯曲を読んでみた

『スリル・ミー』ロスですね😢

この物語を自分なりに咀嚼したくて、原作(英語)戯曲を読みました。
戯曲の中でワタシ(登場人物の私と区別するためカタカナにしますね)が注目した言葉、そこから読み取ったことを、ここに書き連ねていきたいと思います。

🔥📄👓🎹

最初に言っておきます…

恐ろしく長いです💦
そして勿論、ネタバレ全開です。

また、戯曲の言葉から読み取ったことを綴ろうと思って始めたものの、実は書き進めているうちに舞台で観た光景が脳内にどんどん蘇ってきてしまい…
いつの間にやら、戯曲を読んだ感想と言うよりもほぼ「観劇の感想」になってしまった感があります。

因みにワタシの観劇は、成福ペア東京公演の序盤と終盤に1回ずつと、松柿ペア東京1月に1回です。今回がこの作品自体初見でした。
そして初見がこちらだったせいか、ワタシの『スリル・ミー』として刻まれたのはどうやら成福ペアです。

なので最終的にこの文章は、
「成河・福士ペア観劇の感想を英語版戯曲考察で補ったもの」
になりました。

お付き合い頂けましたら幸いです。

📕👓✏️☕️

まず、戯曲をザッと通読して思ったこと→
読むだけだと、何て言うか…
全然エモくないんですね。

Richard(彼)もNathan(私)もびっくりするほど幼稚に思えて、あ〜幼稚な2人が自制できずに犯罪を犯しちゃったわね〜って、ストーリーを引き気味に眺めてしまって。
そりゃまともな大人の目から見たらそう見えるよね…なんて感じてしまったことに、我ながら驚いたのです。
だって観劇時はあんなに成河私に感情移入してたはずなのに。

そうか…薄々感付いてはいたけど、やっぱり歌(特に2人のハーモニー)そしてピアノに相当ヤラレてしまっていたか!と改めて思いました。

そこで読みながらサントラ(ここはやはり英語版)も聴いてみたら…また受ける印象が変わって、途端に感情が動き出すんですね。
哀しさ、切なさ、苦しさ、衝動…
俯瞰ではなく、私と彼(やっぱり私かな→後述)に寄り添った感じ方になり、観劇時のドキドキヒリヒリが蘇るのです。
その時に私や彼が抱いている感情を、音楽の効果で同時体験させられちゃうんだなぁ、きっと。
音楽っていつも知らないうちに胸の奥底まで入り込んできてるから、ずるい。
これがミュージカルのずるい所です。(←好きですよ♪)

では、ここから順を追って見てみます。


"WHY"

仮釈放審理委員会で殺人の動機を尋ねられて、
It wasn’t on a dare or on a whim…
the reason why is simply: that I went along with him…
もう何度も言ってますよねぇ…とウンザリ気味に私は答えます。
強制されたのでもなく、衝動に走ったわけでもない。ただ、当然のこととして、彼と一緒の道を行った。

これまでに何度も尋問を受けて、ああそうか…自分にとってはこれは当然のことだけど、他人には説明してあげないと解らないことなのか…と気付いたのかもしれません。
何故それが当然のことだったのか…今から説明してくれるわけですね。

19歳のシーンになって、
[私] I’ve missed you.
[彼] I know.
には悶えますね〜
Univ.of Chicagoで満足してると言う彼に、I’m glad you’re happy. って言う私…
あゝ、随分と我慢の子ですね。

"EVERYBODY WANTS RICHARD"

でも僕が彼のオンリーワンなんだぁっ!っていう、私の心の叫び。成河私がマッチ箱にそれをぶつけてたのも、キモくて可愛いかったな。

これ、完全に私の内心なのかなとも思ったのですが、
Admit that you’ve missed me too!
を受けて彼が
I’ve only missed the worship.
と台詞を始めているところを見ると、やはり彼に向かって声に出して言ってますね。
あ、でも彼に聞こえないようにブツブツ呟いてる部分もあるかな。

