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「落下の解剖学」のとんでもない面白さに興奮を隠せない。

今年は面白い映画が続々公開されてて興奮しまくっているのだが、2月にしてベストに出会ってしまったよ。
「落下の解剖学」。これも劇場が少なくて、調布までいきました。シアタスは駅前で手頃だけれど、ちょっと狭すぎるな。
公開週末、土曜の夜の回で、100席弱のスクリーンが7割くらい埋まってた。

フランスの雪に囲まれた山間の山荘で暮らす親子。両親はともに作家。息子は視覚障害があり、はっきりとは見えない(らしい)。ある日、父親が三階から落ちて死亡しているのが発見される。自殺か事故か他殺か。真相不明のまま妻は容疑者にされる。やがて裁判に。証言が進むにつれ、家庭の秘密が明るみに出てくるのだが…。

いやいや、とんでもなく面白い法廷ドラマであり、歪んだ家族の愛憎劇であり、誰にも解けないミステリでもある。2時間半と少し長めであるが、一度も気を抜くことができなかった。

監督はジュスティーヌ・トリエ。同業の夫アルチュール・アラリとともに書いた脚本である。つまり、この物語の夫婦と同じ環境下で作ったってことか。一つ屋根の下で同じ仕事をしている夫婦の間にしかわからない機微が、作品に内包されているのでは、と思うだけでスリリングである。

それにしても飼い犬スヌープちゃんの名演技には驚く。

昨年カンヌのパルムドール。今年のアカデミー賞でも注目されている。

【ネタバレ】
抜群に面白かったのは、妻はドイツ人、夫はフランス人。住んでいるのはフランスだけど、夫婦の会話は英語を使っている。子供はフランス語とちょっと英語。なので、時々意思疎通ができない。さらに事件をめぐる裁判は当然フランス語。証言台に立つ妻は途中で言葉が出なくなってしまい、「ここからは英語で話したい」と申し出る。この感覚って、日本にしか住んでいない人には理解し難いんじゃなかろうか。

「で? 真相はなんだったの?」とか聞いてくる輩は、バカなのでつきあわないから大丈夫。

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