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スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』

期間限定無料配信とのことで、これまで歌舞伎はほとんど観たことないズブの初心者な私、折角の機会だからものの試しに…と視聴。

いやぁ…衝撃!😳
すっっっごい面白かった!楽しい!美しい!カッコいい!圧巻!そして物語がこんなに沁みるなんて予想外!歌舞伎すげぇ!今度絶対観に行く!!(興奮)

派手な演出ですごいスペクタクルなエンタメなのは承知していたけど、今回びっくりしたのは兎にも角にもホンが刺さったこと。

閻魔大王が「多様性が肝要である昨今、地獄だけが旧態依然として残っているのはどうかと思う」とか言ってぶっ壊して「何かを生み出す地獄」(⁉︎) を新しく作るって…何それ!?
そして最後には薬師如来と共に「地獄と極楽で連携してこの世をうまく保っていく(意訳)」みたいなこと言ってて!?
何だその新鮮な発想!視点!
その他にもまだまだ…
「無力」を思い知ることとか、餓鬼病のオグリが人の情けに縋って生きた末に見つけた「幸せ」とか、救われるため功徳を求める人々とか、地獄に落ちても一つだけ自慢話ができると言って喜んで照手を助けた下賤な男とか、狂ってるように見せろと教えてくれる漫才師たちとか、善人が報われず悪人が蔓延る絶望的な世の中だけど迷っているからこそ「希望」を説くのだ、気休め上等(意訳)とか、最後に辿り着いた「歓喜」って「利他主義」ですよね!とか…
演劇から今の私たちを取り巻く諸々を考えようとする脳を刺激するものがたくさん散りばめられていて!

ファンタジックな物語だけど、楽しみながら観ている中で、ふと私たちの現実世界とのリンクを感じさせられてしまう瞬間がたくさんあった。
地獄のリノベーションの話もそうだし、道成寺の僧たちのような権威だとか、家や組織…"ことぜん" 視点とか、障がい者や社会的弱者とか、差別、虐待、トランスジェンダー…
いやホントこれ "今の" "私たちの" 世界の話で。
だからこそあの鏡の演出なんだろうし。
現代を生きる私にしっかりと刺さり、沁みる。
それをこんなに楽しく観せる。
このホン凄い!!と思ったのだ。
本編にも哲学者としてお名前が出てきた作者・梅原猛さんの著書はいずれ読んでみたい。

そしてもちろん華やかな演出は文句なく圧倒的なエンターテインメント。
パーンとスポットが当たって見得を切るのとかマジかっこいいし、衣装はもちろん豪華で美しいし(閻魔様のとこに行った時のオグリたちの白い衣装ステキだった)、音楽や柝・ツケの音は印象深く耳に残ってるし、鬼鹿毛🐴も良かったし、本水とか宙乗りとかワンダフルだし、立廻りの魅せ方もいろんなのがあるし、迫り下げで人がスーッと消えるのとか面白いし、そうそう開演時に客席の提灯がグルッと灯っていくのも気分上がったなぁ。
そしてなんとまぁ観客も一緒にスーパーリストバンドで「歓喜の舞」に参加する楽しさよ!
加えて劇場では、物販とか幕間の雰囲気とか、歌舞伎ならではの空気がまた更にウキウキを倍増させてくれるんだろうねぇ。
そうそう、赤い薔薇(最後の踊りではキャスト全員が着けてた…特に小栗党のみんなの黒い着物に映えてカッコよかったなぁ)がとても素敵だったから、思わず近所で買ってきちゃった🌹

いやもうとにかく目を奪われて視てるうちにどんどん魅き込まれて、泣けるわテンション上がるわ、最後はテレビの前で一緒に踊りましたよ。
そして役者さんたちに向けても親愛の情が湧いてきて。皆さんのお名前もほとんど知らずに視てたけど、これから勉強します。

今回のは公演中止後の無観客収録。鏡の演出やお客さんに話し掛ける芝居のとこで寂しさを思い出したね。客席降りも。
あゝ本来ならここで拍手とか掛声とかあるんだろうなぁっていうポイントも分かりやすいから、その度にちょっと寂しくなった。
でもこんな機会に配信してくださったことに感謝です。出会うことができて良かった。

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