It’s been too long!
I’ve tried to be so strong.
長い間ずっと一生懸命耐えて、我慢強さを身に付けた自負もあるでしょう。彼への想いのためなら何だって耐えられるって。(不穏)

でも、私が心を強く持つための拠り所は、
But not the way that I do!
なんですよね…
僕は君の最高の理解者なんだから君には僕が必要なはずだよ!というより、
僕みたいに君を必要としてる人は他にはいない!という所なのです。
最初は如何に僕が君に合うかと言う点から歌い始めますが、だんだん
I’m the one who needs Richard!
とかって、自分の気持ちの強さという点になっちゃってるんですよね。
あくまで自己完結で満足しようとしている私の切羽詰まった様子に、怖っ!と一瞬思うけど…やっぱり可哀想だなぁというとこに戻ってきてしまいます。

はい、かなり私に感情移入しています。
ワタシは、この物語はすべて私の回想であるという視点で捉えているので、私に感情移入しながら読むことがこの物語を紐解くことだと考えています。初見の終演後「えっ?ちょ、まっ…どういうこと⁉︎🤯」となりましたが、それは冒頭から私が「お話ししてくれる」ことを丁寧に辿っていけば消化できるのではないかと思いました。
また、実はワタシ自身の中に、私の思考や激情に少なからず共感してしまう部分があって…そう気付かされたことが、この作品に震えた大きな要素でもあるのです。
あ…引かないでくださいね💦

"NOTHING LIKE A FIRE"

炎を見つめながら、
[彼] And you know what a little misdemeanor does for me, Babe. ←最甘!
[私] You haven’t called me “Babe” in a long time.
[彼] (Playfully) Because I know you like it.
そして
[私] Touch me.
[彼] Ask me nicer.
[私] Please touch me.
って悶えるー!
「レイ」は "Babe" なんですね!「ちゃんとお願いするんだ」も堪らん。
そして歌のハーモニー。えも云われぬ美しいハーモニーでしたね。この時ふたりの心は確かに重なり合っていましたね。こんな高揚を感じたら、ふたり後戻りできなくなっちゃうよね…

"A WRITTEN CONTRACT"

落ち着いて見たらめちゃくちゃ厨二炸裂なシーンだよな〜と思います。
[彼] If you don’t want to be part of my fun, I’m certainly not going to be part of yours. You know that by now.
犯罪→高揚→彼が私を抱いてくれるという、既に確立されつつあったシステム。
I thought our relationship had matured.
と言う私の思いは虚しく。でも彼にとっても、私を抱くことはこの高揚コースの中の割と重要な部分…仕上げみたいな…だったんだとは思いますけどね。

契約書の私パートの文言「できる限りで」は、英語では but only as much as I get です。
as much as possible
じゃなかったんだ!という発見。
殺人を犯すことさえ「彼と一緒に居ること」の代償として釣り合っちゃうことだったんだな…

今度は自分の要求を言う番になった私。(Happily)というト書きがかわゆい。
私、タイプしながら
I, Richard Loeb って彼の名前を口にして
更にswear to satisfy Babe (←契約書の文言にBabeって!笑) なんて、きっと嬉しそうに顔を赤らめながら言ってたんだろうな❤️

この歌の最後の方、2人でユニゾンしたりハモったりするところのエモさったら凄い。ピアノも煽るし。

で、歌の後、34年後の私の台詞ですが…
日本語台詞うろ覚えなので検証できないのですが、観劇時にワタシは、
「最初はほんの遊びだった。それが変わっていった」…契約書の本気度について当初は軽い気持ちだったけど段々ガチなものになっちゃった、と理解してました。
でもそうじゃなくて「そのうち彼が契約不履行するようになってきた」ということのようですね。

"THRILL ME"

