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ブルオレ 戯曲ふたたび

[written on Apr.10]

🍊また戯曲を読んでみる。
🍊「人間は物語を求める存在」。
🍊「人種差別」というトピック。

ブルオレ2回観てからまた戯曲をちょっと丁寧めに読んでる。だいぶ入ってくるわ。

ロバートがブルースを説得してるとことか、成河さんが言ってたようにホント人生2周目みたいな人だなぁと思うし、治療方針とか組織の中の人としては確かに正しいことを言ってるんだよなぁ。観てた時はブルースに感情移入して悲しくて悔しくて仕方なかったんだけど。
嫌らしいことに、ロバートは自分の形勢が悪くなると急に話の方向を変えて権威を振りかざして「フラハーティ先生」呼びになったりするんだよね。

オレンジについて気になる台詞に気付いた。
1幕2場のロバートとクリスのシーン、ブルースがオレンジの色を尋ねた件を話してて、クリスが「サインなんだ」って言うとこ。
この考えには多分に、ブルースが影響してしまっているように思う。クリスには何故オレンジが青く見えるのかという理由を、ブルースは解明したかった。それには何か意味があるんじゃないかな?何かのサインなんじゃないかな?って、クリスに問い掛けたのではないだろうか。クリスはそれを受けて、そんな気がしてきて、意味を探し始めたのではないだろうか。
ところでこのシーンの冒頭ロバートの台詞で「自殺」が出てくるけど、クリスはそういう不安をロバートに相談したんだろうか? ←あ!これカルテに書いてあったブルースの診断か?

最後クリスが退院していくところを読むと、舞台上に見たブルースの表情が、先日アフトで聴いた話と共に鮮明に思い出される。ああまたクリスはオレンジでアレするんだなってブルースは思って、28日間で結局何にも変わらなかったんだって、そう思った虚無顔だねあれは。
だったら何もかもチャラにできるはずって思ったけど…ダメそうだったから…ラストの巻き返しに出たんだな。

そもそもブルースにはクリスがオレンジを使ってしていた「おかしなこと」がとても引っ掛かっていたから、クリスから何かしらのストーリーを引き出そうとして、意図的にオレンジを部屋に置いて、何かこれを見て思うことはない?例えば…これは何色をしてるかな?なーんていう質問をしたのかも。
でも、ロバートだって同じ。クリスが持っていた記事の切抜きから、クリスの母親や"文化的背景" に繋がるストーリーを描き上げた。
クリスとオレンジに何かしらの「意味」を見つけようとして自分の考えでクリスを導いたという点で、ブルースとロバートは同じことをしたんだ。

事象や行動や発言に何かしらの「意味」を求めるということを、私たちはよくやるよな。演劇を観る時とかさ。
なーんて書いてたら、イキウメ『獣の柱』インタビュー記事で前川知大さんが「人間は物語を求める存在だから(天変地異みたいなものを目にした時に)なぜ?と考える」とか言ってて、タイムリー過ぎてビックリした〜!😳

なぜ?なぜそう思った?なぜそういう行動をとった?なぜそう言った?
ブルースもロバートもすごくそれを求めてる。そもそもそれが精神医学というものか。
妄想…ストーリーを作っちゃうことが病気の症状だと言うけれど、物語を求めることと何が違うのか。ほら!一体どこまでが病気なのか分からなくなる!

そして、なぜ?なぜそう思った?なぜそういう行動をとった?なぜそう言った?を考えると言えば…まさに観劇後の私😅
ほほぉ…以前成河さんがどこかに書いてた「演劇はセラピー」って、そういうことか!
演劇=精神医学なのか!

そうそう!成河さんブログに「境界」がキーワードだと書いてくれて、ですよねー♡ってなった。
改めて思うけど、ホントこの「境界」が厳然たるものであるという点をこれでもかと思い知らされる。曖昧なものでもあるけれど、私は曖昧さよりもやっぱり厳然さについて思ってしまう。
私たちは意識の中で、何かと何かを区別せずには居られないと思う。自分は他人とは違う独立した自分であるしそうあるべきだと思ってるし、他人の痛みとか安易に「解るよ」とか言ったり言われたりするの私はあまり好きではなくて、そういうのって誠実じゃないよなーと思っちゃうの。
人は一人一人が一つ一つの世界で、世界と世界が接することはいちいち大事件だと思うよ。

それと、もう一つ。
人種差別について。先日、私たち日本人にはその感覚が乏しいと書いてみたけど…
そんなことはないね。イギリス社会におけるそれとはまた違うかもしれないけど、"自分たち"と"他所の人"の間に線引きをする意識はやっぱりある。人の出自に関する偏見や固定観念も確かに在る。
私自身の中にも、見つめてみるとそんなような感情があることに気付いてハッとしたりする。

演劇は、こういうトピックを解決はしないけれど「意識にのぼらせる」「テーブルの上に乗せる」ための手段として優れていることは確かだと思う。色んな人が集まって、楽しく面白く観ながら、あるトピックに其々が思いを馳せる。何を思うかは人それぞれだけど、少なくともそのことに思いを馳せる人がこんだけ居るってことが目に見える。

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