接頭辞・接尾辞でみる英単語

はじめに

はじめまして。

この記事では,英単語の接頭辞,接尾辞についてのお話と私が今まで見つけて「いいな」と思った接頭辞,接尾辞とそれに関する英単語を紹介していきます。

これからそれっぽいことを書いていきますが,私はただ英単語が好きなだけの一般人です。言語学に関しては全くの初心者ですので多くの粗があるかと思います。
もし誤りなどがあれば,コメントなどでご指摘いただければありがたいです。

接頭辞,接尾辞とは?

まず初めに,接頭辞について少しだけ説明します。思ったより長くなったのでこの節は読み飛ばしていただいても結構です。

英語に限らず,いくつかの「パーツ」が組み合わさってことばができているケースは様々な言語でよくみられます。
そしてこの「パーツ」にも種類があり,特に「単体では単語とならず,それによって元の単語から別の言葉をつくるもの」(派生接辞)で,このようなパーツのうち,単語の先頭にくるものを接頭辞,単語の末尾にくるものを接尾辞と呼びます。

この説明はかなりあいまいで不十分なので,例を挙げて説明しましょう。

  • unknown「不明の」,unfair「不公平な」などのun-

known「知られた」,fair「公平な」などの単語を考えてみると,ちょうどun-が否定の意味を持つパーツとして働いていることがわかります。

  • really「本当に」,totally「完全に」などの-ly

real「本物の」,total「全部の」などを考えると,日本語訳した際の「~の」の部分が-lyによって「~に」という形になっており,文法的な役割が異なった単語ができています(この例では形容詞が副詞になっている)。

このように,単語を構成するパーツと,それが付加されているもとの単語の意味を知っていれば,それらが組み合わさった単語の意味も推測することができます(たとえば,上の例で挙げたun-と-lyの意味とdoubted「疑わしい」という単語を知っていれば,undoubtedlyの意味も推測できる)。

「いいな」と思った接頭辞

1.a-

発音は/ə/。
(asymmetry「左右非対称の」や amoral「モラルの無い」など,/ei/や/æ/という発音のa-は否定を表す別の接頭辞なので注意!)
名詞,動詞などに付いて「~の状態,場所で」といった意味の形容詞をつくる接頭辞です。

a- + 名詞の例 : ashore「岸へ」,aside「わきへ」
a- + 動詞の例 : asleep「眠った」,ablaze「燃えた,燃えている」
※shore「岸」,side「わき」,sleep「眠る」,blaze「燃える」

これによってできる形容詞は「叙述的形容詞」とよばれ,動詞の後ろの保護になることはできますが,名詞を修飾することはできません。(*an asleep boyなどとは言えない)
もともとa-はonと同じ語源の接頭辞で,名詞についた場合はon (名詞)でほぼ同じ意味になることが多いです。

a-を使った単語では,ablazeやalive「生きている」が好きです。
fall asleep「眠りに落ちる」など,動詞の後に来るのもかっこいいですね。

また,このa-は形容詞に付いて副詞をつくることもあります。

a- + 形容詞の例 : aloud「大きな声で,声に出して」,abroad「海外へ」

2.counter-

発音は/káuntər/。名詞や動詞,形容詞などに付いて「反~」「逆の~」といった意味の単語をつくる接頭辞です。品詞(名詞や動詞,形容詞などの分類)は変えません。

counter- + 名詞の例 : counterexample「反例」,counterweight「(つりあいをとるために反対側につける)錘」
counter- + 動詞の例 : counteract「対抗する」
counter- + 形容詞の例 : counterintuitive「直感に反する」
※example「例」,weight「錘」,act「行動を起こす」,intuitive「直感的な」

接頭辞自体の文字数も多めで,学術用語などが多く,意味もむずかしめな印象です。しかしこの接頭辞が付いた単語は意外と多く,現在でも生産性の高い接頭辞とされています。

counter-が付く単語では,counterproof「反証」,counterclockwise「反時計回りに」が好きです。文字数の多い英単語っていいですよね。

3.inter-

名詞や動詞,(名詞から派生した)形容詞に付いて「~の間の,相互の」といった意味の単語をつくる接頭辞です。

inter- + 名詞の例 : intercollege「大学間の」
inter- + 動詞の例 : interplay「相互作用」,interchange「交換」
inter- + 形容詞の例 : international「国際の」
※college「大学」,play「作用する」,change「変える」,national「国家の」

これは日本人にもかなり馴染みがある接頭辞だと思います。高速道路を利用すれば「インターチェンジ」という言葉を目にしますし,大学間のサークルを表す「インカレサークル」の「インカレ」も上で挙げたintercollege(もしくはintercollegiate)が略されたものです。

名詞に付いて形容詞をつくっている場合は,ほとんどの場合between (名詞)と同等の意味になるようです。

inter-が付く単語ではinterplay,interact「交流する,相互作用する」が好きです。

4.sub-

inter-と同じく,名詞や動詞,形容詞に付き,「下の,下級の」といった意味の単語をつくる接頭辞です。

sub- + 名詞の例 : subway「地下鉄」,subculture「サブカルチャー,下位文化」
sub- + 動詞の例 : submerge「沈む,沈める」
sub- + 形容詞の例 : subconscious「無意識の」
※way「道」,culture「文化」,merge「合併する」,conscious「意識的な」