その流れで、スリルミー!です。

窃盗品の中から
[彼] If you want something, claim it now.
[私] I want you. Hold me.
必死だよ私。

そもそも作品タイトルにあるこの"thrill"というワード。これに着目したことが、原作戯曲を読んでみようと思ったきっかけでした。
Cambridge Dictionary によると、"thrill"は "to make someone feel very excited and pleased" だし、名詞だと"a feeling of extreme excitement, usually caused by something pleasant" とあります。
日本語で言うスリルと違って、必ずしも恐怖や不安や危険を伴うものではないんじゃないか?「怖がらせる・脅かす」ということとは違うんじゃないか?
「すごい勢いで嬉しくなっちゃう」ことが "thrill" なんだな!という発見。

私は彼の「危険な匂い」とかそれによって「堕ちていく自分」みたいな部分に酔っていたのかと憶測していた節がありましたが、そういうことでもないのかな、と。

何故か解らないけどとにかく彼の魅力にノックダウンさせられていて("EVERYBODY WANTS RICHARD"の中でも God knows why I think you’re so appealing と歌っている)、ごくごく純粋に「想う人から想われたい」という気持ちだったのではないかなぁ、と。
東京公演終盤の成河私は、ワタシにはそう見えてました。純粋で、可哀想な私でした。

そんでもって、後に終幕の台詞にもなる、この歌のラスト…
But don’t treat me with kid gloves
I’ll always obey you!
One perfect accomplice,
who’d never betray you
if you thrill me!
Thrill me!
音楽に乗ってもの凄い情念だし、accomplice …共犯者…というワードが効いててダークサイドな気配が漂っています。
さらに日本語歌詞では「壊して」なんて言ってるので、よりダーク&アダルトな雰囲気が。

ただ、ここで気になったのが…
if you thrill me
だという点です。
純粋な恋心かもしれないけれど、決して「無償の愛」的なものではない。
あくまで彼にthrillして欲しさに、僕は何だってするよ!ということなんですよね。

だからやっぱり「契約書」という形がお互いにとってフィットしたのでしょう。

その後のParole Boardのシーン。ここで私は、
His friendship was necessary to me.
I had no choice.
と言っています。

そう、彼の魅力は圧倒的で、抗うことなんてできなかったのです。
福士彼の只ならぬビジュアルとダダ漏れな色気によって、観客はもう既にその点については納得させられてしまってますよね✨

しかしこの期に及んで私がfriendshipという語彙を使うことにちょっとゾッとしました。
彼と自分の間にあるものの呼び方が、きっと子供時代のまま止まってるんです。
狂気じみた純粋さ、純粋さ故の狂気、みたいなものを感じてしまいます。
そうよね…たぶん彼以外の人と人間関係を構築してきてないもんね…。

"THE PLAN"

そして殺人を思いつく彼。完全犯罪を成立させることができると信じて疑わない、自信過剰で子供っぽいとしか言えないよなぁ…厨二を通り越して小五くらいです。

[私] Now you’re scaring me.
[彼] But that’s what you like, isn’t it?
「だってそれが欲しいんだろ?ん?」は素晴らしい訳ですけど(//∇//)…
(さすがに小五はこんなこと言いませんね)

ここでは "scaring"に注目します。
scareは明らかに恐怖や不安の感情で、私にとってはscaring≠thrillingですが、彼にとってはここがイコールなんですね。日本語で言う「スリルを冒す」に近いと思います。
仕方ないです。人生の中で何を喜びと感じるか、何にグッと来るかは人それぞれですから。
子供っぽい彼なので、自分にとって欲しいものと私が欲しがってるものに相違があるなんてことに思い至らないのかもしれません。
私はこういう点にも気付いていたのでしょうか?それでもやっぱり彼は魅力的だったんですね。

弟を殺す計画でかなり盛り上がった彼ですが、私が
You could never face your mother!
と言った後に考えを変えるのがちょっと印象的です。あら?彼ったら普通にママのこと好きなんだ。日本語台詞にはこのニュアンス無かったですよね。

"WAY TOO FAR"

私は殺人に対して罪の意識と悔恨の念をちゃんと持っていると思います。これを歌ってるのは53歳の私ですが、19歳の時点でも殺人への罪の意識を持っていたと、ワタシは感じました。
悲しいかな契約上、彼を失わないためには、彼の欲しいものにとことん付き合うしかなかった。   たとえ殺人でも…彼がそれに見合う悦びをくれるなら…

印象的な歌詞は、
I was acting like his prisoner
です。ラストの「自由…」に繋がっていると思います。
He thought it was fun
His dark side was difficult to swallow
not difficult to follow

The heart is a muscle that I can’t explain!
解るよ、解る!
人が、何に魅かれちゃうかってことは、説明なんてできないし、理性で止められない。

そして、ここで決めたのだと思います…
彼と一緒に裁かれることを。
そのための計画を実行することを。
ここで彼を止めるのではなく、そういう方向へ向かってしまったことを今では悔いているけど、当時はそれしか考えられなかった。それが最善の策だと思った。

What made me feel this way

It soon would be done
And then he’d be tied to me forever

Forced myself to be much stronger
(この台詞"Everybody wants Richard"でも出て来ました…我慢!てとこでしたよね)
If for just a little longer!
(ずっと長いこと我慢を重ねてきたんだもの、あともうちょっと…って感じかな)
Then I let it go too far.

そう言えば「禁じられた森」みたいな語句は英語にはありません。日本語訳の時にイメージを入れ込んだんですね。

イメージの入れ込みと言えば…成河さん振り返りメルマガで、翻訳による言葉の足りなさを補うために日本語版潤色で演劇的な語句を加えて奥行きを出してる、みたいなこと仰ってました。
「永遠」というワードで貫かれてるのが特徴的…栗山オリジナルだと。
なるほど「やさしい炎」「契約書」「戻れない道」「九十九年」の、曲調が盛り上がるところでそのワードが使われていましたね。

「永遠」ね…「変わらないこと、確かなこと」…誰だって欲しいよね。

猟奇的殺人犯とかサイコパスとか「異常な人たち」と見られがちな2人ですが、寄り添って見ると、すごく普遍的な人間どうしの物語だなぁと感じられる側面もあります。
そういうところが薄ら寒さを感じさせますね、この作品は。

そしてこの「永遠」はニーチェの「永劫回帰」だと成河さん仰ってました。

輪廻転生とも違い、全く同じ人生を録画再生のようにずっと繰り返すという「永劫回帰」(Wikiより)の中で、旧価値に囚われることを辞め、自由に、自分の価値観で、己の運命を愛して生きるのが「超人」なのか。
なるほど。

社会という枠組みを超えた自分たちの世界が欲しかった。それが永遠に続くことを願っていた。
少年期にそういった思考を持つこと、あるよなぁ…。

"ROADSTER"

ロードスターってツーシートのオープンカーを指す一般名詞なんですね。1920年代に出始めた形(Wikiより)…流線型ではなく、現代から見るとスポーツカーと言うよりはクラシックカー。でも当時最高にクールだったんでしょうね。

彼の人たらし術全開。
はぁ…どうしたって後の留置所のシーンが浮かんできちゃいますね。
曲の最後がブチって切れるの怖すぎ。

"SUPERIOR"

またしても彼の厨二炸裂なシーン。
完全犯罪!って本気で思っちゃってますね。この時代なので白人エリートの特権意識みたいなのもあったと思いますが。
因みに彼らはユダヤ系。アメリカ社会の中でマイノリティではあったのでしょうが、シカゴはユダヤ系の多い都市だったようですし、彼らは富裕層で、彼ら自身も学業成績優秀な、弁護士を目指すエリート。実際、警察から丁重に扱われたりもしてましたね。