これも聞き馴染みがないようで,意外といろいろな単語に使われている接頭辞です。
例に挙げたようなsubway,subcultureはこれを読んでいる人なら聞き覚えがあるでしょうし,submarine「潜水艦」は海(marine)の下を航行できる船ですね。

sub-が付く単語ではsubzero「零下の」,subdevide「さらに分割する」が好きです。少し堅く,学術っぽい響きですね。

5.trans-

これは動詞や(名詞から派生した)形容詞に付いて「~を越えて,~の向こう側へ,別の場所へ」などを意味する単語にする接頭辞です。

trans- + 動詞の例 : transform「(完全に)~を変える,変身する」,transplant「移植する」
trans- + 形容詞の例 : transatlantic「Atlanticの向こう側の」
※form「形作る」,Atlantic「大西洋」

transformは皆さんご存じの単語だと思います。
このほかにもtranslate「翻訳する」,transfer「移す」など日常用語でもこの接頭辞を持つ単語は出てくることがあります。

trans-が付く単語では,transcend「超越する」,transfuse「輸血する」が好きです。

「いいな」と思った接尾辞

1.-age

これは動詞に付いて「活動,範囲,結果」,または名詞に付いて「集合,状態」などを示す名詞をつくる接尾辞です。

名詞 + -age の例 : baggage「手荷物」,frontage「正面」
動詞 + -age の例 : coverage「適用範囲」,breakage「破損」
※bag「バッグ,荷物」,front「正面」,cover「覆う」,break「壊れる,壊す」

名詞や動詞に付いて,それの集まりだとか結果などを意味する抽象的な名詞を作っていますね。

-ageが付く単語ではblockage「封鎖,閉塞」,linkage「連係」などが好きです。抽象的で使いどころに困りますが,そういう単語のほうが私の好みのものが多い気がします。

2.-ery(-ry)

これも名詞や動詞に付いて「集合,抽象名詞,~の場所」などという意味を示す名詞をつくる接尾辞です。

名詞 + -ery の例 : machinery「機械類」,witchery「魔術の類」,slavery「奴隷状態」
動詞 + -ery の例 : bakery「パン工場」
※machine「機械」,witch「魔女」,slave「奴隷」,bake「焼く」

これも-ageと同じように抽象的な名詞をつくる役割を持っています。
「ベーカリー」は聞いたことがあると思いますが,それ以外はなかなかマニアックな単語が多いです。

-ery(-ry)が付く単語ではwitchery,bravery「勇敢」が好きです。braveryは形容詞 + -eryで作られた珍しい単語ですね。

3.-hood

これは主に名詞や形容詞に付いて「期間,状態,~の集合」などを意味する名詞をつくる接尾辞です。

名詞 + -hood の例 : childhood「子供時代」,neighborhood「近隣」
形容詞 + -hood の例 : likelihood「ありそうなこと」
※child「子供」,neighbor「近隣住民」,likely「ありそうな」

形容詞に付いたときは「~の状態」という意味になることが多いようです。
名詞 + -hoodはなんとなく「周辺」「あたり」のようなニュアンスだと解釈できますね。
ちなみにgodhead「神格」など,-headという接尾辞もこの-hoodと同じ意味です。

-hoodが付く単語ではchildhood,likelihoodが好きです。

4.-ify

これは主に名詞や形容詞に付いて「~にする」という意味の動詞をつくる接尾辞です。

名詞 + -ify の例 : classify「分類する」,fishify「魚を供給する」
形容詞 + -ify の例 : liquify,amplify「拡大する」
※class「分類」,fish「魚」,liquid「液体の」,ample「大きい」

これはもともとラテン語系の外来語から来た接尾辞であり,とくにフランス語でこの形をしたものが英語に入ってきて英単語として定着したものも多いようです。(仏)justifier→(英)justify「正当化する」など。

-ifyが付く単語ではidentify「同一とみなす」,electrify「充電する,電化する」が好きです。名詞系が-ificationになるのもいいですね。
※identity「同一の」,electic「電気の,電子の」

5.-wise

これは主に名詞に付いて副詞をつくる形容詞で,「~の方式・様式で」「~の観点で」と言った意味を持ちます。

名詞 + -wise の例 : otherwise「そうでなければ,さもなくば」,likewise「同じように」,pointwise「各点ごとに」
※other「他の」,like「似た」,point「点」

上で挙げた2つの意味のうち,後者の意味は生産性が高く,アメリカではbudgetwise「予算の観点から」など多くの新語が用いられているようです。
※budget「予算」

-wiseが付く単語ではclockwise「時計回りに」,archwise「アーチ状に」が好きです。これらの-wiseは前者の意味ですね。

おわりに

時間と体力の都合上,ここで紹介を終わりにしますが,私が好きな英単語も,面白い接辞もまだいろいろあります。
こういったことを知っておいたうえで日常生活をすると,偶然見かけた単語に対して「そういえばこの単語ってこの接辞を使っているからこういう意味なんじゃないか」というふうに新しい発見ができることがあり,私はそれをとても嬉しく感じるので,それを共有したいと思いこの記事を書くに至りまいした。
私の勉強不足により正確な知識やこれらの面白さ,深遠さがうまく伝わらないのが悔やまれるところですが,皆さんもこういった観点から英語に面白さを感じていただければとてもうれしく思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

長谷川 瑞穂・大井 恭子・木全 睦子・森田 彰・高尾 享幸. はじめての英語学. 研究社, 2021
竹林 滋・桜井 雅人. 音韻・形態. 大修館書店, 1994.
Laurie Bauer. English Word-formation. Cambridge University Press, 1983.
Oxford University Press. Oxford English Dictionary. https://public.oed.com/about/, 最終閲覧:2022-12-3
Cambridge University Press. Cambridge Dictionary. https://dictionary.cambridge.org/, 最終閲覧:2022-12-3


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