時代・社会的背景についてもう一つ言及すると、同性愛というのはどうだったんでしょうね?広く受け容れられてはいなかったですよね。
またまたWikiさまにお尋ねしますと、まさに1924年シカゴで、アメリカ最初の同性愛者権利組織の人権協会が創設されたそうです。この運動は警察によって終結させられるまで2、3ヶ月間続いたとか。
そしてユダヤ教では同性愛は禁じられているようです。
彼にとってはもしかしたらこの点も「スリル」だったのでしょうか。彼らにとって「背徳的」だという感覚と「先進的」だという感覚…どうだったのでしょう?

どちらも中途半端な知識で論じることではないと思うので、これくらいで自重しますね。

さて、ここで注目したいのはやはり私の心理。動揺してバタバタしていて…
でもそれは決して演技とかではなかったと思うんです。
なんたって私は既に眼鏡を置いてきた後なので、大それたことをしちゃってるという震えや居ても立っても居られなさは勿論あって。でもこういうふうにジタバタしてる様子も彼からは自然に見えて好都合だなんて思ってもいそう。

そして、
We’re superior to all…
のフレーズの箇所ではちゃんと彼に声を重ねてるんですよね。彼の1歩先を考えねば…I must be superior to you! の気持ちだったかもしれません。
もう私の計画は滑り出しているのだよ…
This has gone way too far!
気を確かに持たなきゃ、Be strong!って自らを鼓舞していたのではないでしょうか。

"RANSOM NOTE"

部屋に戻ってもご機嫌な彼。私に優しめだしボディタッチも多めです。(ト書き)
ここで私は My glasses? のジャブ。
彼はそんなこと気にも留めません。

脅迫状をタイプし終えた時に、彼の言葉をなぞる形で
Perfect so far.
と呟く私。ゾゾっ!

割と唐突に自分の父親の話を持ち出す彼。
彼は父親から愛されたいんだなぁ。…と、私はこの時に感じたのでしょうね。だから回想の中に、彼のこの発言が出てきたのでしょうね。

歌の最後、
Yes, you’ll get him back alive…
と2人で繰り返します。
私には、ああ本当にそうだったらいいのにという悔恨の気持ちもあるだろうし、もしかして自分たちが死刑になってしまう可能性を考え、父親や家族がどう思うだろうかってことも重ねているのかもしれません。
彼は勿論父親のことが頭にありますね。

"MY GLASSES / JUST LAY LOW"

さあ、せめぎ合い。
遺体が発見され、身元も判明し、脅迫状は無用となり、彼の完全犯罪計画は綻びを見せ始めます。
Just listen to me, Babe! You’re not alone.なんて余裕を見せようとしてた彼も、だんだん不安になってきてるに違いないよね…って、私はたぶん見透かしています。

私は自分たちに捜査の手が迫る中で彼が次にどう出るかを見極めておかなければならなかった。
本当はここで2人で自首するのが私の筋書きだったのではないでしょうか。
眼鏡が発見されたところで。ところが…

[私] But it means they found a link to us…
[彼] Not to us, Babe, but to you!
[私] (Horrified,) Richard!

さあどうする私!何とか彼を巻き込まなくちゃ。
We need a plan B!
もう人ごとみたいにJust lay lowしか言わない彼をどうすればいい?

彼の目には、私はただ眼鏡が発見されたことでパニクっているように見えているだけです。

"I’M TRYING TO THINK"

戯曲では
It was shocking how fast they found me… となっていますが、
「驚きでした(ニヤリ)」とニュアンス違くないですか?ニヤリと笑うみたいなト書きもありません。
舞台で聞いた台詞の方が、私の企み感が増していますね。演出として、ここで敢えて企み感を観客に示したのでしょうか。既に始まっている私の計画に気付くように。

捜査の手が私に及んだことを知って、彼はわざわざ自分から私の部屋に来たんですね。気になってる。
[彼] You’ve got a lawyer—you’ve got me.
って、私にしたらひとまず彼を巻き込むことができて一安心。
次にどうすれば良いのか、彼に指示してもらわなければなりません。
そして頑張って何とか警察の取調べを乗り切って、
needed to be with Richard more than ever…
彼の言う通りにした後は、僕の番だもの…。

今度は僕が優しくしてもらう番だったのに…そしてまた、彼の言う通りに次のことを…もし本当に僕たちの容疑が晴れてるのならそれも良し、やっぱり最終的に2人で捕まるならそれこそ僕の計画通り。でも彼は僕から去って行こうとした。契約を破棄しようとした。
ああ、いよいよプランCか…僕が裏切ったって彼に思われるのは嫌なんだけどな…

Reprise: "WAY TOO FAR"

19歳の私が歌います。

そして留置所。
No, it’s not too late. There’s still way for us to be together…
ああ…ついに彼にこう言わせることに成功したじゃない!私!

"KEEP YOUR DEAL WITH ME"

Blood’s a lifetime guarantee, Babe!
なんて!その口が言う⁉︎
Please don’t let me alone! とか!
I don’t want to let you go…とか!

そしてpassionately kisses…
そりゃmeltしちゃうよ…哀しいけど…

所詮は保身のためだって解ってるけど、それでも…彼が僕を必要としてくれる。

[私] We’re gonna hang together.
[彼] No way……Just be strong, like me.
ホント、その口が言うか。

彼は私に対してあくまで「彼らしく」振る舞いました。強く悠然としている姿を見せ続けなければならない…と思った。私が彼のことを好きでい続けてくれるためにはそれが必要だと思ったのでしょう。保身のためです。彼は最後までそれを意識してる。←これもすべて私の回想ですよ。

"AFRAID"

でも彼の本心は、Afraid…怯えてる。
死を、終身刑を。
それらを引き起こす、私の心変わりを。

I’m afraid to die
But I’ll be damned
if I’ll let you know,
you’ll never witness me cry!

I can’t let you see.
If I show a slight touch of weakness
you’d change your opinion of me!

一部始終を聞いていた私。
僕はこんなふうに彼を苦しめたい訳じゃないのに。哀しいよ…
ここまで来ても、君は心を僕にくれない。哀しいよ…

"LIFE PLUS NINETY-NINE YEARS"

さて、いよいよ。
護送車。

Are you afraid?
なんて尋ねる私に、
I’m not afraid of anything.
なんて答える彼。

Darrow弁護士について話し、
He’s exactly the kind of lawyer I’m going to be.なんて…
可笑しいよね。君にはもう、僕と離れた場所での将来なんて無いんだよ!

We’re gonna spend the rest of our lives in a cage together like two rare birds.
Now you’ll never be able to leave me.

超人は僕の方だったね。  僕は、欲しいものを手に入れたんだよ…

Am I scaring you?
なんて言ってみるのも哀しい。
「それが欲しいんだろ?ん?」って続くあの日を思い出しちゃうじゃない…

でも、やっぱり私の想いは彼に伝わらない。彼は私にマウントを取られたと思って逆襲しようとする…

[彼] You finally topped me;
You finally stopped me.
And though I admit I believe you
I swear that I’ll leave you again!

日本語台詞では「君を認めよう。だがこれから君は孤独だ、ひとり」と言っていたでしょうか。

あゝ、これでも君は僕に屈してくれないの?…
僕に心をくれないの?…

[私] Spare me the tears!

一緒に泣いてくれないの?…

結局、私は彼の全てを手に入れることはできないまま…
それは予測できていたのでしょう…でもそれでもいいと思って、とにかく物理的にだけでも彼と一緒に居られることを願って、彼に従って殺人を犯し投獄されるという道を選んだ…
獄中での30年はどんなだったんだろう?

彼も私もきっと虚無に過ごし…

彼はシャワー室で刺された時「勝った!」と思ったのでしょうか…

「ゲーム性」ということについて。
2人とも頭の良い男の子なので、そういう本能はあったと思います。
『デスノート』のLと月のようにゲームを楽しみ合っていた関係とは違うけれど。
互いに、自分の欲しいものを手に入れるために、相手をどうしたら協力的にさせられるか、必死に頭を回転させていたという点ではゲームだったと言うか、ゲーム理論が働いていたと言うか。

[審理官] How do you think of him today?
[私] I think if he wasn’t stabbed to death in the shower room so many years ago, I’d have probably…

この後何と続けるつもりだったのでしょう?
もし彼が死んでなかったら、仮釈放申請はしてないと思います…かな。

[審理官] You’re a free man.
[私] (in shock, stands.) Free…free?

「自由」…
生まれて初めて聞いた言葉みたいだ。
そうだ、僕はここに入る前だって、ずっと彼のprisonerだったんだから。

そして見た…1918年に公園で撮った彼の写真。目の前に鮮明に蘇る、大好きな彼。

(ここで私が Richard… と呟くのを「待ってたよ」にしたのはとても素敵な訳だと思いました。)

[彼] (Warmly.) Babe.

その君が欲しかったんだよ!

I’m one perfect accomplice
who’d never betray you——
if you thrill me…

僕に、他の人が知らない君の全てを見せてくれていたこの頃。
君には僕が必要で、僕らは特別なふたりだった。
その悦びを、君が僕に与え続けてくれていたなら!

Thrill me!
僕を愛して!

(Nathan smiles.)

最後のト書き…smiles?? ここで⁉︎
これは…寂しい、諦めの微笑でしょうか。
楽しかった日々の思い出がちょっと頬の表情筋に作用したかもしれないけど…

成河私は悲痛に歪めた顔で叫んでいた時もあったし、茫然と呟いていた時もありましたよね。

終演です。
ここまで読んでくださった方、いらっしゃるのでしょうか。お付き合い頂き本当にありがとうございます。

本当に「豊かな作品」だと思います。

公演期間終盤、彼にも私にも俳優本人…自分の役への愛しさが入り込んできたのか、「私の回想の中の彼」だった筈の彼は恐らく福士さんの生身の感情が乗った「彼自身」として私を特別に思う気持ちが隠せなくなってきたように見えました。(因みにですが柿澤彼はその部分のチラ見えっぷりがより顕著だった気がしています。)そしたら成河私だってあんな結末へと向かって行くことが余計に悲しくて苦しくて仕方なくなっちゃっただろうし…
そういう変化が感じられて、堪らなく面白かったですね。

そこから、こんな感想も生まれました。→
私は写真を見た時に初めて、彼が私を特別に思ってくれていたと気付いたのではないか。
「彼にはやっぱり僕が必要だったんじゃない?表現してくれなかっただけで…僕たち確かに心が重なってた瞬間もあったじゃない?彼はやっぱり僕を特別に思ってくれてたんじゃない?…そう気付いてあげられてたら…彼を怒らせずに…傷付けずに済んだかもしれない」
初めて彼の気持ちを慮る視点に立てた私の悔恨はいかばかりだっただろう。
彼ではない、私自身というprisonから自由になった瞬間だった…。

戯曲からは絶対に感じ取れないことですが、舞台上のふたりを観たワタシはそんなふうに思ったのです。
勿論そこにはワタシ自身の作品・キャストへの理解や愛情が深まっていることも関係していて…

戯曲が在って、そこから演者が作ったものを観客へ手渡してくれて、更に公演中に演者と観客とで変化・進化・深化させていって、同時に観客ひとりひとりの中ではそれぞれの『スリル・ミー』になる…そこまで含めて、ナマの舞台公演。演劇。

あゝ、素敵だな。
こんな素敵なものに触れられて幸せだな。

以上です。
ありがとうございました!

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